ぶらぶら人生

心の呟き

『夜想曲集』

2017-12-04 | 身辺雑記
カズオ・イシグロ著『夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』
(ハヤカワ文庫・2011年2月15日発行・2017年10月16日9刷)
🔘本書は、2009年6月に早川書房より単行本として刊行された作品を文庫化したもの。



「老歌手」「降っても晴れても」「モールパンヒルズ」「夜想曲」「チェリスト」
の5編。


最初に読んだ『遠い山なみの光』、次いで読んだ『浮世の画家』とは趣がかなり異なっていた。
二作が日本を舞台とし、登場人物も日本人であった前作では、作者が異国の作家であることをまるで意識しなかった。

今回の連作5編は、諸外国が舞台であり、登場人物もカタカナ書きの人たちである。
小説の背景こそ異なるけれど、<音楽と夕暮れをめぐる物語>として、連作的な短編で、それぞれの作品に底通する共通する世界が描かれている。

すんなりとはゆかない人生の(特に男女の)不協和音が聞こえてくる作品ばかりである。
さりげなく暮らしている人々(この作品では音楽と関わりのある人たち)の内面や日常のある一面が、実によく描かれている。
人々の生涯(あるいは一断面)を切り取って眺めると、どこか哀れでありながら、どこか滑稽味を帯びているというのが、現実だろうと思わされてしまう。

『夜想曲集』を読みながら、この作品に登場する人たちばかりでなく、地球上の人々すべて、それぞれの人の一生(あるいは一断面)を客観的に見れば、絶えず悲哀を抱え込み、その悲哀の中には滑稽味さえ潜ませながら、自らは意識せぬままに生きている、そんな思いを抱かされた。

カズオ・イシグロさんは、短編小説の名手でもある。
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