静聴雨読

歴史文化を読み解く

老人と「うつ」

2009-05-18 09:09:10 | 介護は楽しい
老人ホームに母を訪ねると、母の口元がわずかに緩むのがわかります。それが母の歓迎のしぐさですが、それ以上、母が表情を変えることはありません。食事の介助をする私を見る目はクールで、あたかもヘルパーの方を見ているようです。

一般に、老人は笑いません。これは、誰にも共通する特徴です。

食事時に母と同席するおばあさんは、母よりはるかに若く、おそらく70歳代だと思われますが、このおばあさんも笑いません。
私と目が合うと、「ネー」と声を発しますが、それ以上のことばが聞かれることはありません。「ネー」といいつつ、何かを訴えているのですが、その意味は他人にはわかりません。
このおばあさんは、ほかにも、机を叩いて、ひとの関心を引こうとします。

「老人性うつ病」ということばがあります。
老人の表情が乏しくなる症状の嵩じた様をいうのだそうです。
確かに、うつ病と間違えるほどの無表情の老人は多い。

この老人のうつ病の緩和のために、「玩具療法」を試みる動きがあるそうです。
ダーツやジグゾーパズルなどをあてがって、的にあてたり、絵を完成したりする喜びを味わってもらう、という趣旨のようです。
先日テレビで放映されていましたが、確かに、遊びのあと笑顔を見せる老人がいました。

「玩具療法」は始まったばかりで、いろいろ問題点も出てきているようです。
その一つは、おもちゃが老人には使いづらいことです。パズルのピースが小さすぎたり、ピースの切り込みが複雑すぎたり、という問題が指摘されています。
これから、改良が施されていくことでしょう。  (2009/5)