諦めない教育原理

特別支援教育は教育の原点と聞いたことがあります。
その窓からどこまで見えるか…。

210 保育の歩(ほ)#6 保育の「養護」

2023年07月23日 | 保育の歩
間ノ岳から北岳へ 間ノ岳から少し降りたところからの北岳  さすがに凛々しい!

保育における「養護」とは、子どもたちの生命を保持し、その情緒の安定を図るための保育士等による細やかな配慮の下での援助や関わりを総称するものである。

心身の機能の未熟さを抱える乳幼児期の子どもが、その子らしさを発揮しながら、心豊かに育つためには、保育士等が、一人ひとりの子どもを深く、愛し、守り、支えようとすることが重要である。

養護と教育を一体的に展開するということは、保育士等が子どもを1人の人間として尊重し、その命を守り、情緒の安定を図りつつ、乳幼児期にふさわしい経験を積み重ねられるように丁寧に援助することを示す。

このように、保育士等は養護と教育が切り離せないものであることを踏まえた上で、自らの保育をより的確に把握する視点を持つことが必要である。


こうした「保育所保育指針解説」の記述に見られるように、「養護」は、保育所保育の基盤であり、保育所保育全体にとって重要なものである。

このことを裏付けるように「指針」には、「養護に関する基本的事項」という項をがあり説明を加えている。

保育における養護とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために、保育士等が行う援助や関わりであり、保育所における保育は、養護及び教育を一体的に行うことをその特性とするものである。保育所における保育全体を通じて、養護に関するねらい及び内容を踏まえた保育が展開されればならない。

そして2つの柱で「養護に関わるねらい及び内容」を説明する。それが、

生命の保持
情緒の安定


である。

「生命の保持」の内容
・一人ひとりの子どもの平常の健康状態や発育及び発達状態を的確に把握し、異常を感じる場合は、速やかに適切に対応する。
・家庭との連携を密にし、嘱託医等との連携を図りながら、子どもの疾病や事故防止に関する認識を深め、保健的で安全な保育環境の維持及び向上に努める。
・清潔で安全な環境を整え、適切な援助や応答的な関わりを通して、子どもの生理的欲求を満たしていく。また、家庭と協力しながら、子供の発達過程等に応じた適切な生活のリズムが作られていくようにする。
・子どもの発達過程に応じて、適切な運動と休息をとることができるようにする。また、食事、排泄、衣類の着脱、身の回りを清潔にすることなどについて、子どもが意欲的に生活できるよう適切に援助する。

「情緒の安定」の内容
・一人ひとりの子どもの置かれている状況や、発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。
・一人ひとりの子どもの気持ちを受容し、共感しながら、子どもとの継続的な信頼関係を築いていく。
・保育士等との信頼関係を基盤に、一人ひとりの子どもが主体的に活動し、自発性や探索、意欲等を高めるとともに、自分への自信を持つことができるよう、成長の過程を見守り、適切に働きかける。
・一人ひとりの子供の生活リズム、発達過程、保育時間などに応じて、活動内容のバランスや調和を図りながら、適切な食事や休息が取れるようにする。

以上を、養護についての基本事項としているのである。
文字に表すと当たりの原則に感じてしまうが、「指針」では繰り返し保育の基盤であることが述べられている。

そして、「指針」では、このことを押さえた上で、「教育」についての記述がはじまる。
「教育」については、3つの発達過程、つまり、
・乳幼児期
・1歳以上3歳未満児
・3歳以上児
と区分し、
教育内容も、5つの教育内容
・健康
・人間関係
・環境
・言葉
・表現
と分けてのべられていく。

そこで、分けたこれらの区分や概念の中には「養護」のニュアンスがあまり述べられていない。

その関係は、特別支援学校の学習指導要領における「自立活動」と「各教科」の関係に似ている。

【参考】
「学校における自立活動の指導は,障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服し,自立し社会参加する資質を養うため,自立活動の時間はもとより,学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。特に,自立活動の時間における指導は,各教科,道徳科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動と密接な関連を保ち,個々の児童又は生徒の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等を的確に把握して,適切な指導計画の下に行うよう配慮すること。」
特別支援学校学習指導要領 総則編 小学部・中学部学習指導要領 第1章 第2節 (4)

保育所における「養護」や、特別支援学校における「自立活動」は、記述の分量としてけして多くはない。
しかし、記述の意図としては、これらの概念が現場の〝通奏低音″として絶えず現場で響きあい、関係者のきめ細かい配慮を醸成させながら子どもたちの生命や生活を守り、教育を支えるものとして機能させたいということがあるのではないだろうか。

別の言い方すれば、教育というものは、細部を積み上げていくような記述では描き切れなくて、不足した茫洋としたイメージのようなところを「養護」が担っているともいえる気がする。

「養護」と「教育」。そのことを、「指針」では次のように記述している。

保育における「養護」とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために、保育士等が行う援助や関わりであり、「教育」とは、子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助である。

例えば、

「養護」は願い
「教育」は手だすけ

というまとめはどうだろう。
省庁の文書には似合わないが。


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