日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

〈70年代の100枚〉№54 ~ 愛と平和とジョン・レノン

2008-12-06 | 洋楽
明後日、12月8日はジョン・レノン28回目の命日となります。と言う訳でジョン・レノン「70年代の100枚」初登場です。

№54    「イマジン/ジョン・レノン」

タイトルナンバーの「イマジン」は、今やさした音楽ファンでもない一般の方々の間でも有名な超名曲です。愛と平和の賛歌でもあり、決して過激な歌詞ではないものの、その影響力の強さからアメリカ人の闘争心が萎えるとして、湾岸戦争や9・11同時多発テロの際には放送禁止に。これは、この歌の普遍的正当性を示すと同時に、今だ衰えぬジョン・レノンの存在感の大きさをも示す出来事であると言えるでしょう。

「イマジン」の元アイデアはヨーコ・オノの作品「グレープフルーツ」にあります。この作品の中でヨーコは「Imagine…(想像してごらん…)」で始まる問いかけをいくつかしており、この問いかけと芸術と言う争いのない世界にインスパイアされ、彼は稀代の名曲を書き上げたのです。歌の趣旨を一文にまとめたと思われる、当時の日本盤レコード帯に書かれた一節を以下に記します。

「天国も、地獄もそして財産のない世界を想像してごらん…いつの日か、世界はひとつになったらいいと思う…  ジョン・レノン」

この歌には、この当時のジョンのヨーコの活動のエッセンスが凝縮されていると言えます。当時は過激と見られがちだったジョンとヨーコの平和運動ですが、こんなにも穏やかで優しいメッセージにあふれていたのです。ちょっと驚きですよね。でもこの曲は当時は全米№1にはなっていません。最高位は第3位。前作の名盤「ジョンの魂」だって最高位は第6位。「マザー」なんて43位が最高位だったのです。これらの事実は今では俄かには信じられませんが、「ジョンは、訳の分からない狂った芸術家の東洋女に惑わされおかしくなっている」というイメージがあまりに強かったのでしょう。

ポールは、ファーストソロ「マッカートニー」も妻リンダとの共作「ラム」も、当時は不評を買っていながら№1にしているのですから余計に不思議ですよね。そんな逆風の中アルバム「イマジン」は、全米で見事№1に輝いています。ジョンはそのことを、「言いたいことは前作と同じ。政治的メッセージに少し砂糖をまぶしたら売れたって事さ」と言っています。サウンド的にも研ぎ澄まされすぎた前作を改め、盟友ジョージ・ハリスンに協力を仰いだこともセールス的な面ではプラスにはたらいたと言えるでしょう。

収録曲はさすがに名曲揃いです。まず、タイトル曲にも匹敵する名バラードA3「ジェラス・ガイ」やB4「ハウ」、ジョージがドブロを弾く軽快なA2「クリップルド・インサイド」、同じくジョージのスライドギターが良いアクセントのB1「真実が欲しい」、強いメッセージ性を持ったプロテスト・ソングのA5「兵士にはなりたくない」等々、現在に到る強い影響力を生みだした当時のジョンとヨーコの真の姿を、最も分かりやすい形で表したアルバムであると思います。今の音楽の原点のひとつとして70年代の音楽を捉えるなら、この作品の存在感は絶大なものがあると改めて思わされます。