尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

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2005.10/22開設

ウィトゲンシュタイン「論理哲学論考」

2006年03月21日 11時41分49秒 | 哲学と詩学の栞
学生の頃、難しいなりに読もうとしたことがある。
それから今まで、読んだ内容の印象からか、
ウィトゲンシュタインは若くして自殺したとばかり思っていた。
実際は、八人兄弟のうち三人が自殺したが、彼は自殺を回避し60過ぎまで生きている。
僕は、未だにその内容は読み切れないで、詩的な断片として感覚的になぞるだけである。恐らく正しい読みかたではないけれど、テキストには奇妙な緊張感があって、その行間からぎりぎりのところでポエジイが立ちのぼっている。
天才の生きるに難しいことと、凡人の生きるに難しいことは、大差ない。

〈序〉
およそ語られうることは明晰に語られうる。そして、論じ得ないことついては、ひとは沈黙せねばならない。(略)限界は、言語においてのみ引かれうる。そしてその向こう側は、ただナンセンスなのである。

(六・四一)
世界の意義は世界の外になければならない。世界の中ではすべてはあるようにあり、すべては起こるように起こる。世界の中には価値は存在しない。(略)
(六・四二)
それゆえ倫理学の命題も存在しえない。
(六・四三二)
世界がいかにあるかは、より高い次元からすれば完全にどうでもよいことでしかない。神は世界のうちには姿を現しはしない。
(六・四四)
神秘とは、世界がいかにあるかではなく、世界があるというそのことである。
(六・五二)
生の問題の解決を、ひとは問題の消滅によって気づく。


…生の問題の解決は、生とともにないだろう、なくてよいのだ、という実際的な解決のしかたもある。(まこと)

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3 コメント

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Unknown (アドリアナ)
2006-03-22 22:54:43
はっとさせられる言葉が並んでいました。特に最後の「生の問題の解決を、ひとは問題の消滅によって気づく」には、驚きというか納得というか深い感動を覚えたけれど、とりわけ最後のまことさんのコメントが良かった、笑。「なくてよいのだ」という考え!ほんまやね、そう思う!
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ありがとう (まこと)
2006-03-23 22:48:14
いつも拙文をまじめに読んでいただいた上、的確なコメント、ありがとうございます。



禁欲主義は普通、人間の欲望についてブレーキをかけるのだけど、ウィトゲンシュタインは人間の形而上学的な探求心について、禁欲主義なんですね。

論理的に、経験的に答えようのないことを尋ねるな、ということです。

でも考えてしまいますね。

たとえ意識的に考えなくても、その問いに答えているのが、

それぞれの人生の場面であるような気がします。
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Unknown (アドリアナ)
2006-03-23 23:19:47
それぞれの人生の場面、ね。それって詩やね、まことさんの言葉よ! それぞれの場面が詩で問いで答。いい詩と問いと答を探して行きたいものね。にゃん!何というか、何もなくても人生は楽しいです。春も夏も秋も冬も。何一つ無駄ではなく、重なり合って次の場面を作っていくのね。場面はどんどん奥行きを広げ、意味のあるものになっていくのでしょうね。
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