日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

理研、小保方泥仕合にみる独法組織管理のお粗末

2014-04-11 | 経営
小保方さんの会見を受けていろいろな方々がそれぞれの専門的な立場から、様々な意見を述べられています。私は科学者ではありませんので私の専門領域でしかお話ができませんが、今回もその観点から感じたことを書き留めておきます。

この一件、前回も書きましたが個人的にはとにかく違和感アリアリで、今回の小保方さんの会見についてもまず何より、「なぜ、この人はこういう形で会見をしているのだろうか」という点からして違和感を感じざるを得ないのです。私の専門領域とはすなわち、組織論的なモノの見方です。そこで思うのはまず大前提として、理研は独立行政法人の研究機関であろうとも会社組織であるということ。小保方さんは、その理研という会社組織の社員である、という点を認識しなおす必要がありそうです。

独立行政法人は、組織マネジメントの手法を企業化することで、行政が担っていた分野を民間的に効率重視の運営に変えていくという趣旨でおこなわれた橋本行革の目玉のひとつでありました。理研はこの時代に政府とイコールだった特殊法人から、組織としての目標を掲げ成果を求められる団体に移行したわけです。言ってみれば、必ずしもおカネ儲けが目的ではなくとも「営利団体」になり、公的な色合いは残しつつも企業体としての組織運営に移行されたわけなのです。すなわち、政府の関わり方に関係なく組織マネジメントの観点からは、一般民間企業と変わることのない団体になり、その団体に属する者は組織管理上は一般企業における社員と同等の権利と義務を有する個人であると言うことができるのです。

以上を前提に考えた場合、一般企業で一社員が企業の広報管轄下とは別にマスメディア向けの会見を開くということの違和感は禁じえないと思います。組織管理の常識で考えるなら、組織の考え方に反する主義主張を公におこなうことは利益相反行為であり、在職の立場でこれをおこなうことはどう考えても常識にかなわないと思われるからです。もちろん、懲戒解雇にでもなり「不当解雇」を訴えるタイミングでの会見なら納得ですし、在職のままでも今回の件を「理研による名誉毀損行為であるとして訴えることにしました」という趣旨で会見をおこなったのならそれも納得なのですが、今回はそのどちらでもありません。

小保方さんサイドにも会見開催の理由はあろうと思います。会見席上でも「自分の言い分を十分に聞いてもらえていない」と言った内容の発言もありました。ただそれならそれで、外に対して言う前に、まずは組織内で自分の言い分を聞いてもらうべき機会をつくる働きかけをもっともっとするべきなのではないでしょうか。もちろん、十分な事情聴取機会を設けずに組織としての対小保方さん見解を公表した理研側に最大の責任はあるわけですが。つまり今の状況は、どっちもどっちの管理不在、被管理意識不在の泥仕合であると思えるのです。

ここ1ヶ月の理研および小保方さんの会見は、理研の組織内コミュニケーションが最悪であり組織運営上大きな問題を抱えていること、その組織の構成員もまた組織内コミュニケーションのとり方の常識を理解していない組織人としての最低限のルールすら教育されていないということ、を世間に知らしめただけに過ぎません。一連の騒ぎは、ガタガタの組織運営に端を発した痴話喧嘩を世間に公にすることになったという理研の大失態以外の何モノでもないと、私の知見からは結論づけるところであります。

では今社員小保方さんを含めた理研はどうするべきのか。
①理研はSTAP細胞の存在有無について引き続き調査をすすめ、有益な情報が出てきた都度公表する。
②小保方さんの行為に関する問題については、双方のこれまでの発表見解を一旦取り下げ、組織内において本人からのヒアリングも含めて十分な検証をおこなう。
③②を踏まえた今後の本件に関する対外公表については理研広報に一本化し、小保方さんが理研組織内にいる限りにおいて、公表に際しては小保方さん本人の意向も踏まえて同席会見を検討する。
の3点を現段階で明示し公表し、組織としての検証姿勢の徹底と情報管理の立て直しを早急にはかるべきであると考えます。

今の状況は私からすると、プロレスに例えるならルール無視の場外乱闘を延々見せられてるのに過ぎないと思うのです。理研という組織がここまでお粗末な組織管理状況にあるということは、他の独立行政法人も推してしるべしであり、独立行政法の組織管理実態について、この機会に一斉検証をはかられた方がよろしいのではないかとすら思う次第です。

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