日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

日本企業のあるべき国際化とは~ソニー、シャープ、パナソニック、ラスベガス発のニュース雑感

2013-01-09 | 経営
米国家電見本市CESがラスベガスで開幕し話題を集めています。
注目は不振にあえぐ日本企業がいかなる“次の一手”を提示するか。日本企業の国際戦略のあり方をも、原点に立ち帰って考え直す必要すら感じさせられる昨今。各社発表の戦術に、そんな観点からはいろいろ思うところありです。

この問題に関しては、まだ個人的な考えがまとまりきれていないので、以下ややメモ書き的に書き連ねてみますのでご了承ください。

日本企業の国際戦略ってどうあるべきなんでしょう。
家電業界は少なくとも、ここ数年は負け続けです。そもそも島国のお坊ちゃん育ちの日本企業には、海外での戦いはハードルが高いのではないかと思ったりします。

日本企業が積極的に海外に出て成功を収めてきた時代は、国内で認められ支持された技術や製品やサービスを、その実績と言う裏付けを持ってまず海外進出を進め、徐々に徐々に戦略の国際化に手を染めていったように思います。

しかし国際化は、一度手を広げてその規模が大きくなってしまうとなかなかダウンサイジングは難しく、知らぬ間に国際部門の規模のほうが大きくなったりして、海外は海外の独自戦略で戦うことになってお坊ちゃんは勝負に負けてしまったりするわけです。

サムスンあたりは、巷で言われているように、税の優遇やらウォン安戦略やら国家ぐるみのバックアップがあって戦いを有利に進めているわけで、少なくとも利用者が求める製品水準を確保した商品の価格競争では勝てないことはハッキリしました。

ならば日本はどうするのか。基本は原点回帰ではないのかと。まずは国内で支持されるものや、支持されるビジネスモデルを今一度原点に立ち帰って作り上げた上で、それを持って海外に戦いを挑むべきなのではないのかと。

国際化戦略のモデルの違いは、実例を挙げるならユニクロとソフトバンクの例が分かりやすいでしょう。
ユニクロは、基本的には国内で成功したビジネスモデルを持って国際化をするやり方をとっています。経営者や企業戦略に対する好き嫌いは別にして、こういった成功モデルの輸出的やり方には好感が持てますし(ビジネスモデルの中身は、デフレの元凶ではないのかという問題はありますが)、過去の日本企業の歴史を見るにひとまずは海外での成功路線に乗っているように思います。

一方のソフトバンク。アメリカの通信キャリア大手を買収し、国際化に本格参入をしようともくろんでいます。しかし国内でソフトバンクが成功した要因は、iPhoneあってのこと。しかも当初はiPhoneを扱える唯一の国内通信キャリアであったという強みを最大限に活かしてのもの。これが、国内成功モデルを持ちこめずに文化もルールも違う米国に打って出てお人よしの日本企業がうまくいくのだろうかと考えると、私のような素人の目からは非常に難しいのではないかと思えるわけです。

国内家電大手の再生に必要なことはまず、ソフトバンクではなくユニクロ的国際戦略が必要なのではないのかと思うのです。国内で利用者の分厚い支持を集める技術、製品、サービスを今一度生み出す努力をし、その分厚い支持をもって海外に出ることの重要性が問われているのではないのかと。

今日本企業はアップルが何をしようが、グーグルが何をしようが、とりあえずは日本人の嗜好研究、ニーズ研究に立ち返るべきなのではないのかと。日本人消費者のニーズって国際的に見てもかなりレベルは高いと思うのですが…。

利用者にとってすごいとは思うけどなくてもいい技術や製品ではなく、すごいかすごくないかではなく今後もずっと欲しいと消費者に思ってもらえる技術や製品を生み出すことが必要なのでしょう。高度成長の時代ならともかく今はそんな話ありえない、と思われる向きもあるかもしれませんが、それを可能にしたのがアップルでありグーグルだったのではないのでしょうか。

昨日来のラスベガスからの報道では…
ソニーは、スマホで撮った画像がワンタッチで大画面テレビに映し出される新製品を発表したとか。
シャープは、他社も取り組んではいますが高精細4Kテレビを目玉に据えたとか。
本日の報道によれば、パナソニックはGMやIBMと提携してIT関連の事業を強化する方針を明らかにしたそうです。

ソニーやシャープの製品は、確かに革新的な技術であるのだとは思いますが、一般消費者から見たときになくてもいい技術や製品ではありませんか。果たして国内の消費者の心を捉え、分厚い支持を得られるものでしょうか。

パナソニックに至っては、国内経済の再生が新政権の重要テーマである今、なぜトヨタ、日産、ホンダではないのか、なぜ富士通、NECではないのか。もちろん個別に諸々大人の事情はあるのでしょうが、何か歯車が狂ったままの国際化路線に空虚な活路を見出そうとしているように思えてなりません。

まとまりのないまま書きっぱなしてしまいましたが、この問題は今後の日本企業のあり方、日本経済の真の再生を考える上で、大変重要な問題であると思っています。個人的にも、引き続き様々な角度から思考を重ね、考えをまとめていきたいと思っています。