凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

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僕の旅 番外編・カナダ

2009年08月23日 | 都道府県見て歩き
 新婚旅行など、あまり真剣に考えていなかった。日が近づくまで。
 それより、結婚式とか披露宴の方に気をとられていた。僕は当時、転勤で北陸の街に住んでいたのだが、両親はもとより親戚も友人もこの地には居ない。僅かに上司、同僚がいる程度だ。なので普通なら地元の関西で、とすべきだが、結婚相手が東北出身で関東在住ときた。もうバラバラである。紆余曲折あって、結局は僕が今居るところの北陸でとり行うことになった。出席者はほとんどが移動を伴う。
 僕はそんな手配やら準備やらで、空いている時間は全て忙殺されていた。地元には手伝ってくれる人もいない。妻になる予定の人すらいないのだ。何でも一人でやらざるを得なかった。旅行なんてそのうち手が空いたときに考えればいいや、一年以内に行けばいいんだろ、くらいに思っていた。

 しかし、そういうものではないらしい。
 僕はあちこちから脅された。一生に一度のものを、そんなオマエがいつもやってるノープラン旅行と同列に考えるものではない。ハネムーンは夢がないと。適当にすれば一生言われ続けるぞ。等々。
 僕は妻になる予定の人に電話した。どうしようか?
 彼女は言う。やっぱり外国がいい。こんな機会でないと行けないから。条件はまず治安のいいところ。そして、ちゃんと旅行会社のツアーに乗っかった方が安心である。それから綺麗な風景が観たい、と。
 なるほど。僕は外国と言えばすぐ「深夜特急」みたいなものを連想してしまったが、それは確かにハネムーンらしくない。じゃもうこの際、普段は絶対にやらない大名旅行にするか。パスポート申請しておけよ、近々決めるから。

 新婚旅行の定番は、まだまだハワイだったと思う。しかしあまり興味が持てない。大名旅行と言えばヨーロッパだろうが、それは予算的に難しい。
 僕の頭の中には、候補地が二ヶ所浮かんでいた。ひとつはカナダのロッキー山脈。もうひとつはニュージーランドのマウント・クック。どちらも憧れる風景である。熟慮の末、カナディアン・ロッキーに決めた。旅行会社に行き、パンフもらって相談をしてきた。
 夜、妻になる予定の人に電話をする。
 「カナダにしようかと思うんやが」
 「いいわねー。当然ナイアガラの滝?」
 「いや…それは考えてへんかった…」
 「あんたカナダ行ってナイアガラ行かなくてどこ行くのよ!」
 どうも彼女はカナダと言えばナイアガラしか知らないらしい(汗)。ロッキーとナイアガラといえば東部と西部で時差があるくらい離れているのだが、こっちも譲れず、結局「デラックスホテルで旅するナイアガラとカナディアンロッキー・ビクトリア10日間」というとてつもなく長い名称のツアーに参加することになった。DXホテルですか。文字通り大名旅行になってきたな。

 さて、結婚式。とにかく疲れ果てた。もう二回はしたくないですな。
 式は午前中、披露宴は昼に設定したので(遠方の方に配慮して)、全ての出席者を見送って夕刻、一旦うちへ帰り(僕の住んでたマンションにそのまま妻になる人は転がり込んだのでラクだった)、休む間もなくバタバタと着替えて列車に乗る。成田発なので、とりあえずその日は東京まで行った。いつも旅と言えば小さなリュックを背負う程度だが、今回はデカいトランクなんぞ持っている(レンタルだが)。なんせデラックスホテルに泊まるので、夜はドレスアップもせねばならない。大名旅行も大変なのだ。
 
 翌日、成田へ向かうのだが、フライトは実は夕刻に近い時間であり余裕がありすぎ、しばらく東京に居た。なんだか久しぶりにゆったりとしている。
 二時間前には集合ということで、昼には成田へ行く。国際線に乗るのはなんせ初めてであり勝手がわからない。税関を通り出国審査、さまざまな検査の後やっと搭乗となる。
 このまま8時間半雲の上を飛んで、バンクーバーに降り立つ。初めての外国だが、日付変更線を超えたため、なんと当日の午前中だ。体内時計はもう真夜中を指しているのに時間が逆戻りした。モーローとしてくる。ここからフェリーでジョージア海峡を越えビクトリアへ移動する。
 このフェリーから観た風景が忘れられない。岸辺に、いかにもヨーロピアンで瀟洒な家がいくつも見える。映画を観ているようだ。なるほど、英連邦なのだな。ようやく外国にいる実感がわいてきた。ただ、ちょっと小腹が空いたので、船内でサンドイッチを求めたら、パンに薄切りハムがどさっと大量に重ねられて挟まれたものが供された。うーむ、これは英国風じゃなくてアメリカンだな。そういえばここはアメリカ国境に隣接している。
 
 そうしているうちにビクトリアに着いた。街並みが美しい。気品がある。いかにも英国風のたたずまいである(イギリスなんぞ行った事ないけど)。
 州議事堂、クリスタルガーデンなどを経て、バスはホテルについた。ビクトリアが誇るエンプレス・ホテルである。確かにデラックスホテルの名に恥じない。こんな感じなのだが、重厚感溢れるその姿に思わず気後れする。こんなホテル泊まったことないぞ。
 夕食は、きちんとしたレストランなので正装せねばならない。まあ盛装までしなくてもいいのだが、ネクタイなぞを締める。妻になった人は一張羅のドレス(風のワンピース)である。ワインなんぞ頼んで雰囲気を味わう。たまにはいいか。こんなの一生に一度だな、と言うと、妻になった人はえーっと文句を言う。一生に一度は確かに言い過ぎたが、以来15年を過ぎ、やっぱりこういう雰囲気の中での食事は数えるほどしかない。

 翌日は、ビクトリア観光。花の咲き乱れるブッチャートガーデン。ビーコン・ヒル公園。ゼロマイルポイント。その他あちこちへ行く。
 午後からは自由行動となる。ツアー客はみな時差ボケで昼寝らしい。僕たちは、目の前のインナーハーバーから住宅地へと散歩に出る。
 こうして歩くと、外国に来ている雰囲気がふつふつと沸く。ただの家々が並ぶ場所でも、家のつくりが違う。街路樹が違う。マーケットに入ってみる。これもまた楽しい。

 ビクトリアからカルガリーに飛行機で移動する。
 カルガリーという地名を聞けばついダイナマイトキッドとかを思い出してしまうのだが、カルガリーは素通りしてここからロッキー山脈へと向かう。バスに延々乗って、ホテル着。シャトゥ・レイク・ルイーズホテルである。ここも凄い。ロッキーの宝石とも謳われるレイクルイーズの湖畔に建つデラックスホテル(しつこいか?)である。
 ホテルからルイーズ湖を臨む。湖面は深い蒼碧色にきらめく。その向こうには、ロッキーの山稜が聳え、その間を巨大な氷河が迫り来る。こんな風景を目前に出来るとは、全くのところ幸せである。

 翌日は雪が降っている。まだ10月初旬であるというのに。目の前の山塊が白く薄化粧をしている。これもまた良し、か。しかし寒い。 そうしているうちに雪がやみ雲が切れ、晴れた。
 終日、カナディアン・ロッキー観光。巨大な岩の塊である山脈、そしてその山々に囲まれた珠玉の湖たち。美しい。この世のものとは思えぬほど美しい。僕はここに来たかったのだ。
 ボウ・レイク、ウォーターフィールレイク、ペイト・レイク。この湖たちは、氷河の成分が流れ込んでいるため乱反射し、みなエメラルドグリーンに輝く。それらが、雄々しき山々の懐ろにひっそりと佇む。山たちは、天地創造の下、一斉に高く聳え上がり、乱暴に削られた断層もそのままに、以来ずっと静寂を保ち続け、荘厳かつ険しい表情を見せている。すげえ。そしてどこまでも続く針葉樹林。またそれらを切り裂くように降りてくる氷河。それらをぬってアイスフィールド・パークウェイは走る。スケールが尋常ではない。
 アサバスカ氷河に着いた。コロンビア氷原から流れ出している。コロンビア氷原は、北極圏を除くと大陸で最大の面積を誇る氷河である。雪上車に乗り換え、氷河の只中へ行く。クレバスが口を開ける。降り立つと、ひたすら氷の塊である。その氷塊から落ちる水をグラスに受け、ウイスキーを割って飲んでみる。旨い。この氷河の背後に広がる山脈は大陸の分水嶺にあたり、ここから北極海、大西洋、太平洋に水を注いでいる。 
 余は満足である。今日はバンフ・スプリングスホテルに泊まる。このホテルはまるで古城だ。こんな感じなのだが、さすがはデラックスホテルの旅(もういいって)である。実にエレガントだ。

 翌日は終日自由行動の日。僕はどうしてもやってみたいことがあった。つたない英語でコンシェルジュに尋ね、自転車を二台レンタルした。ロッキーのふもとをサイクリングしてみたい。これは夢だった。妻になった人も付き合うと言ってくれた(ここで拒絶されるようならお先真っ暗である)。
 颯爽に走り出す。街を過ぎればもう大自然である。気持ちいい。多少寒いが、時間が経つと晴天となり、すがすがしい。カナディアンパシフィック鉄道駅からバーミリオン湖へ。ボウ滝からトンネル・マウンテンへ。この風景の中を走れるなんて最高である。途中昼に街に戻ってアルバータ牛のステーキを食べたとき以外は、ただ走り続けた。ああなんて幸せだ。サイクリスト冥利に尽きた。目の前を大鹿の群れが横切っていく。
 妻になった人はバテたようだ。すまんすまん趣味につき合わせて。走りすぎて夕食の時間に間に合わなくなりそうになり、慌てた(なんせ食事は正装しなくちゃいけないのでね)。

 名残惜しいロッキーを後にして、カルガリーまで出てまたフライト(移動ばかりだな)。トロントに着く。大都会だ。自然いっぱいのロッキーから出てきたからそう思うのか。いや、ここは考えてみればカナダ最大の都市である。高層ビルが乱立している。その中に、トラディショナルな建物も点在し、緑も多い。そりゃ日本だって都会の中に神社仏閣があったりするから同じか。
 トロント・ウェスティンホテルにチェックインしたあと、街へ出る。
 CNタワーに上る。このタワーは当時、世界で最も高い塔だった(今は抜かれた)。553.33m。447mに展望台があり、足がすくむ。こえぇよぉ。また、スカイドーム(今はロジャース・センター)も覗く。世界初の可動式屋根付き球場であるが、あの頃は日本人大リーガーなんて居なかったもんな。野茂がドジャースに行くのはこの二年後である。
 このツアーは基本的に夕食つきであるが、今日だけは無い。なので食事をしなくてはいけない。ホテル内ではつまんないので、街のレストランに入る。もちろんガイドブックで調べて行ったのだが、こういうのも多少緊張するもので。メニューが英語であるしね。まあ僕のブロークンでも何とか通じたので安心する。もっとも身振り手振りの方が多かったか。チップをどう渡すか、などと悩んだりもしたな。帰りにタクシーに乗ったがそれもまた冒険チックであった。
 
 さて、いよいよナイアガラの滝である。
 トロントからの車中、紅葉が美しい。ロッキーはずっと針葉樹林だったが、やっぱりここまで来るとカエデだ。カナダはメープルの国なのだ。途中、ナイアガラ・オン・ザ・レイクという小さな町に寄る。北米で最も古い街並みを残した町と言われている。なるほど、なんとも美しくも可愛らしい町だ。しばし散策。
 バスは細かく停車してくれる。クルツ・オーチャーズというマーケット。世界最大の花時計。道端の八百屋(ハロウィンが近くデカいかぼちゃが並ぶ)。そして川が急角度で曲がり大渦巻が出来ることで有名なナイアガラ川のワール・プール。そしてバスはナイアガラの滝に到着する。
 大瀑布だ。ちょっとレベルが違う。妻になった人も歓声をあげている。テーブル・ロックまで行くともう水しぶきが凄い。あまりにも巨大すぎて何がなんだか分からないくらいである。そこから、ゴミ袋みたいなビニールの合羽が配られ、トンネルを抜けてジャーニー・ビハインド・ザ・フォールズへ。歩いて滝に最も近づける場所だが、シャワーかスコールか何かもうよく分からない。ただ、迫力は凄い。
 戻って、スカイロン・タワーでランチ。楼上からは滝が一望である。
 このあと、ついに遊覧船「霧の乙女号」に乗って滝壷近くまで行く。さっきみたいなチャチなゴミ袋カッパではなく、しっかりとしたフード付きレインコートが配られた。近づくにつれ、轟音が響き渡る。大声を出しても話も出来ないほど。そのうち目も開けられなくなる(じゃなんのために来たのか)。もはや、怖い。水が大量に落下するとここまで迫力があるものなのか。
 そして、よく見るとやはり美しい。虹がたくさん架かっている。やはり来てよかった。

 もう旅も終わりに近づいた。翌日、トロントからバンクーバーへと戻る。懐かしきロッキー山脈を見下ろしながら。
 着いて、市内観光。花が咲き乱れるクイーン・エリザベス公園。ギャスタウン。スタンレー公園。ライオンゲート・ブリッジ。プロスペクトポイント。ソフトクリームをなめながら散策する。ちょっとお釣りをチップとして残す。こんなスタイルも慣れてきたが、明日は帰らねばならないのが寂しい。ホテルはハイアット・リージェンシー。デラックスホテルも、着飾って食事するのも最後である。
 名残惜しいので夜の街へ出る。夜景が美しい。大名旅行は我々にはそぐわないのでは、と思っていたが、いや、楽しかったよ。

 帰る日の朝。ダウンタウンをぶらぶらし、雑踏を歩き、初めての海外旅行を惜しむようにうろついた。後ろ髪引かれる思いで、午後の便でカナダを離れる。帰りは日付変更線のせいで翌日の午後になっていた。なんだかソンした気分。

 あれからずいぶん経ってしまったな。遠い昔を思い出しながら、新婚旅行記を書いてみた。
 

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2 コメント

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おおお 新婚旅行ですか! (まるちゃん)
2009-08-29 21:25:27
すてきです 凛太郎さん 新婚旅行にカナダ!
ロッキーでサイクリング 壮大ね。
おっきな滝の中に虹 うわあ いいなあ。
デラックスホテル うらやましい!

乏しいわたしのイメージは カナダと言えば『赤毛のアン』と『ツインピークス』で…すみませんw
でも 圧倒的に木々の美しいところ ってイメージです。

ところで
妻になる予定の人が 妻になる人になり やがて妻になった人になる。
これがまさしく 新婚旅行ね♪
>まるちゃん (凛太郎)
2009-08-30 21:48:20
47都道府県終わっちゃったんで番外編です。僕がデラックスホテルなんつーのはガラでもないんですけれども、いい経験でした。
ロッキーでサイクリング、というのは先人が幾たりかやっていて、アウトドア雑誌に載っていたりしたもんですから憧れましてね。これは楽しかったですよ。
カナダといえば本来は、やっぱり赤毛のアンかもしれませんね(ツインピークスはよく知らない^^;)。ただあそこは東部も先の方で、そりゃ行きたかったですがさすがに予定に組み込むことは出来ませんでした。プリンス・エドワード島とナイアガラ、っつー組み合わせはよくありましたよ。
北海道の風景が好きな人なら必ずカナダは気に入るはずだと思いますね。森の美しさは白眉だと思います。

妻になる予定の人って言い回しはややこしいのですが、他にうまく書けなかったもんで(汗)。

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