日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

東電4月値上げ断念の今こそ、破たん処理の決断時

2012-03-22 | ニュース雑感
最初のセンテンスは、私が今朝書きかけたエントリーです。

東電の法人向け電気料金値上げの話は4月1日実施と言うことで、あと10日。このままなし崩し的に「値上げ成立」などというゴリ押し値上げは絶対に許してはならないわけで、それを阻止できるか否かは、この先1週間当事者の声を中心とした世論がいかに東電の誤った行動を騒ぎ立てるか如何にかかっていると思います。

ここまで書きかけたところ、東電は4月以降に契約更改を迎える顧客への説明が不足していたとして、同顧客の契約期間が切れるまで現行料金を継続する方針を表明したとの報が入ってまいりました。枝野経産相も東電の説明不足について「報告を聞いて開いた口がふさがらない。経営体質は全く変わっていない」と厳しく批判し、4月からの一斉値上げは回避される見通しとなったようです。

この値上げ回避、実は「ゴリ押し値上げを阻止できてよかった」という以上に大きな意味合いを持っています。それは、今回のゴリ押し値上げ断念は東電の再建計画策定に大きな影響を確実に与えるという観点です。東電は4月から企業向け料金を一斉に引き上げることで収益改善計画を描き、公的資金注入の前提となる再建計画の策定を目論んでいたわけですが、この目論みは大きく狂うことになったのです。

平たく言えば、世論の“反東電コール”に押された今回の4月一斉値上げ断念は、東電再建計画の青写真を根本的に狂わせたことになり、東電“延命”は正念場を迎えたと言えるでしょう。すなわち、若干の飛躍的表現を承知でさらに言い方を変えるなら、世論は「値上げ反対」を通して東電の国民経済を巻き添えにした同社の“延命”に「ノー」を突きつけている訳であり、国民経済の犠牲の上に立った政府の再建方針に国民が「ノー」の意思表示をしたとも言えるのです。

となると今、枝野大臣の出すべきコメントは間違っています。「開いた口がふさがらない」などというのはとうの昔に国民が皆口にしていることであり、今は一刻も早く「国民の声に従い、東電を破たん処理する」と断言すべきではないのかと思うのです。当ブログではこれまでも国の主導により株主責任、貸し手責任を明確化させた破たん処理スキームへの移行の必要性を申し上げてきましたが、今こそ政府は決断すべき時でしょう。

恐らくこの先、個別契約更新時の値上げ交渉や個人向け料金値上げ申請等の動きが出されるたびに、今回同様国民の「ノー」は繰り返し出されるハズであり、東電の延命措置は最終的に国民の総意として却下される運命にあると思われるからです。時間と税金の無駄遣いはやめてもらいたい。メディアも、今回の4月1日値上げ回避を大きな契機として、東電破たん処理に向けた世論の高まりをしっかりとフォローしてほしいと思います。