パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

SHADOW/影武者★★★★

2019年10月06日 | アクション映画ーサ行

「HERO」「LOVERS」のチャン・イーモウ監督が、影武者を主人公に描く武侠アクション。強国に領土を奪われ、屈辱に甘んじる小国を舞台に、気弱な王とその意向に反して敵国最強の戦士に決闘を申し出た武将とその影武者、それぞれの思惑が複雑に交錯する中で迎える戦いの行方を、華麗なアクションと映像美で描き出す。主演は一人二役に挑んだ「戦場のレクイエム」のダン・チャオ。共演にスン・リー、チェン・カイ。

あらすじ:時は戦国時代。強大な軍事力を誇る炎国に領土を奪われ20年が経つ沛(ペイ)国。若くして玉座を継いだ王は炎国との休戦同盟によるかりそめの平和を維持することに汲々とし、人々は屈辱的な日々に甘んじていた。そんな中、領土奪還を目指す頭脳明晰で武芸の達人でもある重臣・都督(トトク)が王の命にそむいて炎国最強の戦士・楊蒼(ヤン・ツァン)に対決を申し込む。しかし実際に戦いに臨もうとしていたのは、都督の影武者だった。本物の都督が刀傷がもとで病になったことを隠すため1年前から表に出ていたのだった。決戦に向け、都督とともに傘を武器にした技を磨く影武者。そして、そんな2人を複雑な思いで見つめる都督の妻・小艾(シャオアイ)だったが…。

<感想>影で終わるのか?・・・「人魚姫」のダン・チャオが主演を務める、国王と影武者の二役に挑んだ「三国志」のエピソード「荊州争奪戦」を大胆にアレンジして描いた武侠アクション。頭脳明晰で武芸の達人でもある重臣・都督の妻役を私生活でも夫婦であるスン・リーが演じている。

冒頭からの張めぐらされた緊張感がすこぶる心地がいいのだ。高揚感を刺激するのは、マー・コンウィン美術監督による、美しい世界観なのだ。

水墨画のようなグレーを基調とした世界で、白と黒の対比、主人と影武者、光と影、明と暗、陽と陰など、様々なメタファーでもある映像が際立つのであります。モノトーンのスクリーンに、生々しい真っ赤な血の色、そして、影武者の身体に生気が戻る瞬間が印象的でした。

もうひとつ、本作の特徴は「主人公が影武者である」という点であります。沛国の重臣・都督(ととく)を守るため、8歳で拾われてきた“影武者”。彼は身代わりの運命を呪い、“自由”という光を求めていた。ある時、本物の都督は影武者に、20年前に奪われた領土を奪還するべく、敵国の将軍を討つよう命じる。「勝てば、おまえは自由の身だ」。常に暗闇の底を歩んできた影武者の、生涯をかけた戦いが始まった。

特徴としては、傘を使ったバトルのなかでも、傘地が無数の鋭い刃で作られた“沛(ペイ)の傘”のガジェット感が最高でした。破壊的な矛を操る敵将軍と相対した主人公は、おもむろに沛の傘を構え、じりじりと間合いを詰めていく。呼吸が止まる。あたりを静寂が包み込む。

主人公はこれを、傘地に滑らせることでいなし、返す刀で反撃する。攻守が一体となった流れるような立ち回りを見ると、「傘ってここまで戦えるのか」と口があんぐり開いてしまう。

貝殻のように連結した沛の傘に乗り、コマのように回転しながら窮地を脱するという(いい意味で)狂った場面もある。何の前触れもなく唐突に展開されるため、唖然とさせられ、「こんなシーン、何してるときに思いついたんだよ」とツッコミたくなる。

 

それに、最も斬新な傘のシーンでは、敵国に潜入した少数精鋭の兵士たちが、雨のように降り注ぐ弓矢の攻撃を受けながら、傘の武器に乗って坂道を一気に駆け下りる。数々のユニークなシーンに、心くすぐられること請け合いです。これは、過去のアクション映画でも登場したことのないガジェットであり、発想が本当に素晴らしいですよね。

それにしても、スン・リーの優雅な舞は、時間を止める魔力を持つ効果があるようだ。監督のチャン・イーモウは徹底的にやる性格であり、土砂降りの雨は、ついに降り止まず、墨絵の背景はあくまでも黒と白を重ねて、一切の色彩のほころびを封じ、陽と陰の太極図は、ぐるぐると舞うような武術の傘の形の武具となって、苛烈な美の波動を貫いていた。

ここまで突き抜けた美学で統一されると、観ている側としては息苦しくもなるが、それを最後まで貫き通すから舞台が一種、抽象化されて、人間の感情、影武者をめぐる愛と禁欲の葛藤が、言葉となって遡るシェイクスピア劇となっているのだ。

ラストで、“影武者”が敵と戦い勝利するところ。沛国の重臣・都督(ととく)は、これでお前は自由の身だというのだが、そこで影武者が都督(ととく)を襲い殺してしまう。そして、自分が沛国の重臣・都督の座に座るということになるわけ。都督の妻ともいい仲なので、これまた結構な物語であります。

しかし、チャン・イーモウが撮る武侠映画は、総じて美意識が高いが、今作品は群を抜いていたと感じた。映像の光と影、濃淡の微妙に濁らせたカラーグラディエション、全編カットで完璧な構図が素晴らしく、殆ど水墨画である。

画面に映し出される陽と陰の二項対立を中心としたそのミニマムな物語、展開は、CGで水増しされた大量の兵士が入り乱れるような、大仰な戦記ものとは違って、対峙する人間関係を真摯に捉えていて、剛柔併せもったアクションによって昇華していて、最後まで息が抜けないのも良かった。

 

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荒野の誓い ★★★・5

2019年10月06日 | アクション映画ーカ行

「クレイジー・ハート」「ブラック・スキャンダル」のスコット・クーパー監督が、クリスチャン・ベイルを主演に迎えて贈るウエスタン・ドラマ。西部開拓時代が終焉を迎えた19世紀末期のアメリカを舞台に、アメリカ・インディアンとの戦いで武勲をあげた伝説の陸軍大尉が、宿敵であるシャイアン族の首長とその家族を故郷へ送り届ける任務を命じられ、渋々ながら繰り出した過酷な護送の旅を通して、少しずつ互いの理解を深めていくさまを描く。共演にロザムンド・パイク、ウェス・ステューディ。

あらすじ:1892年、アメリカ・ニューメキシコ州。かつてのインディアン戦争の英雄で退役間近のジョー・ブロッカー大尉は、収監されていたシャイアン族の長イエロー・ホークとその家族を、インディアン居留地となった彼らの故郷モンタナ州に護送するよう命じられる。戦争で多くの仲間を殺されたジョーは、インディアンへの憎悪を剥き出しにしてこれを拒否する。しかし軍法会議になれば年金がもらえなくなると上官に脅され、渋々ながらも命令を受け入れる。こうして信頼できる部下4人とともに、イエロー・ホークの家族を護衛してモンタナへの長い旅へと出たジョー。途中、コマンチ族によって家族を皆殺しにされた女性ロザリーを保護すると、彼女も隊に加えて先を急ぐ一行だったが…。

<感想>西部劇のかたちで現代アメリカの対立構造を暴く問題作であります。冒頭の音楽が静かに流れるという言葉の余韻に浸りつつ、まるでジョン・フォードの「捜索者」のような始まりなのだ。だが、シャイアン族の娘は拉致されずに殺されてしまう。美しく成長した娘の帰郷で終わる「捜索者」に対して、この映画の最後は、生き残った3人の疑似家族の旅立ちを描いて終わるのだ。

米国公開時、「史上もっとも残酷な西部劇」とも評された本作。日本人のマサノブ・タカヤナギによる撮影は、「捜索者」も引用して壮麗だが、物語は凄惨殺感が、極まりない地獄絵図の連続であった。

スコット・クーパー監督は、今回も米国史の暗部をむき出しにしようと試みているのだ。ニューメキシコからコロラド、そしてモンタナへ。あまりにも美しく広大な自然を背景に、分断された世界の憎悪と怒り、贖罪と和解を描いた西部劇の傑作。

インディアンとの抗争が収束しつつある1892年のアメリカを舞台にし、その「負の歴史」を「現在の断絶」と重ねた視点から描いている西部劇。殆ど現代的価値観に沿って描かれる人種間の対立の問題は、故ドナルド・スチュワートによる草稿には存在せずに、監督が追加したという。

相変わらずのクリスチャン・ベイルの仏頂面が荒野に映えるのだが、シャラメやプレモンスに、フォスターなど若手売れっ子たちが、短い出番にもかかわらず参加しており、この視点、アプローチへの関心の高さが伺えるのだった。

こうした「負の歴史」を認めて、エンタテインメントとして真正面から描きつつ、観客に考えを促す映画が公開できるのもまた、アメリカだなぁ、と改めて思いました。

作中、マックス・リヒターの音楽は、哀しみに襲われ登場人物たちに、静に寄り添っていた。音楽だけではない、行き届いた音の調整が、激しい戦いが繰り広げられる荒野の荒涼感を演出していた。

ジョー・ブロッカー大尉のうめき声は、雷の音にかき消されるも、家族を埋葬し、子供のように号泣するロザリーの泣き声は、荒野に響きわたる。一緒に旅をすることにしたロザリーは、無表情で笑うことを忘れたような、まるで死に顔になっていた。途中でインディアンの襲撃に遭い、女2人が拉致誘拐されてしまう。レイプ暴行され、まだ殺されないだけましなのか、死の確実性に惹かれても、人はいくつになっても、慣れない人生を生きていくのだろう。

この映画の殺伐とした世界観は、トランプ大統領の下で底知れぬ敵意と、憎しみで分断されてゆく。アメリカ合衆国の心象風景そのものを描いているようだった。その間に西部劇のエッセンスの全てが、ゆっくりとした移動の織りなすこのジャンルならではのリズムで展開してゆくのだ。

最後にインディアンと和解する主人公、ジョー・ブロッカー大尉の成長は、異人種への差別、増悪を少しづつ克服していった西部劇の歴史そのものの縮図のように見えた。

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