パンを食いながら

会社に独り残り、パンを食いながらヒサシの到着を待っている。
そういえば、六月も同じようなことがあった。あの時、待っていたのは子持ちバス、傲慢な男だった。
今回はヒサシ、腹黒い男である。傲慢やら、腹黒やら、ろくでもない形容詞のついた男ばかりだ。

それにしても、まだ時間があるな。一眠りしておこうか。

出陣！

CR‐Xのエンジンに火を入れ、東京に向かった。
今日はいよいよ出陣の日である。勤務後に腹黒い男と合流し、遥かなる北の地へと向かうのである。

北の聖地で釣りをした後、山中の秘湯へと進み、俗世の垢を流してくる予定だ。
もう我々も若くはない。目の色を変えて「釣り、釣り」と騒ぐばかりではなくなったのだ。
ゆったりとした時間の中で退屈をする贅沢、そんな癒しの休日を過ごしてくるつもりだ。

今回泊まる期待の温泉宿について話しておこうか。
青森県は温川温泉、温川山荘である。温川は「おんかわ」でなく「ぬるかわ」と読む。
吊り橋を渡った所に露天風呂があるという山中の秘湯で、かなり人気があるらしい。以前に一度行こうと思ったが、満室で泊まれなかった宿である。期待十分。

温泉だけでなく、山海の珍味、いや海でなく川だろうから山川の珍味と言おうか、それもまた楽しみだ。
次週、僕はそのまま残って仕事となるが、ヒサシは先に帰る。温泉旅行の模様は、ヒサシがブログにて腹黒くレポートしてくれるだろう。