日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「70年代洋楽ロードの歩き方14」~グラム・ロック4

2010-06-13 | 洋楽
ボウイとロンソンのお話の続きです。

ボウイが単純にハデハデな衣装を身に着けていたからと言って、それを以てグラムロックであるとするのはちょっと違うと言うのがリアル体験をした個人的見解なのですが、それを裏付けるにはその前後のボウイの動向を知る必要があります。“ジギー前夜”のアルバム「ハンキー・ドリー」の中でボウイは、ポップ・アートの旗手であったアンディ・ウォーホルのことを歌い、そのリリース後の米国プロモーションでは念願であったアンディ・ウォーホルとの対面をニューヨークの“ファクトリー”で実現。またその流れでボウイのアイドルであるルー・リード(彼が所属したベルベット・アンダーグラウンドはウォーホルがプロデュースしたアート・バンド)とも劇的な対面を果たして、大いに刺激を受けてイギリスにもどっているのです。彼がジギーを名乗りハデハデの衣装でのステージが注目を集めたのはその直後からなのです。折からのギンギラTレックスの大ブレイクとちょうどタイミングが重なってしまったが故に、グラムの冠をかぶせられたボウイでしたが、実はボウイはウォーホルのポップ・アートの具現化をめざしたのであり、ハデハデの衣装を身につけてグラムを強く意識したのはむしろ、ボウイの芸術的感性に及ばなかったギターのミック・ロンソンであったと思うのです。

ボウイとロンソンはニューヨーク訪問の流れで、ルー・リードのアルバムのプロデュースを申し出ます。アルバム「トランスフォーマー」がそれで、グラム的な時流に乗ったアレンジはルーにとって初めてのヒットをもたらしたのです。ウォーホルとのつながりを含めて、アバンギャルドなアートの香り漂うルーをグラム的に化粧をしたのは、ボウイのアレンジャーでもあるミック・ロンソンに相違ありません。しかしルーはこのグラム的作品が自己の音楽性と合致しているとは思えなかったのでしょう、リリース直後には彼らと決別しボブ・エズリン協力の下“耳で聞く映画”とも評される芸術的作品である名作「ベルリン」を制作するのです。「トランスフォーマー」はそのプロデュース故に確実にグラム的作品ではあったものの、ルー・リードがグラムとは一線を隔する前衛芸術的存在であることは、他の作品を聞く限りにおいて間違いのないところなのです。余談ですが、ルーと同じく訪米時に知り合ったイギー・ポップに、「トランスフォーマー」の直後プロデュースを申し出て断られるという事件が起きています。イギーもまたグラムではくくりきれない前衛音楽家であり、グラム的作品は不向きと断ったのでしょう。ボウイとは親友であり“グラム後”はたびたび共演しています。

グラム全盛期のボウイとロンソンのプロデュース作品でもう一組外せないのがモット・ザ・フープルです。モットは英国の伝統を受け継ぐストレートなロックバンドとして60年代から活躍。ステージの評判とは裏腹にレコード・セールスが伸びず解散の危機にあったところを、彼らのファンであったボウイが楽曲提供を申し出て、ボウイ&ロンソンのプロデュース作「すべての若き野郎ども」が大ヒットします。このボウイ作ロンソン編曲による正調グラムヒットにより彼らは、いきなりグラム路線のメインストリームを走りだすことになるのです。ボウイ色が強くなる事を嫌った彼らはこの後ボウイ&ロンソンとは袂を別つものの、正統派ロックを奏でながらもそのコスチュームやステージ演出ではやはりグラムの匂いをプンプンさせていました。そして、74年にはミック・ロンソンがバンドに加入。結果的にはこれを契機としたグラム路線への再傾倒がバンド解散の引き金を引きながら、彼の加入がグラムの代表バンドとして人々の記憶に残る事になったのは皮肉な結末でもありました。その後ロンソンとモットのリード・ボーカル、イアン・ハンター(金髪カーリーヘアーにギラギラグラサンのグラム・ファッションでした)は、ハンター=ロンソン・バンド(写真)として活躍しました。

<70年代洋楽ロードの正しい歩き方~グラム・ロック4>
★ボウイ、ロンソン周辺のグラム・ロックを正しく聞く作品★
①「トランスフォーマー/ルー・リード」
(かなり気持ちいいグラム・サウンドです。ミック・ロンソンのアレンジセンス全開の名盤。楽曲も冴えてます)
②「すべての若き野郎ども/モット・ザ・フープル」
(ボウイ色満載。A1はルー・リードの作品。当時の人間関係が錯綜しています。ロンソンは名バラードB5をアレンジ)
③「華麗なる扇動者/モット・ザ・フープル」
(クィーンを前座に従えたモット全盛期ツアーのライブ。ギンギラ衣装でグラムの雄の彼らの音楽性が全て分かります)