<あッ、アマリリス!>
と、広縁に置いたままの鉢を思い出した。
水を与えずに、出かけるところだった。
白い花。
赤色のアマリリスは、
とっくに咲き終わった。
遅れて咲いた白色は、
ひと茎に四個も、ほぼ一斉に開花した。
茎が難儀そうである。
10時半、河口の部屋に戻る。
いつもの慣いで、窓に広がる景色を眺める。
と、パラシュートのような雲が浮かんでいる。
カメラを手にして立ち上がったが、
韓国と北朝鮮の首脳会談を報じる
放映中のテレビ画面が気になり、
暫く、それを見た。
両首相、和やかな雰囲気である。
民族間の融和がうまくゆけばいい、と思う。
異なる政治形態の歴史を歩んだ両者が
今日の会談でどんな一歩を踏み出すことになるのか?
関心をもって、一挙手一投足、一言一句を見守る。
話し合いが、希望や新たな時代を生み出すことを願いながら。
対立を繰り返してきた南北とは思えない雰囲気であった。
演出だけではなさそうである。
日本でも、もっと話し合いが重んじられなくてはいけない。
少数派の意見が軽んじられすぎる世の中では、
不満が募るばかりだ。
政府は、自らの不正を訊すことなく、
新たな審議を始めようとしている。
未解決の出来事について、
真摯に話し合ってほしいものだ、
などと、思いが日本にまで及んでいるうちに………、
雲は形を崩していた。
もう落下傘の形ではなくなっていた。
水と同じく、雲も一所にとどまることはない。
(人もまた同じである。)
昼前の空。