「あしたの朝子」は,1958年生まれの山口恵以子の作品。2015年6月刊行。私と同世代の作者は母親を通して,なつかしの昭和に迫る。
昭和4年,白山朝子は,千葉の館山の老舗旅館に生まれた。昭和27年,23歳の時,見合いをすっぽかし,声優の試験を受けるが落ちる。夢を捨てきれず,東京の喫茶店に勤めながら勉強していたが,ふとしたきっかけで,谷口勝弥と一夜を共にし,結婚することになる。その嫁ぎ先は,理髪のハサミを作る工場の経営者だった。
少しずつ舅の弥次郎との信頼関係を築く。集団就職,商店街,東京オリンピック。今では遠い昔となった昭和の家族。
出産,子育て,夫の浮気,昔の思い人との出会い,子の就職と結婚。時代とともに,ずれていくハサミの価値。弥次郎と勝弥の確執。経営不振と工場閉鎖。
時代の流れに身を任せるしかない中で,力強く生きていく朝子。小気味のよい書きぶりが,辛さや苦しさを感じさせず,当時の空気とともに,いきいきと母の人生を描く。
こんな時代があったなと思わせ,懐かしさがあふれ出す。もう帰っては来ないあの日々。前を向くしかないなんだなあ。
昭和4年,白山朝子は,千葉の館山の老舗旅館に生まれた。昭和27年,23歳の時,見合いをすっぽかし,声優の試験を受けるが落ちる。夢を捨てきれず,東京の喫茶店に勤めながら勉強していたが,ふとしたきっかけで,谷口勝弥と一夜を共にし,結婚することになる。その嫁ぎ先は,理髪のハサミを作る工場の経営者だった。
少しずつ舅の弥次郎との信頼関係を築く。集団就職,商店街,東京オリンピック。今では遠い昔となった昭和の家族。
出産,子育て,夫の浮気,昔の思い人との出会い,子の就職と結婚。時代とともに,ずれていくハサミの価値。弥次郎と勝弥の確執。経営不振と工場閉鎖。
時代の流れに身を任せるしかない中で,力強く生きていく朝子。小気味のよい書きぶりが,辛さや苦しさを感じさせず,当時の空気とともに,いきいきと母の人生を描く。
こんな時代があったなと思わせ,懐かしさがあふれ出す。もう帰っては来ないあの日々。前を向くしかないなんだなあ。