日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

米トヨタ車リコール問題~警戒すべき米国政府の“見えざる意図”

2010-02-03 | ニュース雑感
米国で大規模なリコール発生となったトヨタが、今度は主力車種である新型プリウスのブレーキ不具合に関して米国で100件を超える苦情が起きていると報道され、新たな対応を迫られそうな展開になってまいりました。情報の出所は米運輸省高速交通安全局のようですが、先月下旬以来の大規模リコール騒動がようやく収拾に向かい始めた折の“追い打ち”報道ですから、どうも意図的なモノを感じざるを得ないところです。転んだトヨタをさらに踏みつけて大打撃を与えて喜ぶのは、間違いなく米国自動車業界です。ビッグスリーの再建に代表される米国自動車産業の建て直しは米国景気浮上のカギを握っており、米オバマ政権下の国民的期待でもあるわけです。その米自動車業界の復活の行方ですが、再建活動中のビッグ・スリーを見ても前途はかなり多難な様相であり、何とか他力ででも活路を見だせないかと思った矢先のリコール騒動&クレーム報道でした。

今回のリコール問題を大きくした原因は、トヨタ側の米当局意図の読み違いがあったと言われています。米運輸省のトヨタ側へのリコール対応要請をトヨタ側が「忠告」と受け取ったということにあるというのです。この点に関して言えばトヨタ側の対応にも問題があったことは否定できませんが、米政府の「非難」にも近い必要以上に強硬なリコール要請とその問題が収束に向かったタイミングでの「プリウス苦情」のリーク。誰が見ても米政府の意図的な“トヨタ・バッシング”を感じさせる流れなわけです。車の安全性を確保することはメーカーにとって当然の責任ではありますが、今回の強硬なリコール要請、プリウス苦情問題のリークは一企業のトラブル・レベルで済ませるべきではなく、日本政府としてしっかりとした対応が望まれるところであります。

「プリウス苦情問題」では、国交省がトヨタに対して“徹底調査”を指示したそうですが、日本政府としては米国政府の“見えざる意図”に対する“徹底調査”はしなくていいのでしょうか。ビッグスリーをはじめとする米自動車産業の再建は米国経済建て直しの必要条件であり、そのためには米自動車業界を圧倒し続けてきた日本の自動車メーカーの駆逐なくして道は開けないのです。日本の自動車メーカートップのトヨタは、まさしく米国にとっての長年の“仇”であり、言ってみればこれを打ち砕くことこそ米国の“国益”に直結するわけです。一方日本にとってですが、国を代表する企業であるトヨタのダメージは景気回復を遅らせる大きな要因になるわけで、まさに日本の“国益”にとって大きな影響を及ぼしかねない重大な問題なのです。米国運輸省の一連のアピール活動とリークがもし、国益重視の意図的な“トヨタ・バッシング”であるとすれば、これは日本政府が外交問題として取り組むべき問題であると考える訳です。

政府の役割は、国の発展に向けて自国産業の発展を支援し“国益”を守ることにあります。他国の“国益追求”活動によって自国の国益を脅かすようなプレッシャーがかかっているならば、政府があるべき公正さを求めて他国政府にモノを言っていくことが必要であると思います。国交省はトヨタに対してプリウス問題の「徹底調査」を指示するだけではなく、外務省とも協力してアメリカ政府の「見えざる意図」の有無を徹底調査し、牽制を仕掛けることも必要な段階なのではないでしょうか。鳩山内閣は小沢問題にばかり気をとられることなく、冷静な判断の下、まずは実務ベースでの調査・牽制指示を官僚に対して出し国益を損なうような米国の行動を警戒すべきであると考えます。また同時に日本のマスメディアには、米国側リーク情報に躍らせられない冷静な報道を望みます。