日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

福島第一汚染水漏れが消費税上げに与える影響~再度言う、東電の破綻処理を急げ!

2013-08-21 | ニュース雑感
東京電力福島第一原子力発電所の貯蔵タンクから汚染水約が漏れていたとの報道。またか。もうどうしょうもない。収束に向かうどころか、エンドレスな問題発生スパイラルに陥った感の強い原発事故処理。この状況下で政府が目論んでいた「参院選自民圧勝→柏崎刈羽原発なし崩し的再稼働」のシナリオは崩れ、柏崎刈羽の再稼働メドは立たなくなったと言っていいでしょう。

柏崎刈羽原発の再稼働のメドが立たないなら、東電の再建計画そのものに赤信号が灯るわけですが、東電はお盆期間中の今月13日に、金融機関に対して柏崎刈羽再稼働を見込まずに今期の黒字を確保する見通しを示したとか。いかなるマジックかと思いきや、来年1月以降現状からさらに8.5~10%の料金値上げを見込んでのものだそうで、呆れてモノが言えません。また利用者負担ですか。冗談じゃない、株主責任も貸し手責任も問われないまま、さらなる利用者への責任おっかぶせってなんて絶対に許してはなりません。図々しいにもほどがあるってものです。

株主である政府はもういい加減、東電に引導を渡したらどうなんでしょう。ここで、東電を破綻処理したら金融機関の不良債権問題が一気に噴出して消費税上げが出来なくなる、だから今はダメだとそんな思惑が見え隠れしますが、ここでまた問題を先延ばしして、消費税上げ後に東電の破綻処理をおこなうならそれこそ国民経済は再びどん底に陥れられる危険だってあるのです。97年金融危機下での消費税2%上げが招いた長期デフレ不況は、今度は5%上げだけに前回以上の大きな形で再来する可能性だってあるのですから。

福島第一の原発事故処理の見通しが立たない、すなわち東電原発再稼働のメドが立たないということは、再建計画そのものの破綻を意味するのであり、この計画を認めた政府はその責任において被災者保護を最優先とした東電の破綻処理を早急に進めるべきではなのです。そして破綻処理が国内経済に与えるマイナスの影響をしっかりと見極めながら、消費税上げのタイミングを再検討する、その間に議員定数の見直しや徹底的な公務員改革を先行させて財政支出の圧縮を徹底する、私はそれこそが本来あるべき政策の道筋なのではないかと思うのです。

今回の汚染水漏れに端を発する目の前の状況に目をつぶって消費税上げだけを優先するなら、東電の利用者は原発再稼働に替わるいわれのない値上げでまた苦しめられた上に、消費税もアップしてダブルパンチ。さらに、消費税上げ後に「やっぱりダメでした」で東電の破綻処理がスタートするなら、さらにデフレ不況が追い打ちをかけるというまさしく負のスパイラル。国民経済の観点からみても、消費税は上げたものの税収は増えずと言う最悪の結果が待っているのではないかと思います。

もう東電をこれ以上延命させることは、大株主の大手企業や大口債権者である大手銀行以外にとっては何のプラスもありません。消費税上げを前に、一刻も早い破綻処理をと今一度声を大にして叫んでおきましょう。誤った東電の扱いのおかげで、苦しめられるのが株主でも貸し手でもない我々一般国民であっていいはずがないのですから。