日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「再発防止」ができないワケ

2012-11-06 | 経営
何かトラブルが発生した際に組織運営上重要なことは、「原因の究明」を怠らずにおこない「再発防止」策を明確化することです。しかし、世の中を見渡してみると、同じようなトラブルが再発してしまうケースは間々見られます。ここ数日間はとくにひどい。今新聞・テレビをにぎわしている複数のトラブル再発事件はなぜ起きたのかを考えつつ、組織経営におけるヒントにしたいと思います。

1番目の事件は、中国万里の長城のトラッキングツアーで日本人観光客3人が亡くなった事件。ツアーを企画したアミューズ・トラベルは、09年にも自社企画のツアーで大雪山系トムラウシのツアーで8人もの死亡者を出していました。もちろん、営業停止、再発防止策の策定が監督官庁指導の下に行われたはずですが、今回それは全く活かされていなかったと言っていいでしょう。新企画ツアーでありながら下見が一切行われていない、ツアー運営が山岳ガイドではない一般のガイド任せであったことなどから、その点は明らかです。

アミューズ社のケースで再発防止ができなかった理由は、恐らく再発防止への取り組みが形式上の対応に終始していたことに尽きると思われます。これは、あらゆる組織で起こりうるケースであり、言い換えれば重大な事件・事故対応に関する「危機感の欠如」以外の何物でありません。一般企業で言うなら、クレーム発生に対して表面の体裁を整えることに終始してその場を切り抜け、同じようなクレームがいつまでたっても発生がやまずに組織そのものの信用力が低下するというケースに相当します。

2番目の事件は、拙ブログでの取り上げたアパホテルで起きたシンドラー社製エレベータによる死亡事故。これも過去に全く同様の事故が起きていながら、再度の悲劇が起きてしまったと言う再発防止が出来なかった事例です。これは再発防止に向けた法整備の甘さにこそ最大の原因があったと考えられます。すなわち、事故を受けた新たな安全規制は、前回の事故後に製造されたエレベータのみに適応され、古いエレベータにまでは及んでいないという点です。

組織運営のケースに置き換えるなら、組織内部のコスト負担面、労務負担面等への考慮を優先することで、事故を受けて策定される再発防止のルールが甘くなり結果として“ざるルール”になってしまったという点です。もちろん、前回事故の当事者であるシンドラー社に自社の前回事故発生に対する十分な責任意識があったなら、再発防止法規制の内容がいかなるものであろうとも、自主的に全ての自社エレベータに新たな安全規制に沿った対応策を講じていたはずであり、ここに「危機感の欠如」もまた見て取ることができもします。

最後にもうひとつ、田中真紀子大臣の大学不認可事件。これも再発防止策ができていなかった事件の類であると思われます。田中大臣は小泉内閣で外務大臣に就任しながら、外務省との衝突を繰り返し、遂には事務次官の更迭を勝手に決める等“暴走”の極みとも言える行動に終始し、遂には首相から自身の更迭を言い渡されるに至ったのでした。今回の一件も、事務方である官僚とその諮問機関が決めた大学認可ルールに「ノー」を突き付け、大学関係者や学生など多くの人々の困惑と迷惑を全く省みない統治権の乱用的“暴走”を繰り返しています。

これはひとえに首相の任命責任に帰するものであろうと思われます。田中大臣は、前回の外務大臣更迭の際の記者会見で涙を見せ「遺憾である」との言葉は聞かれたものの、謝罪や反省の弁は遂に聞かれずじまいであったのです。すなわち、事件・事故に対する反省のない者を再起用による再発は大いに予想されるところであったハズなのです。このような“暴走”大臣を任命した裏には、中国との関係改善に田中大臣から何らかの力を借りようとしたと言われる“不純な動機”による再起用という、未必の故意的対応があると言えるでしょう。

このように、過去に起きた事件・事故を繰り返す「再発防止」策の無効例は、本当に多く存在します。今回の3例、「危機感の欠如による形式的対応」「甘い再発防止ルールの策定」「未必の故意的対応」は、組織運営におけるあらゆる再発防止に関しても他山の石として心に刻むべき教訓であると思います。

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