日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

年金照合問題にみる、社保庁の新人研修理解度

2008-04-11 | その他あれこれ
一昨日、国交省のタクシー通勤の無駄遣いについて、新人研修で教わる「仕事の常識」になぞらえて問題点を指摘しました。ちょうど4月の新社会人研修シーズンでもあるので、もうひとつ研修で教わる「常識」になぞらえた“反面教師”的「官」の間違い対応を紹介します。

国交省と並ぶ話題の“ダメ官庁”社会保険庁のお話です。テーマは自民党の選挙公約、福田内閣の公約でもあった「浮いた年金照合作業」の話です。政府はこの3月までを“照合完了期限”として宣言していたのですが、未照合を約4割残して期限到来。一時は野党から舛添大臣の問責決議案提出が浮上するほどの問題となりました。
そこで、新人研修的にこの一件を「指示・命令の受け方」と「報告の仕方」の基本に照らして検証してみます。

①はじめからできないと思われる仕事は引き受けない
いくら上司の命令だからと言って、できない恐れのある仕事を安請け合いすることは絶対にいけません。最終的には組織に迷惑がかかることになるのです。最初の段階で難しいと思ったならば、はじめに自信がないことを伝え上司の指示を仰ぐことが必要です。
<翻って年金問題>
はじめから、できない恐れがあったなら、「努力目標」と言うとか、「年度内の3月は無理かもしれませんが、極力早期に」とか言っておくべきでした。上司たる国民に対する誠意ある業務姿勢がまったく欠落していたと言えます。

②指示事項は期限までにできそうもないと思った段階で相談する
はじめに指示された期限までの指示業務完了が難しい状況になった場合、それが分かった段階で速やかにその旨上司に伝え、最低でも修正期限の申し出等をおこわなくてはいけません。絶対に期限が延ばせない業務である可能性もあり、分かった段階で伝えないと、一大事に至ってしまうケースもあるのです。
<翻って年金問題>
どうみても3月に入った段階で、全部の照合が3月中に完了することは無理なことが分かっていたはずです。なぜ、早期に国民に対してその事実を伝え、新たな期限を宣言しなかったのか。上司たる国民に対して報告義務を怠ったことになります。

③「指示・命令」は「報告」をもって完結する
上司からの「指示・命令」事項は、やれば終わりではありません。いつ、どのような形で終わったのか、「指示・命令」者に対して「報告」をすることではじめて、その業務は完結したことになります。
<翻って年金問題>
3月末の段階で、社保庁からは突き合せ作業が完了したこと=照合完了とした報告を上司たる国民にしました。しかしながら、約4割は名寄せ作業ができていない状態で照合作業が終わった訳ではありませんでした。「指示・命令」事項が完了していないのに、別の業務に摩り替えて完了報告をすることは虚偽報告になります。虚偽報告は「報告」しないよりも悪意のある絶対してはいけないことです。

と言うわけで社保庁は、政府=自民党経由の報告を見る限り、民間では新人研修で身につける「指示・命令の受け方」と「報告の仕方」すら全くできていないのです。年金問題がますます大きな社会問題化しているのは、当然と言えば当然な訳です。

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