日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

公務員住宅は本当に必要か?

2011-09-20 | その他あれこれ
以前拙ブログでも取り上げた「朝霞米軍基地跡公務員住宅建設」の件(「増税の前にすべきこと」http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/f4578a560445f1a1269f75b5ae468c4a)が、国会の代表質問でみんなの党渡辺代表に取り上げられ、その際の野田首相とのやりとりが週末のメディアでも紹介されていました。「一度事業仕分けで“事業凍結”とされたものが、なぜ復活したのか」との質問に、「真に必要なものであると判断した」との回答をされたようです。何を基準にそう言っているのでしょうか。私には分かりません。

前回のブログでも書きましたが、支出削減に向けては個別論で話をしても何の解決にもならないと思います。事業仕分けチームは個別論でパフォーマンスを止めて、各問題分野ごとの基本方針を議論し政府として閣議決定すべきです。例えばこの「公務員住宅の必要性」についてなら、「真に必要なケース」とはどのようなものなのかという政府としての「基準」決めをおこない、併せて仕様や賃料の「基準」をも定める必要があると思います。こういった「基準」が決まるなら、それに従って既存の公務員住宅の存廃および売却、賃料見直しを決めればいいですし、建設計画についてもこの「基準」に従ってやるかやらないかを決めればいいのです。

そもそも公務員住宅って必要なのでしょうか。有無を言わさぬ全廃が正しいとは言いません。周囲に適当な民間住宅がない施設に通勤する公務員向けの住宅等は、確かにその必要はあるでしょう。しかしながら、今回の朝霞をはじめとして民間住宅がいくらでもあるような地域に、多額の国家予算を投じた公務員住宅が本当に必要なのでしょうか。この点を国家公務員に尋ねると「我々は民間よりも給与が安い。福利厚生としてそのぐらいの手当があってもいい」という話が、判を押したように聞こえてくるのですが、本当にそうなんでしょうか。彼らが比較をしている「民間」とは、大抵の場合大手企業でありますが、日本の就業人口のほとんどを占めているのは中小企業です。中小企業を基準に考えるなら、公務員給与は決して低くありません。しかも以前ならともかく、現在大半の中小企業に社宅など存在せず、長期景気低迷と終身雇用が常識の時代が終わった今では借り上げ方式を含めた社宅制度廃止は世間一般大きな流れでもあるのです。

何より国家公務員の皆さんが、大企業を比較基準としてご自身の処遇を考える事自体が間違っています。これはおそらく「国家公務員になっていなかったら、私は確実に大企業に入っていた」という偏差値教育の弊害ではないかと私は思います。国家公務員と言う職業を選んだ段階で、その職業選択は国民の生活を守りその水準を高めることを志したものであるはずです。すなわち、国民の平均的な生活環境を実感しつついかにそれをいいものに高めていくのか、それこそが彼ら国家公務員の使命であるはずなのです。彼らが一部の大企業と同様の処遇の下(あるいは今の公務員住宅は、立地・家賃から考えれば大企業以上?)に国民生活を見渡したところで、本当に平均的な国民生活の実感した上での使命遂行などできないのではないでしょうか。この点が理解できないのなら、初めから国家公務員など志すべきではないのです。

公務員住宅の問題ひとつを取り上げても、このように問題は意識改革をも含めた日本の国家公務員制度の根深い部分に入っていかざるを得ないのです。これを各論レベルの議論で済ませていたのでは、本当の公務員改革も復興に向けた財政問題の議論も正しい結論を導くことは到底できないのでないかと思います。「公務員住宅問題」は、誰にでも分かりやすく公務員改革や財政問題への理解や関心をもってもらえる格好の題材であります。「朝霞」の一件を機として、個別議論に終始しない根本的な問題を議論する風潮づくりにメディアも動いて欲しいと思います。根本議論のない増税と言う“モグラ叩き”では、真の復興に基づく明日の日本は見えてこないのです。

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