日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

不景気の時代には、「“い”の一番」より「“り”の一番」?

2009-01-07 | その他あれこれ
この時期、行く先々(飲み屋系?)で「大関さん、今年の抱負は?」と聞かれます。今年の私の答えは、「“あせらず、ゆっくり”ですね」といったところ。

本来の詳細な抱負は2日および4日のブログ記載の通りなのですが、まぁ外で抱負話を長引かせず一言で終わらせる場合は、こんな答え方をしています。と昨晩もそんな話をして、帰って斎藤茂太さん(医師&エッセイストで、斎藤茂吉氏の長男、作家北杜夫氏実兄。06年没)の本を読んでいると、バッチリなタイミングで出てきました“ゆっくり力”なる言葉。茂太さんは、「のんびり」「ゆったり」いい人生をおくられた方でした。

“ゆっくり力”は、あせらないことがすべてをうまく行かせるコツだよと言うお話で、「い」よりも「り」を大切にしようと述べています。「い」とはすなわち、「速“い”」「強“い”」「高“い”」といった「い」のつく姿勢。対して「り」は、「ゆっく“り”」「のんび“り”」「ゆった“り”」など、「り」のつく姿勢です。「い」と「り」って、形は似てるけど意味は真逆の非なるものなのです。茂太さんは、「現代社会の進歩をもたらしたのは“い”の文化だけれども、これから本当の豊かさを作り出すのは“り”の文化の方」と言っているのです。

なるほど、この話って今のような不景気な時代にピッタリな考え方のように思いました。景気が悪いのだから、結論を急ぐ必要なし、先を急ぐ必要なし、無理に力む必要なし、あえて背伸びする必要なし…、なのです。こんな時期に先急いだり、力んだり、背伸びしたりしても、何の得もありませんよね。「い」の姿勢よりも「り」の姿勢、「あせらず、ゆっくり」が良いんじゃないかと思います。景気の良い時であるならば失敗の取り返しも容易ですが、今のような下降局面では大きな失敗はリカバリーするのが大変であるばかりか、致命傷にもなりかねないですからね(間違っちゃいけないのは、失敗や先行きの不透明感を恐れるあまりの「足踏み&後ろ向き」行動はダメだということ。「あせらず、ゆっくり」でも前に向いて進むことを忘れちゃいけません)。

組織内の問題として考えるなら、上に立つ人ほどこんな時期は「ゆっくり」が大切です。部下の多少の失敗をすぐカッときて怒ったりしないこと。ただでさえ、景気が悪くて賞与が下がったとか給与が下がるかもしれないとか、社員の気分が沈みがちな時ですから、些細なことでも組織のムードをドッと悪くさせます。管理者だけでなく社長までもがこんな時期に怒りっぽかったり、物事を“短気”に考え結論を急いだ独善的で強引なやり方(特に人事問題)は最悪ですね。短気を起こさず、「ゆったり」構えましょう。

会社の事業もそう、好景気時のようにやみくもに「速い」「強い」「高い」を目指すのでなく、一見「ゆっくり」「のんびり」「ゆったり」とも思えるほど、腰を落ち着かせて取り組んだほうが、長い目で見て結果オーライのような気がします。なにしろ景気だって回復は「ゆっくり」に違いないんですから。やはりここでも、「い」のつく姿勢よりも「り」のつく姿勢。斎藤茂太式『<“い”の一番>より<“り”の一番>の法則』といったところですね。