日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ソニー株主総会にみる経営者、株主それぞれの体たらく

2014-06-22 | 経営
先週ソニーの株主総会を取材してまいりました。同社平井CEOは冒頭より、その流暢な語り口とは裏腹に大幅な業績赤字および黒字化を約束したテレビ事業の10年連続での未達に関しお詫びに終始しました。その姿勢とは裏腹に、なぜか本心での反省が見えてこない、真の危機感が感じられない、そんな印象を強くした株主は少なくなかっただろう、というのが私の感想です。

そんな印象を浮き上がらせたのが、総会終盤に相次いで株主から出された2つの質問でした。ひとつはストックオプション付与の議案に対する疑問を投げかけたもの、いまひとつは経営目標に対するコミットの要求でした。一見すると関連性が薄そうな二つの質問ですが、よく考えると表裏一体と言いますか、実に関連の深いソニー現経営者の経営姿勢実態に関する問題点を突いていたのです。

まず、ストックオプション付与の件ですが、これは広く知られた株価が低い状況下における経営陣のモチベーションアップ施策で、業績回復による株価上昇時にも現在の安い株価で株を購入できる権利すなわちキャピタルゲインの可能性を付与するものです。すなわち、経営トップを含めた幹部社員に対して業績回復に向けやる気を喚起するためのアメの付与に当たるわけです。

一方の経営に対するコミット要求ですが、これは業績目標の達成を約束せよという要求であり、すなわち業績目標未達の場合にはすみやかに退陣せよということでもあります。経営陣へのアメ玉であるところのストックオプイションに対する、ムチの存在であるとも言えるでしょう。

日本においてコミットメント経営を本格導入して話題を呼んだのは、日産ひん死の状況下でリバイバルプランをぶち上げた際ルノーから乗り込んだカルロス・ゴーンCEOその人です。ゴーン氏は中期目標未達の場合には経営陣は退陣するとの決意表明を内外に対しておこなうことで、組織内の緊張感と危機感を高めリストラスピードを加速させることで、目標を1年前倒しで達成すると言う成果としてコミットメント経営を結実させたのです(ゴーン氏の経営者としての資質云々ではなく、コミットメント経営の有効性という観点での実例です)。

平井CEOのこの2件の質問に対する回答は、ストックオプションは妥当かつ必要であると、業績目標に対するコミット要求に対しては言いわけおわびを繰り返し黙殺するというものでした。すなわち、アメ玉はいただきます、ムチはお断りです、というのが一人負けソニーの経営トップである平井CEOの経営姿勢なのです。ちなみにゴーン氏は元ソニーの社外取締役であり、その際に業績回復に向けたコミットメント経営の必要性を説いたと言われていますが、結局現在まで実現しないままズルズルと赤字経営を続けているわけです。

ソニーはいつからこんなにダメな経営陣になってしまったのでしょう。私はその元凶は同社の委員会設置会社方式の経営スタイルにあると思っています。出井元CEOが導入したこの制度。表向きは経営と執行の分離および社外取締役の大量登用により、会社運営の効率化と経営の透明性向上をはかるというものなのですが、実際には会社の技術や文化を十分には知り得ていない外様役員を徴用することで逆に社内の意見を吸い上げにくくしつつ、社内状況に疎い外様役員をトップが御す形で組織の私物化がすすむという悪弊を招いたのです。

出井長期政権、その傀儡のストリンガー、平井政権により、経営者のどこまでも自分に甘く緊張感や危機感とは無縁の経営スタイルは完全にソニー文化として確立されてしまったのです。私は、今回のこの2つの株主質問とそれに対する平井CEOの回答姿勢に、同社の如何ともしがたい悪しき経営姿勢を見る思いがしました。

余談ですが、今年のソニー株主総会では例年とは1点大きく違ったことがありました。それは株主向けお土産の廃止。例年ソニーの総会はお土産付きで、電池や充電池などのソニー製品と高級焼き菓子が配られていたのです。表向きは経営状況厳しい折の経費削減が名目でありました。もちろん、個人的に株主総会のお土産の必要性は全く感じませんが、経費削減をお題目に掲げて株主向けお土産の削減をするのなら、その前にソニー経営陣はやるべきことがあるのではないのかと。

何を持ってもまず正すべきは今だに億単位をはるかに超えるトップの報酬です。景気回復に沸く大企業決算にあっての一人負け状態は、トップの経営責任がしっかり問われるならタダ働きでも文句は言えない状況です。その状況下でなお、億単位の報酬を取る図々しさは危機感のかけらも感じないと思わせるに十分すぎる事実なのです。せめて廃止に向けた第一ステップとして、「本年の株主様へのお土産費用は、役員報酬をその分削減して賄わせていただきました」ぐらいの気の利いた姿勢が見られてしかるべきだったのではないかと思うのです。

株主向けお土産に関してさらに申し上げるなら、今回のお土産廃止の総会招集通知による事前通告で出席株主数が例年に比べて半減したという点も記しておく必要があるでしょう。一言で言うなら、経営者も経営者なら株主も株主である、ということになるのでしょう。株主の緊張感や真剣味のなさが、ここ20年にも及ぶソニー経営陣の体たらくややり放題を生んでいるとも言えるのかもしれません。

ソニーには他の企業とはやや異質な「ファン株主」という人たちが多数存在しているのですが、この「ファン株主」こそがいつまでも甘い夢を見続けて経営を甘やかしている張本人でもあると私は思っています。これもまた、長年日本の星、中小企業の星的存在として定着してしていたイメージを、多額投資により上手にブランド化した出井戦略負の遺産のひとつであるとも言えるのですが…。

ソニーに残された時間は少ない、そんな危機感を経営サイドからも株主サイドからも微塵も感じさせない予想外の“無風総会”に、同社の本格的な経営危機はもう目の前にあるのではないかと改めて実感させられた次第です。
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