パラダイスネット724(再)

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第八話 横川の小屋

2016年12月15日 | STORYS
第八話 横川の小屋

瀬戸内の穏やかな海が、磯の香りのする涼しい風を運んでくる。
瀬戸内には数多くの島が点在し、絵画のような風景を見せてくれる。

昨日から俺は、愛媛県にいた。
今日のクライアントは横川にいる。
愛媛県の今治から高速船で瀬戸内海を渡り広島に向かう。
広島市内南部の宇品に高速船はついた。
ここから広島市内の横川にいるクライアントまでタクシーで向かうことにした。

タクシーに乗り込んだ。
「よこがわまで」
「え?」
「よこがわ!」
「あ?」
「よ・こ・が・わ!」
「あー、横川ね」
ったく、さっきから言ってんだろが!
かなり年を食った老人の運転手だ。
ドリフの志村の神様コントの神様みたいなやつだなぁ。

「ぶぅん」
「うん」
「ぶ、ぶうん、うん」
なんて運転だ。乗り物になんか酔ったことのない俺が酔いそうだぁ。
「ぶぅん」
「ぶ、うん」
「ききぃ」
あ~気持ち悪かった~。あんなやつにタクシー運転させるなぁ!
「だめだこりゃ」

今日のクライアントは町工場を経営する社長だった。
たいして興味がなかったので、何をつくる工場か知らない。
工場の3階の社長室に案内された。
1階はトラックが出入りしていた。脇の階段を上り2階に行く。
2階もそんなに広くなく、部屋の左側の真中に変な小部屋が壁についていた。
パートのおばさんが大勢いた。
ダンボール箱を作っては、中にプラスチックの物を詰め込んで封をしていた。
プラスチックのものが何かは知らない。

奥の階段から3階に上がる。
3階は倉庫と社長室だけのようだった。
「いやぁ~よくきてくれました。」
「さぁお掛け下さい。」
ほこりをたくさん吸い込んだソファーをすすめられた。
「ばふっ」
やっぱり、かなりのほこりが出た。

ビジネスの話をする前に厄介な問題がでてきた。
俺の下腹部にかけての体内の調子がすこしおかしい。
腸の活動が活発になってきて、括約筋に圧力がかかりだしている。
平たく言えばウンコがしたい。
さっきのタクシーのせいではないか?
まぁ、仕方がない。
ついた早々で悪いが、ここはウンコを先にさせてもらおう。

「社長、申し訳ない。トイレを貸してください。」
「おぉ。トイレは2階にあるんじゃ。」
2階?ひょっとして・・・。
やはりさっきみた、あの変な小部屋がトイレだった。
四方にベニアを貼っただけのグラグラの和式トイレだった。

まぁ、仕方がない。
掘っ立て小屋でもまわりのおばさんたちに見られているわけでもない。
早くウンコをしてしまおう。
「ぶばばばばばばばばばぁぁぁぁ」
「ぶっちゃ・・・ぶりぶりぶりぃぃぃぃぃぃ」
うわ!
気を抜いたため、ウンコが豪快な爆音の屁とともに飛び出した。

こいつはいけない。
ベニア板の外にはたくさんのおばさんたちが労働している。
特に無駄口をするでもなく、静かに仕事をしている。
今の爆音は2階中に響き渡ったはずである。
あ~かっこ悪い。
この後、俺はどのような格好でこのトイレから登場すればいいのだ。
うつむき加減に頬を赤らめるか・・・。
俺じゃないフリをして、「今の音は何?」というように出るか。
両手を広げ意気揚々と出て行くか・・・。

裏口を探したが、掘っ立て小屋には窓すらもなかった。
ここはとりあえず、普通に出てみた。
おばさんたちも、もしかすると聞こえていないかもしれない。
仕事に集中しているからまわりの音など気にならないかもしれない。
俺が変に気にすることはないんだ。
おばさんたちは特に俺を見るふうでもなかった。
俺の取り越し苦労じゃないか。

俺は社長室に入った。
些細なことを俺が考えすぎたな・・・。
おばさんたちは気にもしてない・・・。
「WWWWWWWWWWwwwwwwwwww!」
・・・わけないよなぁ。
2階のおばさんたちの笑い声が聞こえてきた。
やっぱりなぁ・・・。
それにしても2階の笑い声がよく聞こえるなぁ。
2階の声がけっこう3階にまで聞こえるもんだなぁ。
なぁ、あ・・・。
社長がこっちをみて微笑んでいた。
<Nick>
 
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(初投稿日)2005.4.11.(月)
 記事の内容は2005年当時のものです。