日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

iPhone取扱GETも、auに迫る背水の状況

2011-09-22 | ビジネス
今週号の日経ビジネスで、KDDI(au)が11月発売予定のアップル社の超人気スマートフォンiPhone5の販売取扱権を獲得したと報じられ、携帯電話業界に激震が走りました。当のKDDIのはアップルからの公表前であり、あくまで「ノーコメント」を通しているようですが、報道されている関係者の話を総合するとまず間違いのない事実であるようです。表向きの影響度合いという点で言えば、これまで国内でiPhoneの販売を独占しこれに頼って携帯電話市場のシェアを伸ばし続けてきた「ソフトバンクの行く末に暗雲」といった印象が強いのですが、果たしてそうなのでしょうか。

この問題を考えるときにひとつのポイントになってくるものとして、携帯電話の周波数割り当ての問題があります。ドコモとソフトバンクが完全に第三世代向け(3G)専用の周波数を使用しているのに対して、auは現時点では第二世代向けと併用の周波数を利用しているという事情です。どういうことが起きるのかと言えば、普通に携帯電話だけを使っているときには問題にならなかったのですが、スマートフォンの登場によって送信データ容量が爆発的に増えauのスマートフォンには他の二社に比べて明らかにサービス提供上で劣後する問題が生じてしまったのです。他にも一部auのスマートフォンではキャリアメール(ezweb)の取り扱いができないという、スマホにあるべからざるこの上なく不便な状況でスタート切らざるを得なかったという事実もあります。

アンドロイド携帯におけるこの問題に関しては、今月20日にようやく対応ソフトをダウンロードする形で一応の解決を見てはいますが、11月発売のiPhoneに関して間に合う対応ができるか否かは現時点では不明です。アンドロイド版ソフトの開発に半年以上の開発期間がかかった対応ですから、難しいという見方もあってしかるべきと考えます。auの第三世代向け周波数への完全移行は来年の7月の予定ですから、使い勝手をはじめあらゆるサービス提供面において、どれだけ早くソフトバンクに対して見劣りのしないサービスメニューが提供できるか否かはかなり重要性の高い問題であると思われます。

一般的に2つの店舗が同じ商品を扱う場合、価格や付随サービスで対等なスタートラインに立って競うためには同じ品質であることが大前提となります。例えばもし仮にau版iPhoneがアンドロイド携帯の時と同じくスタート時にキャリアメールを扱えないという問題が発生するなら、その時点で大きなハンデを背負い、場合によってはソフトバンクに比べて大幅な値引き等のサービスをしなければ競争にならない状況に追い込まれるかもしれません。そうなれば、アップル社からかなりキツい販売ノルマを背負わされて販売権を獲得したであろう背景を考えれば、競争上かなりな無理を強いられるのは必至で財務面への致命傷的なダメージをも受けかねない問題にまで発展するリスクをも負っているように思えます。

それともう一点、「アンドロイドau」を標榜して来たこれまでの同社のスマホ戦略と、三顧の礼をもって獲得した「アップル=iPhone」戦略をいかにバランスさせていくのか、です。“品揃えのau”という戦略は無効であるとは思いませんが、そんな緩い考え方のどっちつかずのやり方で許されるほどアップルは甘くはないでしょうし、まずはソフトバンクとの一騎打ちが派手に展開されることは間違いのないところなのではないでしょうか。もちろん電波の安定性で劣るソフトバンクにも弱点はあるわけで、必ずしも勝負の行方が決まっているわけではありませんが、現状契約回線数ジリ貧状態が続くauにとってはまさしく“背水の陣”であることだけは間違いのないところです。iPhone5発売のこの機を逃せば常識的に次は1年先であり、ここが正念場と見てのiPhone販売権獲得交渉だったのでしょう。auにとってアップル=iPhoneが果たして“カンフル剤”となるか、はたまた“毒まんじゅう”となるのか、大いに興味をそそられる「携帯冬の陣」です。


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