パパと呼ばないで

再婚した時、パパと呼ばないでくれと懇願した夫(←おとうさんと呼んで欲しい)を、娘(27)「おやじ」と呼ぶ。良かったのか?

今度生まれたら

2023年03月08日 | 本・マンガ・テレビ・映画
3月8日(水)晴れ

内館牧子著「今度生まれたら」読了。
書評によると「終わった人」「すぐ死ぬんだから」に続く「老後」小説 とある。
「終わった人」は未読だが「すぐ死ぬんだから」は以前読んで面白かった。
でも「今度生まれたら」の方がワタクシは好き。
いや、もしかしたらどんどん老後が迫っているから、以前より身に沁みて、面白かったのかもしれん。

主な登場人物は佐川夏江(70歳)、結婚48年になる夫(72歳)。40代の息子が二人いる。
夏江の姉夫婦は高校の同級生で、若くして結婚して一人娘がおり、結婚した娘の婿も合わせて家族皆仲良し。
夏江は、今や寝室も別々の夫の寝顔を見ながら「今度生まれたら、この人とは結婚しない」とつぶやくところから物語は始まる。

この、「今度生まれたら」という発想は、誰しもするだろう。
大人だけの発想でもない。
子供の頃は「今度はお金持ちのおうちに生まれたい」とか「今度はお姉ちゃんがいるおうちに生まれたい」とか思う。
途中、そういう夢想も出来ないくらい忙しい時期が過ぎ、夫婦間でトラブったり、子供のことで悩んだりした時にまた「今度生まれたら」という発想が浮かぶのだろう。
いや、せんなきこととは皆わかっているのだ。
でも、「今度生まれたら」とか「生まれ変わったら」とか口にしてしまうのだ。
よくある話よ!と思いながら読み始め、あれ?ちょっと思ってたのと違ったのは、彼女は、自分の理想の人と結婚していたという点。
時代が三高をもてはやし、女は学がなくて愛嬌があった方がいいと言われた時代。
あったのですよ、今の人達には想像もつかないだろう時代が。ワタクシも、ちょっとこの時代にかかっているもので、身につまされる。
ここが内館氏の上手いところだ。
主人公夏江は、頭も良く、親も理解あって自分の進みたい道を選べと言ってくれたにも関わらず、お嬢様短大へ進学し、一流企業に就職し、その中で屈指のエリートで長身の和幸に狙いを定め、見事結婚へ持ち込んだ。
ここでワタクシ、ちょっと鼻じらむ。
ちっ!理想の人と結婚できたんなら文句ないでしょうよ。
しかし、この後、少しずつ語られる中に人生を考えさせられていくのだ。
よくテレビに出ている文化人女史高梨の登場もなかなか上手い。
夏江と同い年の高梨は、弁護士で、ニュース解説したり、大学の客員教授をしたりしている。
夏江と同じ学区の底辺高校出身と聞き、夏江は愕然とする。
夏江は学区一の名門校出身なのだ。
先生方は千葉大へ行けとしきりに勧めたが、高学歴は結婚の邪魔になるからと聞く耳持たず。
そして70になった今、愕然とする。
これもまた気持ちがわかる。
ワタクシは4流高校出身であるが、さらにはそこを落ちた男子がいて、でも彼はその後、医者になり、今、高齢者(我が母の知り合い達)から頼りにされている。
拝み倒されている。
そのほかにも、同窓会で思いもかけない子が出世してたりすると、頑張ったんだなあ〜と我が身と比較したりしては情けなかったり・・・
時代のせいにしてきたが、そういう風潮に負けないで頑張ったんだなあという女子を見ると一層情けなさが募ったり。
これが、前半10ページくらいの感想で、この後、夏江自身のこしかた、姉夫婦のこと、息子達のことなど、どれもリアリティあって、あっという間に読み終えた。
前半はまるで自分の人生を責められているようだったが、後半ぐんぐん面白く、読後感が良いのもワタクシ好み。

老後をどう過ごすか、人それぞれで、終活や断捨離に励む人もいるし、ボランティアや趣味にのめり込む人もいるだろう。
まだまだバリバリ働いている人もいるだろう。
自分の老後を考えるためにも、なかなか良いタイミングだったと思えた。
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