日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「特別警報」発令!その時銀行は?

2013-09-18 | ニュース雑感
台風18号による被害の関連で先月30日の運用開始以降今回初めて出された「特別警報」に関して、さまざまな問題が取り上げられています。私は、過去の仕事のからみから思い当たるこの問題に関する懸念材料を提起しておきたいと思います。

「特別警報」は、「「警報」の発表基準をはるかに超える数十年に一度の大災害が起こると予想される場合に発表し、対象地域の住民の方々に対して最大限の警戒を呼びかけるもの」と規定され、気象庁が発表しそれを受けて都道府県から市町村への通知および市町村から住民・官公署に対する周知が義務づけられました。

主な周知ルートは以下の通りです。
1 気象庁 → 住民(報道機関の協力の下行う)
2 気象庁 → NHK
3 気象庁 → 都道府県、消防庁、NTT東日本・西日本(地震動以外)
4 気象庁 → 海上保安庁(地震動・噴火以外)
5 気象庁 → 警察庁(噴火・大津波のみ)
6 都道府県 → 関係市町村長
7 警察庁、消防庁、NTT東日本・西日本 → 関係市町村長
8 海上保安庁 → 航海中および入港中の船舶
9 NHK → 公衆
10 市町村長 → 住民・官公署

さて私が気になるのは、銀行の問題です。この周知ルートに銀行あるいは監督官庁である金融庁の記載がない点はいささか気になるのです。

銀行は免許業務であるが故に監督官庁の認可なくしては営めない事業であり、届け出た営業日、営業時間は、その銀行の一存で事前承認なく変更することは認められません。例えば、銀行のある支店が改造工事などのために、やむを得ない事情が生じて営業時間を変更しなくてはならない場合でも、必ず事前に当局(金融庁)許可をとる必要があり、その許可は事前に利用者への周知徹底がなされ一切の混乱が発生する懸念がないことが前提条件になります(このような手続きを必要とする大義名分は「金融秩序の維持」であります)。

一方、5月に法制化され8月30日に運用スタートした「特別警報」ですが、この発令に伴い銀行が営業時間を急遽変更したり休業したりする可能性があると言う旨の通知は、私が取引する銀行からは今のところどこからも案内がありません。各銀行のホームページも見る限り本件に言及しているものは、見当たらないように思います。

なんでこんなことを申し上げるのかと言えば、とにかく銀行と言うところは融通のきかないお役所文化が服を着たみたいところでして、このままだと、例え「特別警報」が出されたとしても、津波のようなすぐに逃げないと明らかな危機が迫ってくるというような場合以外は、営業時間中に当局の許可なしで店のシャッターを下ろして営業を終了させるなどということがとてもできるとは思えないからです。

支店「大雨特別警報が出されたのですが…。店を閉めて避難してもよろしいでしょうか?」
本部「当局の許可なく営業時間中に店を閉めることはできませんから、今金融庁に確認しますのでそのまま支店で待機していてください」
支店「かしこまりました」

「特別警報」発令時のこんな会話が容易に想像できるところです。このようなやり取りがもし銀行の現場でおこなわれてしまうなら、せっかくの警報の発令により「命を守る行動」を求められていながら、役所的な対応に安全確保のチャンスを奪われてしまうかもしれません。そんなことあり得ないだろうと、思われるかもしれませんが、「特別警報」が超法規的行動まで容認されるものであるとでも事前アナウンスされていないなら、上記のようなやりとりは十分に考えうるのです。

たまたま台風18号の「特別警報」は銀行休業日であったから事なきを得ていますが、逆に言えば初めての「特別警報」発令が銀行休業日に出されたものであったからこそ、「特別警報」に対する銀行の現場対応という問題が、次に向けた改善策や教訓にならずに埋もれてしまうリスクを感じるわけです。金融当局ならびに、銀行関係者は早急にこの問題への具体的な対処を検討し利用者も含めたステークホルダー向けアナウンスをすることで、「特別警報」に対する銀行対応についての共通認識を早急に作り上げる必要を感じています。