労働者民衆の「憲法」をつくろう!

現行憲法の思想と決別し、労働者の自立した思想を勝ち取ろう。タイトルを変更しました。

現在のアメリカの世界戦略は?

2015年06月30日 | 政治社会

世界の警察官といわれた時期があったが、オバマは否定している。その理由の一つは、軍事費を削減せざるを得ない財政状態にある。アメリカの国家財政は、大きな赤字を抱えている。その赤字削減を野党から迫られ、その対象の一つが軍事費であった。
 第二次大戦後のアメリカには巨額の金が集まっていた。戦争でひとり勝ちをした結果。それを背景にして、ドルを金とリンクし、国際決済通貨としての信頼は確固としたものとした。それだけでも利益をもたらすが、アメリカはこの圧倒的な経済力と軍需力を背景として、戦後の世界政治経済秩序を自国に有利なものにした。IMFや世界銀行がそれである。また、アメリカは自由貿易を呼びかけ、関税の一括引き下げを追求。しかし、これはうまくいかなかった。関税の一括引き下げはアメリカに圧倒的に有利な結果をもたらすことが明白であったから。大戦によって破壊された産業力が十分回復していない状況では、アメリカ以外のどの国も同調しない。アメリカにとっても、ヨーロッパの経済が回復しなければ、自国の膨張した生産力が生み出す諸商品が海外に売れない。アメリカは、ヨーロッパの経済回復のために、巨額の援助(マーシャル・プラン)を行う。これによって、西欧の経済は次第に回復していく。日本もまた、朝鮮戦争をきっかけにして経済を回復させ、高度成長させた。それに伴いアメリカの経済的優位は次第に低下していく。そして、71年、アメリカはドルと金の交換を停止する。ドルの威信の低下を物語る。そして、それはアメリカの経済力が相対的に低下していることを示している。(ただ、それでもドルが国際決済通貨であることは変わらなかった。)その傾向は現在まで続いている。
 もう一つの理由は、戦後世界秩序=冷戦体制の崩壊である。
 階級性の異なる大国アメリカとソ連の対立は、世界のさまざまな場で生起する労働者民衆、被抑圧階級の闘争をこの対立の溝に沿って分裂させ、出口のない袋小路に閉じ込めてきた。この冷戦体制は、アメリカ圏(=資本主義)とソ連圏(=反資本主義、非資本主義)という領域をつくり出し、互いに干渉しないようにしていた。ソ連圏内部の労働者民衆の闘争(=ハンガリー、チェコ、ポーランドなど)にアメリカは介入しなかった。しかし、時々領域をまたいだ争いが起きた。朝鮮戦争であり、ベトナム戦争がそれである。朝鮮戦争は冷戦体制を確立させた。特に東アジアで。ベトナム戦争は、緩み欠けた冷戦体制を、労働者民衆の闘いを冷戦構造の溝に沿って再分裂させ、冷戦構造を補強する役割を果たした。キューバ危機は、ソ連の指導者がフルシチョフに代わり、冷戦構造の意味を十分理解していない結果、冷戦構造を破壊する寸前まで行ってしまった。
 労働者階級にとっては冷戦体制は打倒の対象であった。しかし、反スターリン主義やスターリニスト官僚打倒を掲げた新左翼・トロツキスト(FI)は、戦後世界秩序を打倒する綱領を獲得し得なかった。だから、戦後革命的情勢は現出したが、実現しなかった。その総括が必要である。従って、冷戦体制は資本主義の復活とさらなる発展が保障された。
 そして、ソ連の自壊によって冷戦体制は崩壊した。ソ連の自壊の原因については、別途書かなければならない。
 冷戦体制(=世界秩序)は崩壊したが、今日、それに取って代わる新たな秩序は形成されていない。かといって、世界は大混乱に落ちいているかというと、そうなっていない現実がある。では秩序が維持されていると言えるのではないだろうかという疑問が出てくる。冷戦体制が崩壊しても直ちに戦国時代のようにならないのは、経済の秩序がある程度機能しているからでしょう。また、国際的なさまざまな機構を戦後作り上げてきたので、それがまだ機能しているからといえます。IMFや国連などもその一つです。現在世界はすべて資本主義社会です。そのシステムはまだ機能しています。リーマンショックによって、かなり揺らいだが、持ち直した。それは、資本の蓄積がかなりあることを示している。
 しかし、冷戦体制の崩壊の影響は徐々に出てきています。
 一つは、ナショナリズムの強まりです。戦後、民族解放闘争が盛んにおきました。植民地になっていた国々における宗主国が戦争によって弱体化したり、敗北したりしたことが大きな原因でしょう。冷戦体制の確立とともに、ナショナリズムは弱くなりましたが、冷戦体制の崩壊によって、それまでの求心力=国際協調力が弱まりました。かつて、ソ連圏・アメリカ圏、それぞれの団結を重要視して、国益の主張を抑えてきた各国は、冷戦体制の崩壊によって、団結=求心力を重視する観点が弱まり、国益追求が優先順位第1位になった。つまり、経済がそれまでも重要であったが、よりいっそう重要度が増した。
 このような状況では、アメリカの求心力は大きく低下せざるを得ない。この状況に拍車をかけたのが、中国の経済的急成長である。中国は経済的成長を背景に、軍事力を強化しまた、経済力を背景にした外交を展開し、世界政治において影響力を拡大強化している。
 ソ連の崩壊は、資本主義先進国における経済が行き詰まりを顕在化させる時期とオーバーラップする。ただ、ソ連圏の解体は資本にとって新たな市場を提供したので、一時的には生産を刺激する役割を果たした。でもその程度であった。
 先進資本主義国の経済の行き詰まりは、一層国益重視の姿勢を強くした。BRICSの台頭が世界経済を刺激し、牽引した時期もあったが、現在はその勢いもあまりない。
 各国のナショナリズムは、世界経済に活力が感じられない状況では、ますます強まっている。そして、それは、ソ連崩壊後の世界では遠心力として働く。アメリカはこの状況を単独で、またG7で秩序として組織する力は無い。

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国会の憲法論議は茶番だ!

2015年06月16日 | 政治社会

安保法制をめぐる、国会の憲法論議は、茶番劇である。憲法九条は、個別自衛権と集団的自衛権を放棄している。だから、在るとか無いとかの議論は間違った九条理解の基づいて行われている。もし個別自衛権と集団的自衛権を持ちたいのであれば、憲法九条を変えれば良い。だからこそ、自民党の改憲草案の九条二項に「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。」と入れているのではないか?自民党の国会での主張「個別自衛権と集団的自衛権が、現行憲法にある」とするなら、改憲草案に入れる必要はない。国会の議論のレベルは低い。また、59年の最高裁の砂川判決が集団的自衛権を認めた、認めないの論議をしているが、この判決は、米軍の基地は憲法違反かどうかの判断はできない、というものであった。最高裁が憲法判断を放棄したことは、憲法違反である。憲法76条に「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」とある。砂川判決ではこの司法権を放棄したのである。憲法八一条に「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則または処分が憲法に適合するかしないかを決定をする権限を有する終審裁判所である。」とある。国際条約とはいえ、憲法に反する内容が含まれている場合は、その条約は違憲であるので、破棄しなければならない。これができなければ、国の主権は大きく制限される。
 砂川判決は「法治国家崩壊」のなかで、それがいかに政治的なものであるかを、具体的に暴露されている。違憲という「伊達判決」を覆すために日米両政府が介入した結果である。最高裁長官田中はこれに与したのである。この事実を踏まえて議論しなければ、問題の本質は明らかにされない。
 このような国家主権が著しく制約される事態がなぜ起きたのか?
 ポツダム宣言を受諾するに際し、日本の支配層は「国体」が護持されるかどうかが最大の関心事であった。「国体の護持」が確認できたので、ポツダム宣言を受け入れることに、つまり敗戦を認めた。国体護持以外は、あまり関心が無かった。抵抗はしたが、マッカーサーに押し切られる。マッカーサーの関心は、平穏に占領を維持することであった。そのために、天皇を利用した。天皇の戦争責任を問わないことで、天皇を懐柔し占領政策に協力させた。天皇は見返りに沖縄の米軍の駐留を占領期間が終わっても継続することを認めた(実体は、お願いした)。朝鮮戦争の勃発は、アメリカの東アジアの戦略を変更させるものであった。日本は「反共の砦」と位置づけられ、経済復興と右翼的労働運動の奨励、共産党弾圧=レッドパージ-戦犯の釈放と、公職追放の解除などがすすめられ、占領政策は大きく右に舵が切られた。 

憲法制定に関しては、占領下において行われた。マッカーサーの押しつけであるが、拒否しなかった日本の支配層。それに比べドイツは占領が終わってから自分たちで憲法を制定した。この違いの意味は、国家主権が確保されたドイツにたいし、日本は国家主権が確保されない状況下で憲法を制定させられた。だから「押しつけられた憲法」といえるが、拒否できなかった日本の支配層・政治指導者の姿勢が問題であった、ということになる。これ以降の日本の政治は、アメリカに従属せざるを得ないものになった。その結果が、砂川判決に現れてきた。
 憲法問題の根本にはこのようなアメリカの東アジア戦略とそれに基づく日米安保条約が横たわっていた。憲法九条が「個別自衛権と集団的自衛権」を放棄している以上、日本の自衛はアメリカ軍の駐留に頼らざるを得なかった。だから米軍基地は日本の自衛のためという論理展開になると、自民党・安倍内閣は考えているようだ。だが、前述したようにそれは、占領下、日本の国家主権が存在しない状態で、アメリカの押しつけられたもので、その現実を正当化することになる。とするなら、自民党と安倍がすすめようとしている改憲の論理的根拠を失う。
 

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日米新ガイドライン、安保法制の強化の政治的意味は何か?

2015年06月06日 | 政治社会

1,アメリカの世界戦略は?
・世界の警察官といわれた時期があったが、オバマは現在否定している。その理由の一つは、軍事費を削減せざるを得ない財政状態にある。アメリカの国家財政は、大きな赤字を抱えていた。その赤字削減を野党から迫られ、その対象の一つが軍事費であった。
 第二次大戦後のアメリカには巨額の金が集まっていた。戦争でひとり勝ちをした結果。それを背景にして、ドルを金とリンクし、国際決済通貨としての信頼は確固としたものとした。それだけでも利益をもたらすが、アメリカはこの圧倒的な経済力と軍需力を背景として、戦後の世界政治経済秩序を自国に有利なものにした。IMFや世界銀行がそれである。また、アメリカは自由貿易を呼びかけ、関税の一括引き下げを追求。しかし、これはうまくいかなかった。関税の一括引き下げはアメリカに圧倒的に有利な結果をもたらすことが明白であったから。大戦によって破壊された産業力が十分回復していない状況では、アメリカ以外のどの国も同調しない。アメリカにとっても、ヨーロッパの経済が回復しなければ、自国の膨張した産業力が生み出す諸商品が海外に売れない。アメリカは、ヨーロッパの経済回復のために、巨額の援助(マーシャル・プラン)を行う。これによって、西欧の経済は次第に回復していく。日本もまた、朝鮮戦争をきっかけにして経済を回復させ、高度成長させた。アメリカの経済的優位は次第に低下していく。そして、71年、アメリカはドルと金の交換を停止する。ドルの威信の低下を物語る。そして、それはアメリカの経済力が相対的に低下していることを示している。(ただ、それでもドルが国際決済通貨であることは変わらなかった。)その傾向は現在まで続いている。
 ・もう一つの理由は、戦後世界秩序=冷戦体制の崩壊である。
 階級性の異なる大国アメリカとソ連の対立は、世界のさまざまな場で生起する労働者民衆、被抑圧階級の闘争をこの対立の溝に沿って分裂させ、出口のない袋小路に閉じ込めてきた。この冷戦体制は、アメリカ圏(=資本主義)とソ連圏(=反資本主義、非資本主義)という領域をつくり出し、互いに干渉しないようにしていた。ソ連圏内部の労働者民衆の闘争(=ハンガリー、チェコ、ポーランドなど)にアメリカは介入しなかった。しかし、時々領域をまたいだ争いが起きた。朝鮮戦争であり、ベトナム戦争がそれである。朝鮮戦争は冷戦体制を確立させた。特に東アジアで。ベトナム戦争は、緩み欠けた冷戦体制を、労働者民衆の闘いを冷戦構造の溝に沿って再分裂させ、冷戦構造を補強する役割を果たした。キューバ危機は、ソ連の指導者がフルシチョフに代わり、冷戦構造の意味を十分理解していない結果、冷戦構造を破壊する寸前まで行ってしまった。
 労働者階級にとっては冷戦体制は打倒の対象であった。しかし、反スターリン主義やスターリニスト官僚打倒を掲げた新左翼・トロツキスト(FI)は、戦後世界秩序を打倒する綱領を獲得し得なかった。だから、戦後革命的情勢は現出したが、実現しなかった。その総括が必要である。従って、冷戦体制は資本主義の復活とさらなる発展が保障された。
 そして、ソ連の自壊によって冷戦体制は崩壊した。ソ連の自壊の原因については、別途書かなければならない。
 冷戦体制(=世界秩序)の崩壊は、今日、それに取って代わる新たな秩序は形成されていない。かといって、世界は大混乱に落ちいているかというと、そうなっていないことは分ると思います。では秩序が維持されていると言えるのではないだろうかという疑問が出てくると思います。冷戦体制が崩壊しても直ちに戦国時代のようにならないのは、経済の秩序がある程度機能しているからでしょう。また、国際的なさまざまな機構を戦後作り上げてきたので、それがまだ機能しているからでしょう。国連もその一つです。
しかし、冷戦体制の崩壊の影響は徐々に出てきています。
 一つは、ナショナリズムの強まりです。戦後、民族解放闘争が盛んにおきました。植民地になっていた国々が、宗主国が戦争によって弱体化したり、敗北したりしたことが大きな理由でしょう。冷戦体制の確立とともに、ナショナリズムは弱くなりましたが、冷戦体制の崩壊によって、それまでの求心力=国際協調力が弱まりました。かつて、ソ連圏・アメリカ圏、それぞれの団結を重要視して、国益の主張を抑えてきた各国は、冷戦体制の崩壊によって、団結=求心力を重視する観点が弱まり、国益追求が優先順位第1位になった。つまり、経済がそれまでも重要であったが、よりいっそう重要度が増した。
 このような状況では、アメリカの求心力は大きく低下せざるを得ない。この状況に拍車をかけたのが、中国の経済的急成長である。中国は経済的成長を背景に、軍事力を強化しまた、経済力を背景にした外交を展開し、世界政治において影響力を拡大強化している。
 ソ連の崩壊は、資本主義先進国における経済が行き詰まりを顕在化させる時期とオーバーラップする。ただ、ソ連圏の解体は資本にとって新たな市場を提供したので、一時的には生産を刺激する役割を果たした。でもその程度であった。
 先進資本主義国の経済の行き詰まりは、一層国益重視の姿勢を強くした。BRICSの台頭が世界経済を刺激し、牽引した時期もあったが、現在はその勢いもあまりない。
 各国のナショナリズムは、世界経済に活力が感じられない状況では、ますます強まっている。そして、それは、ソ連崩壊後の世界では遠心力として働く。アメリカはこの状況を自己の力で、秩序として組織する力は無い。

2,安倍には世界戦略はない。在るとすれば東南アジア戦略である。それは、これから、東南アジアのより一層の経済成長が期待できるからである。日本の企業も中国から東南アジアにシフトし始めている。そして、そこは中国もまた力を注いでいる。アジアインフラ銀行の設立は、中国主導のもと国際的な広がりを見せている。既存のアジア銀行に対抗するものであることは、明白。インフラ整備はその国や地域の産業を活発化させる。
 安倍と中国のせめぎ合いが始まっている。そして、それは南シナ海の覇権をめぐる争いとして、緊張が高まっている。アメリカもこの地の経済成長に注目している。TPPへの参加もそれがある。したがって、アメリカにとっても、南シナ海の緊張は見逃せない。中国の力による領有の主張は認めることはできないようだ。
 中国の経済力を背景にした強化された軍需力には、日本単独では対抗することはとてもできない。だから、安倍は強引でもアメリカとの同盟関係を強化するしか中国に対抗できないと考えている。それが、新ガイドラインであり、安保法制の強化である。どこかの政治組織は、この安保法制強化を「侵略戦争法案」と呼んでいるが、どこを何のために侵略するというのだろう。

3,中国の安保(次回)

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