日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

銀座松坂屋再開発~「“丘”の上の愛」の行方

2011-06-08 | ニュース雑感
銀座松坂屋が取り壊され、周辺ブロックと共に再開発され銀座一の巨大商業施設が誕生する計画が本決まりになりそうである、という話を耳にしました。

銀座松坂屋と言えば、私が子供の頃昭和40年代は銀座で一番栄えたデパートでありました。当時は父が銀座で商売をしていた関係で、よく連れられて銀座に行ったもので、不二家のホットケーキと並んで、松坂屋の食堂のお子様ランチが子供時代の私の楽しみであったと記憶しています。当時松坂屋はものすごく繁盛していて、いつもいつも沢山の人でにぎわっていました。当時は地味な存在だった3丁目の松屋デパートはもとより、4丁目交差点の三越デパートよりも沢山の人でにぎわっていたのです。今ではとても信じられないでしょうが、売り場が広くて明るい印象の松坂屋は銀座一のデパート、まさしく“銀座の顔”だったのです。

中学高校時代は、学校帰りに「銀座NOW」の公開生放送を見に行ったり、YAHAMAホールに映画の試写会を見に行ったり、はたまたSONYビルや東芝銀座7で憧れの高級オーディオで音楽を聞いたり、銀座とは定期的なお付き合いをしてきましたが、その前を通るたびにだんだんだんだん古ぼけていく“お子様ランチ”の思い出が詰まった松坂屋を少しばかり寂しい気持ちで見続けていました。時は流れ、昭和末期から大改装で巻き返した松屋、岡田事件で一度は地に落ちたブランド力をティファニー誘致などで回復した三越、に大きく水を開けられて久しく、長引く“一人負け”状態の印象ばかりが色濃い今日この頃。フォーエバー21やラオックスの誘致により、老舗デパートのプライドもかなぐり捨ててテナント貸し業に転換をしていく様は、古くからの銀座ファンから見るとなんとも寂しい限りであるのです。

そして今般の再開発。聞けば森ビルとの共同事業であるとか。実に心配です。森ビルと言えば、ヒルズ開発。六本木ヒルズに表参道ヒルズ。成金趣味のバブリーな開発コンセプトは銀座にマッチするとは思えません。「再開発ビルに松坂屋の出店は未定」というのですから、大正13年から続く“銀座の魂”が売り渡されてしまうのではないかとも・・・。「ヒルズ=丘」で思い出す浜田省吾の名曲「丘の上の愛」。「♪丘の上に住む誰かの氷のような腕に抱かれて未来を、手に入れた愛と引き換えに・・・」。「ヒルズ=丘(の上の住人)」は、カネで人の心までも買いあさる金持ちの象徴なのです。森ビルという“丘の上の金持ち”に魂を売り渡した松坂屋、という絵に見えてしまうのは私だけでしょうか。

松坂屋は名古屋に本店を持つ三河商人の出ですが、銀座松坂屋は古き良き銀座の心を今に伝える東京を代表するデパートです。再開発による銀座の活性化に異論はありませんが、銀座ファンの気持ちを踏みにじるようなことだけはして欲しくない。少なくとも「銀座ヒルズ」などというべっ甲メガネに金歯を輝かせて笑うカネ持ちを連想させるようなヒルズシリーズだけはご勘弁いただきたい訳です(なんでも、当初計画は六本木ヒルズを思わせる超高層ビル計画だったのを、地元に猛反発されて白紙撤回したそうですから、ますます不安です)。森ビルさん、お願いだから松坂屋を“丘に上”に連れていくような真似だけはしないでいただきたい。子供時代からの一銀座ファンの切なる思いです。

★J-CAST~大関暁夫連載「営業は難しい~ココを直せばうまくいく!」またまた更新しました!
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