日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

私の名盤コレクション6 ~ Down On The Farm/Little Feat

2011-06-05 | 洋楽
★Down On The Farm/Little Feat 

1. Down On The Farm
2. Six Feet Of Snow
3. Perfect Imperfection
4. Kokomo
5. Be One Now
6. Straight From The Heart
7. Front Page News
8. Wake Up Dreaming
9. Feel The Groove

私は74年にジョン・セバスチャンの「Tazana Kid」でローウェル・ジョージを知り、75年友人とのレコード交換で手に入れた「ディキシー・チキン」で彼のバンドであるリトル・フィートのファンになり、78年に生フィートを見て感動にうち震えました。そして79年は、フィート・ファンにとって決して忘れることのない悲しい年となりました。その年の春、リトル・フィートが解散宣言をしたとラジオで耳にし、ほぼ同時にローウェル・ジョージがソロ・アルバムを発表。フィートのラスト・アルバムが出るかもとの話を聞いた矢先の6月29日、彼の訃報が飛び込んできました。それがリアルタイムだったのか記憶は定かでありませんが、ショッキングであったことはこの上なし。前年78年9月にはザ・フーのキース・ムーンが逝ったばかり。共に遠因はドラッグ過多。当時はまだそんなミュージシャンの生き様が当たり前の時代でしたから、彼らの死は我々ロック・フリークにとってある種“英雄の戦死”的な捉え方をしていたようにも思います。

フィートのラスト・アルバムとして本作がリリースされたのはその死の4カ月後、79年10月でした。一般的に評価の高い前々作「ラスト・レコード・アルバム」や前作「タイム・ラブズ・ア・ヒーロー」における、ローウェルの存在感の低下とフュージョン路線への移行は、ローウェル・ファンの私には決して喜ばしいことではなく、なんとも食い足りなさを感じていたのです。そして、大きな期待感はなかったものの、追悼盤と帯に記された本作に針を落とした時にはあのローウェルのフィートが帰ってきたと妙な安心感を覚えたものです。このアルバムにおいて前2作で色濃くなってきたフュージョン性は薄く、恐らく残されたメンバーたちが残されたセッション音源を仕上げるに際して、誰の異論をはさむ余地もなく無言のうちにローウェル色に染められた作品づくりに至ったのだろうと思うのです。

タイトルの「Down On The Farm」って「農場に帰ろうぜ!」って話で、まさしく前2作がビル・ペインやポール・バレル主導でやや都会的になってきことからローウェル路線への回帰を謳っているようにも思えるのです。タイトル曲は、まるでローウェルとバンドの結末を予知して書かれたかのようでもあり、かえって皮肉な印象が漂います。そもそもリトル・フィートはザ・バンドの後継バンド的に捉えられる部分も多く、南部の泥臭いスワンプ臭漂う独自のグルーブこそが彼らの真骨頂であったはず。後期のフュージョン方向への音楽的発展は音楽界への影響も含めて専門家的には高い評価が得られるのでしょうが、やはりフィートは泥臭くあって欲しいのです。再結成フィートが88年に「レット・イット・ロール」で登場した時歓喜したものの、このアルバムと聞き比べてその物足りなさに寂しさを覚えたのも事実。このアルバムの世間一般での評価がいかに低くとも、個人的には追悼の意も含め決して忘れ得ぬまさに「私の名盤」であるのです。何よりフィートらしい演奏は1.「Down On The Farm」、最もローウェルらしいのは4.「Kokomo」。ジャケット裏の「Produced By Lowell George・・・With A Little Help From His Friends」の表記が泣かせます。

余談として、ジャケットデザインがまた秀逸です。例によって今は亡きネオン・パークのイラストですが、ジャケット的にはこれが最高傑作ではないかなと。彼の独特のイラストもまた、フィートとローウェルのブランドづくりに一役買っていました。本作は数ある洋楽の名ジャケットの中でも、個人的には確実に5本指に入る“名盤”です。本作はオールスタッフが渾身の想いをこめて作り上げた、ローウェル追悼の記念碑なのです。