1月4日の初仕事?

2005-12-19 22:30:15 | MBAの意見

数週間前、ある会社の依頼で、その社の全国に何ヶ所かにある事業所を訪問した。それも超特急。高速バスまで利用。体力ボロボロになる。緊急巡回の用件は、「独禁法改正に伴う、遵守の徹底」。なぜ、自分の会社でやらないか不思議だが、そういう知見がある人間が不足しているということだろう。まあ、理由はなんでもいいのだが。

では、改正独禁法とはどうなっているのかということだが、やや画期的ではある。正式には「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」ということだ。平成16年10月に国会に提出され、161回国会、162回国会での審議の結果、17年4月20日に参議院を通過。4月27日に交付され、平成18年1月4日から施行される。特に問題になるカルテル行為の時効期間は3年なので、平成15年1月以降の事件が対象になる。カルテル(談合)行為に対する新規定について、何点かの特徴を書く。

1.課徴金の増額
 罰金のほか、課徴金の規定があるが、金額が重くなる。
 当該事業売上高に対する乗率が増額。例えば大企業製造業は(旧・6%)(新・10%)。
 早期にやめた場合は課徴金の2割引
 繰り返していた場合は5割増
 *当然ながら、罰金も課徴金も会社の経費とは認定されないから税引後利益から差し引かれる。つまり実質的には金額の2倍痛手を負う。

2.課徴金減免制度の導入
 簡単に言うと、談合行為を自ら自主申告した場合、課徴金が軽くなる制度が導入された。
 立入検査(捜査着手)前に申告すると、最初の申告者は課徴金がゼロ。2番目は50%OFF。3番目は30%OFF。になる。
 *しかも、閣議決定で、最初の申告者は「罪そのものがなかったことにする」ということが決まった。
 *誰が最初に申告したかというのは重要な要素になるのだが、FAX、MAILの受信時間順ということになった。
 *1月4日午前0時0分0秒に申告しようと思って、誤って1秒前にFAX送信すると、罪に問われることになるので注意が必要だ。

3.犯則調査権限の導入
 限りなく、検察(警察)に近づいたということだ。以前でも公取と検察はほぼ同様だったが、さらに類似になる。
 *ただし、ピストルは所持してないので、抵抗して撃たれることはないが、差はそれくらい。

4.勧告制度から排除措置命令に替わる。さらに審判制度は整備。
 勧告制度を廃止し、意見陳述の場を設けたあと、排除措置命令が出る。不服の場合は審判を開始。

簡単にまとめると、罪が重くなり、公取委の権限が警察並となり、一方、密告制度ができた。ということだ。密告制度というと、度々国会で審議されている共謀罪と繋がるところもあるのだが、「要するに談合しなければ捕まらないのだから、密告制度があってもいいじゃないか」という主旨になり成立した。

しかし、一方、日本は談合天国だったのも事実。1月からどうなるのか、よくわからないが、早い話が「談合しなければ」いいはずだ。しかし、現実は複雑だ。特に、年末は、同業者組合の忘年会とか多く、単なる忘年会かと思って出席したら、同業者組合幹部から妙な文書を渡されたり、というのがよく聞く話だ。それで、急遽、走り回るハメになった。

最初に行ったのはA県の事務所で、ここは規模が小さく、話は簡単。ただし、所長さんは退職間際なので、あまり興味はなさそう。喉の潤滑油のようなものだった。次にB県へ行くと、事態は一転。支店の幹部が会議室に集まっているが、最初から拒否反応を示す。「談合行為なんかやってないから、聞くだけ無駄だ」というゴーマン態度だ。(結局、このゴーマンは30分後には、大崩壊することになる)

要するに、大勢の人が独禁法を軽く考えている理由の一つは、「公正取引委員会」という名称にあると思われる。「教育委員会」とか「農業委員会」とかのイメージと繋がり、何か中立の第三者のように耳に響くのだろう。


「”公取”は”警察”と同じです。」ということから始める。
「捕まると、簡単には家に帰れなくなります。」と厳しい罰を受ける場合があるということを例を上げて説明する。
「公取と検察は張り合ってますから、逮捕にくるのが刑事の方かもしれません」と成田空港公団の例を出して、おどかす。

「会社に着替えを用意しておかなければいけません。」というと、顔色がこわばってくる。

「個人の罪になります。」と言うと、さらに黒目が小さくなる。

「会社が禁止している行為を、犯した場合、会社はトカゲのしっぽを切るだけです。私が説明に来たのも、”会社の努力にかかわらず”というコトバを使うためですから・・」息苦しい雰囲気が流れる。

「ですが、そうも言い切れないのです」と変化球を投げる。

「会社のためと錯誤して、こういった行為に加担した社員を解雇するのは辛いものがあります。」
「さらに、シッポを切ってもトカゲが許されるわけでもありません」ちょっと場が緩む。

「だから、そういうことが起きないようにお話をさせていただくわけです。」やっと話ができるようになる。

実は、ここから先は、ハウツーものになるので、書かないのだが、要するに思わず危ない場面に引き込まれそうになった時に、仲間はずれになるノウハウの話だ。日本国内で仕事をすると危険があちこちに点在していることに気付く。同業者からの電話や会食の誘い。販売競争の裏に潜む、不当廉売の誘惑・・・

そして、その前に、企業(特に中小企業)が多くの無垢な社員を危険にさらしている理由として、「独禁法のことを教えていない」ということがある。前述したとおり、公取の捜査権は警察並みなのだが、警察に捕まる罪の数々は、家庭でも学校でも十分に教えるのに対し、公取に捕まる罪のことなど、家庭でも学校でも教えない。会社でもおざなりだ。

こういう会話があった。

「同業者で決めた価格より安く売るのが、”違反行為”だと思っていましたよ。」驚愕する。いわゆる「談合破り」が罪になると思っている人たちもいる。本当に恐ろしいではないか。独禁法の禁止事項すら知らない人たちが大勢いるわけだ。

そして、気懸りなのは、白と黒とグレーゾーンをはっきりさせて、捜査の強弱を決めておかなければ、「軽微な相談」とか「同業者からのちょっとした電話」とかを次々に槍玉にあげて、公取のFAXがフル稼働になってしまうのではないだろうか。何しろ最初の申告者が無罪ということなら、あることないことを公取に申告して、同業者を破滅の道に追い込むことが、もっとも有利な企業戦略になるからだ。

しかも、この独禁法というのは、あまり冤罪ということにはならない。だいたい黒になる。白と黒の間に広大なグレーゾーンがあるからだ。グレーとは法律を拡大解釈してしまえば有罪にできる範囲だからだ。だからなかなか白とは認定されない。


さて、このまま1月4日になり、仕事始めで朝9時に出勤した公取委の職員が、フル稼動で紙切れになってしまったFAXを見ることにならないことを祈るしかない。たぶん、そういうことはないだろうが・・  


ブログとブロガーの単純法則発見

2005-12-18 22:28:25 | 市民A
土曜夜(12/17 19:00-23:00)、赤坂の某スナック(というかBARというか・・あいまい)で、忘年懇談会が開かれた。主催は私。ちょっと空いた時間が作れたので、愛読者の方と、共有の時間をもち、モーツアルトやショパンの生涯を回顧し、ヘンリームーアやマリノマリーニ、吉本ばななの新作とか・・静かに語ろうかな。できれば、「殿方」ではなく「姫君」と・・

ところが、実際に登場されたのは、上記の趣旨とはまったく無関係な、以下の方々(本当はそういう高尚な話題の方向にいかなかっただけかもしれない)。並べた順番はアイウエオ順。その他の基準で並べると文句がつくのが必定。

あざらしサラダ管理人のあざらしサラダさん
ある米国公認会計士(USCPA)の鎌倉からロンドンへの道管理人のKOHさん
大西 宏のマーケティング・エッセンス管理人の大西宏さん
ガ島通信管理人の藤代裕之さん
dawn管理人のdawnさん
「まるぽ」にうす管理人のぽいんと尺さん

残念ながら、私を含め、殿7、姫0。外に出て、赤坂を歩く姫君を何人かかどわかして・・とか一瞬思ったものの、週末の赤坂を歩く女性の方々の多くは、私の知らない言語を使われるようなので、あきらめる。

そして、全員と初対面であったのだが、ブログによっておぼろげに構築されたそれぞれの方のイメージとあまり違わない(想定内)なあ、というのが最初の感想。たとえばあざらしサラダさんがdawnさんだったらちょっと違和感がある、ということ。

感想2は、ブロガーは「おしゃべりだ」ということかな。ただし、これが一般論かどうかはわからないのは、私自身が愛読しているブログ自体が「やや長め(1500字から2500字)のおしゃべり型タイプ」という事情が反映されているのかも知れない。

感想3は、各ブロガーの方の話し方は、まさにその普段のブログと同質であるということ。話す場合の論理と書く場合の論理が一致している。「思考と直感の切り分け」や「論理の組み立て方」とか・・・、あまりこの先を書くと怒られそうなのでここまでにするが、脳の使い方が人によって違うのだろう。それから言うと、「ブログ用に特殊な論理を使ったり、無理なテーマを突き進むというのは長続きしないのだろう」と初心者用アドバイス。

そして、7人の輝く知性が共有していた時間は、ある話が触媒になり崩れていく。それは、少し前に私が取り組んだ「津軽」の話から始まる。なぜか「津軽」ということばが連想ゲームの起点になり、あえて名前は公表できないものの、とうとう「小林旭」氏がマイクを握ってしまったわけだ。

世間一般では、「津軽」→「石川さゆり・津軽海峡冬景色」ではないかと思っていたのだが、「北へ」という思考パターンもあるわけだ・・

実は、私の個人的な趣味でいえば、つい最近訪れた、津軽半島の中央にある本州最北の人口集積地である「金木町」出身の二人の有名人のうち一人(もう一人は太宰治)が歌う演歌をもって、「正統津軽うた」と認定したいと思いはじめている。それは、

 雪国 吉幾三だ。

吹雪の中、白い大地を二つに切り分け、津軽鉄道金木駅に近づく一両編成のワンマン列車を見たとき、なぜ、あのまったく素朴で誰にでも歌えるような単純な曲に、彼が過度の感情移入が可能だったのか、ちょっとだけわかったような気分になった。

そして、カラオケ連想ゲームは狭い思考パターンの中から脱出できず、いつしか自然終了し、「アネハ被害者に対する、やや微妙な違和感」を共有し、以下定刻の23:00となり、札束が乱れ飛んだあと、お開きとなる。

最後に、この集まりに参加された皆様方に、感謝の気持ちを表明するとともに、また、別の機会での再会を祈念し、さらに、まだ見ぬ愛読者の方々からの応援を大切にし、日々、次のエントリへ進むことにする。  

岡本太郎の遊ぶ心-岡本敏子-

2005-12-18 22:27:28 | 書評

f7117c4f.jpg岡本太郎の造形は楽しい。ただし、それは絵画のように持ち運びが可能なものではなく、またロダンやヘンリー・ムーアのブロンズのように同一主題での複製が可能なわけでもなく、「太陽の塔」をはじめ、それぞれの構築物があちこちに単独で存在する。したがって展覧会として、まとまって見られるのは絵画が中心になる。表参道の旧邸宅である美術館もそうだし、川崎市にある美術館でも屋外展示物はあるものの、やはり絵画中心だ。だからと言って、あちこちにTARO-ハンティングに行くのも困難ということで、本を読んでみた。50年間の秘書で、後に養女となった岡本敏子さんの著。

この本は、主に大量の作品を製作始めた大阪万博以後よりも、それ以前に詳しい。子供時代、戦前のパリでの著名人との交流、そして日本で縄文土器の再評価、そして数々の趣味。スキー、クルマ、ゴルフ、カメラ、ピアノ。そして生涯唯一のペットである「カラス」。多芸というコトバでは包括できないのは、それらの総体が彼のすべてということだからだ。(それにしても、カラスの足に紐をつけ、凧のような状態で散歩をしていたというのは、世界中で彼だけではないだろうか。)

f7117c4f.jpgこの書で特に触れているのは、ピカソとの出会いだ。一時、絵が描けなくなった太郎が、ある画廊でピカソの100号の大作に出会ったそうだ。そしてその絵に強い衝撃を受け、再び筆をとることになる。南仏のピカソのアトリエに行った時に、太郎は、「均衡や調和ではなく、悪趣味でもって調和や均衡といったものを壊していくべきではないか」と持論を展開するのだが、ピカソに「そうだ。僕はそれをやっているんだ」と一蹴されている。太郎によれば、別れ際にピカソと握手をしたところ、ピカソの手は小さく柔らかく、その感触が心臓に伝わってきた、と述懐している。

そして、彼の生涯最大の作品は、言うまでもなく「太陽の塔」だ。当時、このテーマ館のプロデュースには自薦他薦さまざまな候補がいたそうだ。そして。もめにもめた後、太郎に白羽の矢が飛んできたそうだ。そして、そのもめたのが良かったかもしれないのだが、彼の意見はかなり企画段階で優遇されることになったそうだ。

ところが、ここからゴタゴタが始まる。まず、万博のテーマは「人類の進歩と調和」なのだが、ピカソに彼が話したとおり、「調和」は太郎がもっとも嫌う言葉だ。創造的破壊とか芸術の普遍性というのが彼の持論なのだから、食い違うのが当然。そして、決定的な対立が、テーマ館設計者の丹下健三との間で爆発する。なにしろ、岡本太郎が万博会場に建てようとした高さ70メートルの「太陽の塔」は、せっかく丹下健三が設計したテーマ館の巨大天井をつき破らなければ、おさまらない大きさだったからだ。

そして、最後のダイスを振ったのは、万博協会会長の石坂泰三である。彼が、なぜ岡本太郎の肩をもったかはわからないが(運がよければ自伝にかいてあるかもしれない)、結局、会場の中に、「進歩と調和」と「人類の普遍性」という二つの巨大テーマが混在することになり、何だかわからないうちに6422万人が大阪に引き寄せられていくのである。

この書には、いくつかのTARO語録が紹介されている。

人間は その根底において 美しいし、尊いのだ
みんなが 真の人間的な存在 つまり芸術家になれ
悲劇に真正面から取り組み 生命をひらくことが、真のいきがい、遊びなのである
男に生まれた以上、世界中の女の 男であるべきだ

そして、さらに驚異的なのは、

私は父母に生んでもらったんじゃなくて、自分で決意してこの世に生まれてきたのだ

「芸術は、爆発だ!」とはあるビデオテープのCMだったが、もっと正確に言うなら、「岡本太郎の人生は爆発だ!」ということだろう。そして敏子さんは2005年、慌しく永眠。


「からくさ」の父&娘

2005-12-17 22:26:55 | 書評

2b9c7e8b.jpgテレビ東京で放送されている「開運!なんでも鑑定団」は好きな番組の一つだ。司会は石坂浩司と島田紳介。鑑定を依頼された「おたから」を鑑定士たちが真贋を見極め、評価額を発表する。本人査定額との落差にスリルがある。だいたい10に1つが大当たりになり、残りはガッカリということになる。12月13日放送では、ある住職が持ち込んだ中国の作家、魯迅の書に、7,000,000円がついた。

そして、その鑑定団たちのリーダー格が「中島誠之助」である。昭和13年生まれ。骨董屋「からくさ」店主。骨董通りの命名者。日本の伊万里の値はこの人が付ける、ともいわれる。有名な決めセリフは、「いい仕事してますねえ」だ。なかなか、便利なコトバだが、常人が使うとうまくいかない。どこか嫌味に聞こえてしまう。

2b9c7e8b.jpgところで、この誠之助さんの長女が中島由美さん。芸大大学院修了後、戸栗美術館学芸員を経て、現在は日本陶磁器協会勤務。いくつかのカルチュアセンター講師としても活躍中。「古伊万里からくさ美術館」は父誠之助コレクションを紹介、解説した本。要するに、誠之助氏が仕入れた骨董のうち、あまり高額でなく、お気に入りは売り物にはせず、自分でコレクトしてきたものが多数あるわけだ。この本を読む限り、柿右衛門はじめとする色絵はお気に召さないようだ。価格が高くコレクトするのは経営的に損ということかもしれないが、白地に藍の染付けだけのシンプルカラーがお好みのようだ。

というのも、この本でも勧められているのだが、実際に食器として使うことにより、陶磁器はより活きてくるということらしい。白地に藍の文様ならば、和食、洋食どちらもお似合いだ。困ったことにこの本を読んでいくと、伊万里が欲しくなってくる。彼女に言わせると、骨董の中では伊万里は安い、と断言しているのだが・・・(安い高いは相対的問題なので)

2b9c7e8b.jpgそして、この本のちょっと面白いところは、骨董屋「からくさ」がまだ無名だった頃の話。何しろ、時々、大量に陶磁器が入ることがあったらしい。そうなると、その日は早めに風呂に入らないといけなかったそうだ。そういう古い陶磁器は、自宅の浴室で、浴槽の中に沈められるそうだ。そして、まずきれいにみがかれる。さらに、次は浴槽の中で漂白されるそうだ。その間2、3日は風呂には入れない日が続くそうだ。(たぶん、今は違うのだろう。いいギャラもらってますねえ、だ。)

しかし、白地に網目文様の藍染の大皿でとらふぐの刺身をつまむなど、やってみたい遊びの一つだが、簡単ではない。ふぐの方は金次第だろうが、網目文様の大皿は、めったに手に入らない。ますます、ほしくなる。


誰のためにもならない北米牛肉輸入解禁

2005-12-16 22:25:55 | MBAの意見

175de1dd.jpg12月12日、日本政府は2年間禁止していた北米からの牛肉輸入を解禁した。同時に危険部位以外の内臓も解禁。ただし、全頭検査を行っていない関係で、生後20ヶ月以内に限定している。政府の予想では、この禁輸解除で、停止前の17%の数量が輸入されるだろうと予測している。17%というのはずいぶん明確な数字だが、政府おとくいの静的分析によっているのだろう。

この問題はいくつかのポイントがあるのだが、最初に数量バランスを考えてみると、例えば、2002年の数字を見ると、牛肉の消費量は全国で128万トン。うち国産が59%の76万トン。輸入が52万トンである。この輸入のうち49%の26万トンがオーストラリアから、45%が米国産になっている。したがって国内流通量全体でいうと19%分が禁輸されたことになる。そして、その後、どうなったかというと、減った分の約半分がオーストラリア産牛肉になり、半分は主にアメリカ産の豚肉の輸入で穴埋めされたのである。

その後、鳥インフルエンザで鶏肉の輸入はかなり減っているのだが、食肉全体では、この鶏肉輸入の穴埋めは行なわれず、単に「おかず」の数が減って、GDPがほんのちょっと下がり、家計にゆとりが出ているらしい。つまり、あまりマクロで考えても「計算通りにはいかない」ということだ。よく言う話だが、「牛肉がなくても何も起こらない」とも言えるが、それでは乱暴すぎるから、もう少し考えてみる。

たぶん、政府の予測通りにはならないのだろうが、仮に、米国産牛肉の輸入量が増えたらどうなるかというと、おそらくその分の米国産豚肉の輸入が減りそうである。限界供給商品は輸入豚である。

次に、安全性の話だが、知ってか知らないかわからないが、話がズレている。20ヶ月以内ならOKとしたのは、20ヶ月以内の成体の異常プリオンを検査することができないという意味であって、安全ということではない。むしろ、20ヶ月以内の検査方法を技術確立させるべきだという正論もある。米国で確認されているBSE患者は140人強。日本は1人(それも英国在住歴あり)。元々危険だらけで、いつ撃ち殺されるかわからない国の基準で考えるか、安全性を「ゼロ」という数字で評価する国の基準で考えるか、という問題もある。政治家が口で言わないだけだ。


そして、具体的に懸念される点は二点ある。一点目は、肉骨粉の使用状況であり、もう一点は、既に拡がっているかもしれない土壌汚染の問題である。

肉骨粉の牛用の飼料として使用することは、両国とも禁止している。さらに、ある意味で農産物の統制経済が続く日本では、こっそり変なことをするのは難しい。他の業界では、「アネハ事件」のような例があるものの、肉骨粉を密かに入手して牛に食べさせて得る利益と発覚した場合のリスクを考えれば、経済的にも使う必然性がない。さらに、すぐバレるだろう。たぶん米国では、そういうことがバレるリスクも低いだろうし、バレたところで社会的制裁も小さいと思われる。

次に、土壌汚染の問題だが、野生動物に広がっているかどうかという問題だ。今のところ、牛、羊といった反芻動物とそれを食用にしている人間が感染しているのだが、仮にそういった管理された環がはずれて、野生生物にも異常プリオンが広がっていったとしたら、もはや地球規模で回復困難となる。地面にいる微生物段階で汚染されれば、牧草だけを食べていても危険になる。オーストラリア大陸にも渡り鳥が宿主として運んでいく可能性がある。発病するかしないかは、単に潜伏期間と寿命の関係になるかもしれない。日本でもペットフードには肉骨粉の使用は許可されていて、何らかの理由でペットが野生化すればあぶない。もちろん、何らかの理由で人間がペットフードを食べたら、きわめて危険ということだ。

そして、米国産牛肉は12月18日に航空便で到着する。もっともご執心なのは、無論「吉野家」であり、他の業者は慎重である。吉野家がご執心なのは、牛丼以外のメニューはことごとくうまくいかなかったからなのだが、何か、どうも吉野家だけが輸入業者になるのではないかなという状況だ。もちろん、その方が消費者は安全だし、吉野家だって、牛肉不足の悩みもなくなる。流通ルートが複雑になった場合、日本全体としての「牛肉離れ」ということがおきるかもしれないからだ。別に牛肉がなくても、何も起きないのも事実だ。来週以降の宴会の幹事は、事前にメニューを聞いて、「牛肉抜きで」と付け加えなければならない。

そして、禁輸前の2002年のアメリカの牛肉輸出は、日本向けが30%、韓国向けが26%。日本の次は韓国が攻められるのだろうが、たぶん無抵抗だろう。米国の国内向けの供給量がタイトになり牛肉価格が上昇することが予想されるが、他国の物価の心配をする必要もないだろう。


ところで、実はあまり「牛肉問題」を客観的立場で考えられない状況がある。私も牛のオーナーなのである。投資先の一環で「安愚楽牧場」という黒毛和牛のオーナー会に入っていて、年利3.6%の配当収益を得ている。一度、那須牧場で女性社長の話をうかがったことがあるが、要するに農業、畜産業に株式会社の参入を認めない政策のため、農協というような巨大組織に入るか、個人の零細規模でやるしかない、という現行の制度に挑戦するため、牛の個人オーナーから委託されている形態で事業拡大しているとのことだ。

毎年、決算書をいただくが、一般企業なら借入金にあたる委託金の比率は低くない。社長の説明では、「牛の死亡には保険をかけているので安全」と言うのはわかるのだが、「会社の経営には保険がかかっていない」のも事実。予期せぬ禁輸措置のおかげで収益は好調なのだが、輸入が開始されると牛肉価格の下落リスクが高まる。

一方、米国のけしからないのは、たいした理由もなく「日本産牛肉の輸入禁止」を続けていることだ。米国のリッチマンは日本にきて「コウベビーフ」というブランド名の霜降り牛肉を絶賛していくわけだから、解禁されれば、高級牛肉は米国にも流れるだろう(交際費接待という制度がないのがたまにキズだが)。そうなれば、またあらたな展開になる(日米牛肉戦争)のかもしれない。国際経済学の不滅の理論である「比較優位論」によれば、日本が高級牛肉、米国が低級牛肉に特化していくはずだ。

ということで、年末は、「牛肉」・「強度偽装」・「少女殺人」の三つの狂奏曲が大鳴騒の中、混乱の中、終わるのだろう、と思っている。


ジェイコム事件で一考

2005-12-15 22:24:56 | 投資

弊ブログ愛読者(と思われる)さなえさまから、ジェイコム事件について、一筆したためるようにと要請された。実は、あまり心に響かない事件であり、感想とかポイントとかの羅列になりそうだが、ご容赦を。

1.誤発注(1株610,000円を610,000株1円で売った)そのものについて
 人間はヒューマンエラーを犯すものであり、顧客からの注文を取り違えることはありがち。私も先日、800,000円の株を1株ネット上で注文すべきところ、800,000円で1,000株と入力してしまった。送ってから「シマッタ」とすぐに気付いたが、幸い数秒後に、”残金がありません”表示が出た。8億円必要だったわけだ。もちろん、1,000株買えればずいぶん儲かったはずだ。
 もともと自己売買部門での発注ではなかったわけだ。

2.システムの責任
 要するに、発注取り消しが利かなかったことについて、東証がシステムミスを公表。今後、損害額を東証と富士通で押し付けあう構造が目に浮かぶが、そもそも、こういった発注取り消しという要件を2社間でどう指示していたかが鍵だろう。結構水掛け論が目に浮かぶ。システムを富士通に任せたプロセスも気になる。

3.値幅制限の効用
 今回は、値幅制限で1円までは下がらなかったわけだ。制限がなければ上下の制限いっぱいまで損失が広がり、途方も無いことになっただろう。しかし、値幅制限には否定的な意見も多い。世界的には上下限値は無いのが一般的。

4.一旦、儲けた証券会社のこと
 自己売買担当者は、早押しクイズの優勝者をスカウトしているという噂があるように、すばやかった。逆に、ファンド勢には、色々と内部規制があることがわかる。ただし、自己売買の特徴は、当日完結型のはずだったので、買いきれないままバランスを残してしまったことになったのだろう。

5.利益の返還行為
 政府も、圧力をかける前に、利益の半分を法人税で取り立てる方がよかったのではなかっただろうか、と思ってしまう。UBSと言えばスイスだが、「スイス人は世界一ケチで、個人主義者だ」という仮説を証明してしまった。利益を返すと言っても、いったい誰に??税務署は今回儲けた個人から、きちんと所得税を取り立ててもらいたいものだ。

IPOをめぐって、別の話
最近、○○○○という会社からシツコク電話がくる。IPOの共同購入の会らしい。なかなか手に入らないIPO銘柄をグループ購入する会とのこと。もうすぐ、「イー・バンク」が上場するらしいとの情報で顧客集めをしているらしいが、やっと諦めてもらった。営業マンは電話で、イーバンクのことばかり話すのだが、知りたいのは、○○○○社の安全性なのだが、妙に答えない。だいたいイー・バンクには既に預金口座もあり、使っているし、よく知っている。さらに、先日、東京スター銀行が上場した時には、初値は売り出し価格を下回っている。その辺を追及したら、丘に上がった蟹のようにあぶくを吹き出す音が受話器の向うから聞こえてきたのだ。

追記;東証の建物は茅場町駅から7分くらいだが、誰でも見学できる。そして、今回のようなことが起きないように市場を監視している現場をガラス越しに見ることができる。はっきりいって、のんびりしている。 


アルコールに関する2つの話

2005-12-15 22:24:17 | 市民A
まず、「健康診断」の結果票が届く。問題点は約3ヶ所。ガンマGTPが130。尿酸7.6。慢性胃炎。

ガンマGTPは、もともと少し多い。準備(といっても数日の禁酒)していくと70台に下がる。しかし、加齢とともに非可逆性が増加するらしい。(この、「加齢」とか「非可逆性」というのは医者が使う言葉だが、嫌なコトバだ。ようするに伸びたゴムは元に戻らないということなのだろう。)そして尿酸は徐々に徐々に増加していて、とうとうリミットの7.5を超えた。そしていつもながらの慢性胃炎は、治しようもない。胃壁の襞が少しだけ浅いことを指摘されているのだが、治せないものだ。

そして、指導内容は、ガンマGTPはアルコールを控えること。高尿酸は塩分制限・節酒。そして慢性胃炎にはアルコールを控えるようにと書いてある。まあ、簡単にいうと、「アルコールをあまり飲むな」ということ。簡単なようで難しい。タバコをやめる人はゴマンといるが、酒をやめた人は、ほぼ見たことがない。一方、だれかれの葬儀にいって、故人が好きだった酒を棺に供える人たちの多いこと・・

ところで、もう一つの話題だが、第3のビールに対する酒税値上げが決まりそうだ。350ML缶で現行の約24円を28円にするということ。(一方、本物のビールの税額は78円が77円になり、発泡酒は47円の据え置き)これでも2000億円の増収になるらしいが、それは単に机上の論理だろう。何しろビールは数あるアルコール類の中で、アルコール含有量あたりでは、きわめて税額が高いのだ。

たとえば本物のビールはアルコール分5%とすると、アルコール1リッターあたり4,440円が税金だ。同じく第三のビールは1,409円。一方、その他の清酒や焼酎やウィスキーはアルコール分1リッターあたりでは1,000円前後になる。だからビールをやめて、水割りやお湯割りでしょうちゅうやウィスキーを飲まれると、税収は下がる。逆にストレートで強い酒をぐびぐび飲んでもらえば、税収は大儲けだが、こんどは医療費で破綻するかもしれない。

そして、今度は自分の話。スーパードライが登場して以来、ビールの度数は増加している。4.5から5.0%だった度数は、最近は5.5%から6.0%位になっている。そして、あまり強いビールは好きではない。薄味がいい。といって、以前、ドクターストップになった時に飲んでいたノンアルコールビールは、いかにもまずい。ということで、今度やってみようと思っているのが、ウィスキーのノンアルコールビール割りだ。好きな濃度で飲める。

しかし、「そんなもの飲めるか!」というのが普通の方の意見だろうが、実はあるところで先例があるのを知っている。あまり、リアルに書くと大迷惑がかかる方がいると困るので、ソフトに書くが、以前、中東の某国に行った時のことだ。その某国は、厳重にアルコールを禁止している。見つかると刑務所行きになるが、刑務所には冷房がなく、摂氏50度になるので、ますますビールが飲みたくなる。日本人商社マンで現地駐在の方も、お酒は飲みたい。蛇の道は蛇というか、陸路、闇で入ってくるウィスキーがあるらしい。が、入手はかなり困難を極めるわけだ。1年に1本あればいいほうだそうだ。そうすると、1年で700CCということになる。1日あたり2CC。

それをどうするかというと、現地では水より安いノンアルコールビールで割って啜るわけだ。ウィスキー2CCを30CCのノンアルコールビールで割るとアルコールは2.5%となる。薄口のビール味になるそうだ。

とはいえ、まだ忘年会もあるし、正月用に倉敷の秘酒「荒走り」も入手済み。正月が終わってから実験することにしよう。

ところで、ビール情報を検索していたら、驚愕の発泡酒を見つけた。

 「赤味噌ラガー

6bf53549.jpgいわずと知れた名古屋産。ランドビール社という会社が作っている。どうも現地でしか飲めないらしい。金シャチビールという地ビールを作っている会社だ。通販では手に入るようだが、赤味噌ラガー以外に金シャチビール4本も抱き合わせで買わなければならず、送料抜きで3,675円。う~ん、高い!。名古屋に行った時の買い物リストにまた追加だ。黒皮のブログ手帳の「小倉サンド」の文字の下に「赤味噌ラガー」と書き込んでおく。

第九にふさわしくない場所

2005-12-14 20:50:17 | 美術館・博物館・工芸品
4c68b7be.jpg最近、咳が強くなり、医者に診てもらうことにした。自宅近くの開業医。なぜか、待合室にはベートーベンの第9が流れる。愛と平和と喜びを高らかに謳った詩人シラーの原作を元に、ベートーベン作曲の最後の交響曲。1824年の初演。既に聴力が不自由なベートーベンと、もう一人の別の指揮者という風変わりな二人指揮で大喝采を得る。

現代日本で12月に第9を聴くのは驚かないが、場所が医院とは・・
本当はシベリウスの第4交響曲のように地獄へ吸い込まれるような恐怖感や、レクイエムのような沈鬱な選曲の方が、職業的にはもうかりそうだが、「生の喜び」をたたえ、自らの正月休みをゆっくり楽しむために、一旦、患者をみんな治してしまおうということなのだろう。

そして、医者との会話は、半分以上が第9の講義になってしまった。詳しい話を聴いた。

最初に日本で第9が演奏されたのは、1918年6月1日ということだ。場所は徳島。ドイツ兵捕虜収容所でのこと。ここで、私が逆にフォロー。第一次大戦の際、誰からも頼まれないのに遼東半島の青島を租借していたドイツを攻撃。ほぼ無抵抗のまま、占領。ドイツ兵と一部の民間人(ほとんどの男子は予備役になっていた)を捕虜として拘束し、日本に連れてきていたのだ。この中に、バウムクーヘンで有名なユーハイム氏やハムソーセージで有名なローマイヤ氏が含まれる。さらに日本が占拠しそのまま使用したビール工場は、現在、世界的規模になった青島ビールとなる。

そして、戦争が終わり、日本にバウムクーヘンとソーセージと第9が残ったのだ。(フォロー終わり)

第9が日本で、特に輝きはじめるのは昭和18年のこと、東京音楽大学(現在の芸大)で、学徒動員で出征する学生を送りだす際に演奏されることになった。ベートーベンだから許可されたのかもしれないが、本来、戦争は、生の喜びの対極だ。

そして、戦後生還した学生たちが集まり、不幸にも銃弾に倒れた学友たちに捧げるレクイエムとして演奏されることになる。話はちょっとずれるが、こういう逸話を聞くたびに思うのだが、日本人は世界の標準から考えると、きわめて偏った感受性を持っている。まあ。それでいいのだが。

その後、第9は高邁な精神から徐々にはずれていくそうだ。早い話が、オーケストラという儲からない職業の越年資金源となる。だから12月公演になるそうだ。新しい年をフレッシュな気持ちで祝うなら1月の方が正しい。12月に年賀状を読むようなものだ。


さて、第9論議に長々と花を咲かせた後、(念のため)マイコプラズマ肺炎検査用の採血を終え、待合室に戻ると、既に次の次の楽章、つまり最終第四楽章が始まっていた。そして約20個の白い眼に見つめられてしまうことになってしまったのだ。

ところで、考えてみると、日本最初の第9が1918年、音楽大学での演奏が昭和18年。そして、来年は平成18年。何がおこるのだろうか?
私は、のほほんとみかんを食べながらのフルトヴェングラーにするのではあるが・・

住めば都とはペットの話

2005-12-13 20:56:26 | MBAの意見
d08a74d5.jpg休日に、近くのショッピングモールを歩くと、中央の広場で、ペットの里親の希望者を募っている。区内の獣医会が主催のようだ。新たな主人の候補をカゴの中から心細そうに眺めるペットと目が合わないようにいつも遠巻きに見ているのだが、最近気付いていることがある。

それは、前は圧倒的に子犬だったのだが、今は圧倒的に子猫になっているということだ。犬から猫にペットの主流が移っているのだろうかと思い、ペットショップを何箇所か歩くと、どこでも猫が優位になっている。この1年でずいぶん変わったように思える。

例の3歳の人気猫「はっちゃん日記」もある。そして、少し前から、さらに見えてきた風景がある。それは老齢犬だ。ゴールデンレトリバーやシベリアンハスキーといった大型犬をベビーカーに乗せて朝の散歩をする落ち着いた感じの夫婦や、後ろ足にギブスをつけて、きわめてゆっくりと足を引きずりながら公園の芝生の上を進む老犬。散歩状況を見ても、元気のいいのは小型犬ばかりだ。

犬の年齢は7を掛けると人間と同じとは言うが、実感としては犬齢10歳まではそういう公式だろうが、それ以降は2掛けくらいではないだろうか。10歳=人間70歳、15歳=人間80歳、20歳=人間90歳。現在は2005年。おそらく、大型犬はバブルの象徴として、栄光の中、この世界に出生してきたのだろう。1988年-89年生まれ。人間でいえば85歳。そして、バブル以降の大沈下経済が、ようやく方向転換を迎える時に、静かにステージから去ることになるのは、何の因果だろう。

ところで、この犬と猫の関係、統計的にわからないかと思い、探していると、日本ペットフード工業会という組織から数字が発表されている。平成6年から平成16年までの、犬・猫頭数の調査だ。ペット数合計はどんどん増えていることがわかるのだが、この平成16年になって猫が急増していることがわかる。このペースでは、平成17年度は犬猫が逆転するだろう。

犬にも猫にも10年前後という寿命があることから、毎年の数字の増加は、ペットが亡くなったあと、飼いなおす場合と新規参入者がある場合ということだろう。1年間の数字から見ると圧倒的に16年度は猫ばかりだったのではないかとも読み取れる。(ただし、もともと猫には登録制度がなく、本調査はサンプリングによる電話聴き取り調査からの推定らしいので、猫数にはあいまいさが残るのだが)また、ペット産業にとって痛手なのは、猫より犬の方が儲かるだろうということなのだが、関係者ではないのでただの推測。

実際には、犬派と猫派とどっちも派など、ペットマニアは論理を超えているので、ここで優劣論を書くのは絶対に避けるが、どちらにも長所や短所があり、またそれ以上に性格には個体差が大きい。たぶん、人間以上に個体差はばらついているのだろう。

それで、ちょっと角度を変え、ペットとしてではなく肉食動物として、犬と猫を考えてみることにする。数日前に、こういうニュースがあったことから始める。

【ジュネーブ6日共同】世界自然保護基金(WWF)は12月6日、インドネシア・カリマンタン島の熱帯雨林で、ネコほどの大きさの「未知の肉食動物」を発見したと発表した。WWFは「全くの新種か、テンないしジャコウネコの知られざる仲間」の可能性があるとしている。“新種”動物の姿は同島中部のカヤン・メンタラン国立公園に設置したカメラが2003年、夜間に2度だけとらえた。

報道の真偽は、現段階では定かではないし、カメラが捉えただけだし、なぜ「肉食」とわかるのか、といったプロ的な疑問を満たす内容にはなっていないので困った話なのだが、仮に肉食だとすると、どういう分類なのかということになっていく。報道では、テンかジャコウネコかとなっているが、ここのところに大きな鍵がある。

調べていると、世界中に多種類が存在していると思われる食肉哺乳類だが、実は陸上動物は主に7つの科にまとめられるとのことなのだ。イヌ、ネコ、クマ、イタチ、ハイエナ、ジャコウネコ、アライグマ。パンダとスカンクを追加する場合もあるらしい。新種の動物がテンかジャコウネコかというのはテンがイタチ科に属するからで、種としては新発見でも、科としては既存に属すると考えられているわけだ。

そして、勉強してみると、これらの数多くの食肉動物のすべてが、同一の起源を持っているというから、まさに驚きである。犬と猫は親戚ということだ。そして、その起源は「ミアキス」という動物で、北アメリカに棲息していたらしい。その後、陸続きだったベーリング海を渡ってユーラシア大陸に入ってきたあと、まず、ネコ科、クマ科、イタチ科が枝分かれしたらしい。

そのあとキノデスヌスという動物を経て、その他の科が形成され、イヌ科の仲間としてオオカミ、キツネ、タヌキにさらに分化。このオオカミからイヌが発生したというよりも、イヌは人間によって作られた動物らしいというのが定説になっている。ネコもほぼ同じであるが、イヌの目的がマルチパーパスの多用途であるのに対して、ネコの用途はネズミ退治という単一目的であることが特徴だ。そして、多くの食肉動物はまたしても陸続きのベーリング海峡を歩いてアメリカ大陸にも向かったそうである。

さらに、最近のDNA解析によると、オオカミからイヌが分化したのは、おそらく東アジアの朝鮮半島だろうということらしいのだ。韓国はソウルオリンピックの時に、イヌ食いを非難されていたが、その頃にイヌの本家があきらかになっていたら主客転倒していただろう。安易に豚肉を使ってホットドッグというコトバを使うなと抗議できたかもしれないのだ。

一方、ネコはエジプトが起源なのは以前から有名な話で、エジプトのお宝には「聖猫」というのがある(読み方がセイビョウというのはかわいそうだ)。松岡美術館に行けばいつも見られる。農耕文明に伴い、世界中に広がる。

そして、最後に日本の話だが、猫はネズミ捕り用の実用性を重視されたが、イヌの方は愛玩用だった。特に1687年から1709年の間に施行されていた生類憐令は、世界史上有名な法令であるのだが、逆に犬を飼っているとどんな罪を着せられるかわからず、市民は犬を捨ててしまったので、町中が野犬だらけになり、江戸の各所に囲い場ができたそうだ。野犬がなぜ危険かというと、犬は群れを作って自分より大きな動物を攻撃するように遺伝子をコピー&ペイストするからだ。

実は、この珍法令が、なぜ施行されたのかは邪説ばかりで真意はわからないそうである。最近の新説は、秀吉の刀狩のあと、徐々に緩んできた庶民の帯刀を取り締まるための口実というのがあるそうだ。犬をいじめないように刃物を取り上げる。これら江戸の再研究を取り組んでいる網野善彦先生の奥様が中沢新一を生んだ学者一家、中沢家の一員であることもわかってきた(関係ないね)。生類憐令は綱吉臨終の枕元で新将軍家宣が即日廃止を決定したそうだ。

d08a74d5.jpgところで、犬の話と猫の話とバラバラになってしまって収拾がつかないのだが、まず、猫についての感想を書くと、日本は猫にとっては、原産地エジプトよりも、もっとゴチソウ天国であるということだ。またたびやアジのひものといった大好物は日本に来た猫しか口にできない。

そして犬について書くとこちらも天国だ。綱吉の「囲い場」の最大のものは中野にあり、現在の警察学校になったそうだ。警察官のことを「権力の犬」という名誉ある名称で呼ぶようになったのは、これに起因しているという人もいるのだ。

さらに12年間に一度、お犬様をおまつりする行事があるのだ。そして実は、今、刻々と近づいている。その行事とは?・・・

d08a74d5.jpg戌年の年賀状の主役だ。来年の年賀状をめぐる大騒動はすでに始まっているそうだ。ことしの最大の特徴は、愛犬の写真に若干の修正をかけ年賀状にプリントすることらしい。そして、愛犬のデジタル撮影講座もどんどん開講されている。

ただし、くれぐれも熱くならない方がいい。愛犬年賀状を作るために犬を飼い始めるなんて本末転倒もいいとこだ。それに、いつも子供写真を年賀状に使う親バカも「実害なきかわいい異人類バカ」としておけばよかたのだが、突如、こどもの写真のかわりに愛犬の写真になったら、色々と家庭内のこととか心配に思いを巡らせてしまわなければならないからである。

忘年懇談会のお知らせ

2005-12-12 22:19:56 | 市民A
皆様、日頃はつたなき弊ブログをご愛読いただきありがとうございます。

さて、実は、忙中閑ありというわけではないのですが、12月17日(土曜)の夜(午後6時頃からミッドナイトまで)に、東京の赤坂見附のちょっと古風なスナックで飲み会の席を予約しているのですが、たまには、オロカモノの現物(リアルバージョン)と話をしてみたいという奇特な方がいらっしゃいましたら、ご連絡をいただければ幸甚と思っています。(もちろん、時間は自然参集型です)

なお、会費は約4,000円だけ(ドリンク代)。ただし、食事は無しなので・・

特別連絡先: otayoichiro@hotmail.comなお、ブログをお持ちの方は、事前に出席者の方々相互の理解を深めたいのでURLを教えていただければと思います。

なお、「Read Only」の方は、上記アドレスあてに自己紹介を書いていただければと思います。場所などの情報は、頂戴いたしましたメールアドレスに3日以内に返信いたします。

もちろん会場等の諸般の事情で、申込=参加受諾ということではないことだけは、念のため書いておきます。アンド、肖像権侵害禁止といたしますので、念のため。

裏話:実は、当日の昼間、私が会長をしている、ある将棋サークル(将棋連盟の一支部)の大会を将棋連盟の一室で行うのですが、その流れで、片隅で将棋を指せるスナックをニ次会で予約しているのですが、私自身はそれほど一日中、将棋を指したい訳もなく、別グループに逃げ込もうという算段なのですね。ということで、参加者がいなければ、単にパチパチしているだけですけど・・。  

松岡美術館のシロガネーゼはちょっと先輩

2005-12-12 21:04:27 | 美術館・博物館・工芸品
d6074345.jpg以前、西新橋のビルに入っていた松岡美術館。時間があったらのぞこうと思っているうちに消えた。ところが、新聞の美術館紹介の欄で古伊万里展の記事があった。こういう場合はネット社会は便利だ。白金台に移転していたことがわかった。駅から近そうだったので、昼休みに行ったのだが、そう近くもなく、さらに道を間違えてしまい、ちょっと帰るのが遅くなってしまった。そしてそんな短い時間で見るようなものでないこともわかった。再攻略が必要だ。

この美術館の美術品は松岡清次郎という富豪の収集によるものだが、古美術を特定の傾向に偏ることなく集めている。しいて言えば、この伊万里は収集の中心でもある。さらに、仏教美術、そしてヘンリームーアだ。そしてもちろん洋画や日本画もあるが、私の目で見て、秀逸なのは、第一展示室の「古代オリエント」室だ。この部屋だけで腰を抜かす。よくぞ集めたりだ。エネヘイ像やミイラの彩棺、そして聖猫。表示を読むと、もっと多数の在庫があって、企画のつど展示換えしている

とのこと。エジプトまでの航空料金を考えれば、毎月来てもいい。すばらしい古代帝国エジプトの輝きがある(もちろん搾取されたり、ピラミッド工事をやらされた国民はかわいそうだが)。

d6074345.jpg第二室は現代彫刻の部屋だが、中心はヘンリー・ムーア作。ムーアは嫌いではないが、個人的にはマリノ・マリーニの方が好きだ。ムーアの曲面は洗練されているが、マリーニの方はワイルドだ。そして、松岡美術館は一流品好みなのでマリーニはない(文句をつけようにも、自分のものではないのでしょうがない)。

第三室はガンダーラ・インドといった仏教美術だが、私は仏教美術もキリスト教美術もまるで苦手だ。一言でいうと俗人だからだ。

第四室が、本美術館の中心テーマである「東洋陶器」。何回か通わないと言い切れないが、「有田」が中心のようだ。そして、有田焼きにはさまざまな楽しみがあるのだが、見ては勉強し、そしてまた見ては勉強する、というように面白さも徐々に倍加していくのだろう。今年は既に何箇所かで見ている。また本も数冊。そして美術館を訪れる老婦人たちの会話を盗み聞いていても、最近は部分的には少し理解できるようになってきているのではある。ただし、日本は「焼物大国」であるのも事実。有田以外も頑張ってほしいと思う。

第五室、第六室は日本画、洋画であり、これは手堅く押さえているといったところ。

帰りにもう一度オリエント室をのぞき、聖なる猫にお別れをする。そして、このエジプトの猫の話があしたのエントリにかろうじてつながる。

ロード・オブ・ウォー ニコラス・ケイジ主演

2005-12-11 21:44:43 | 映画・演劇・Video
36032bb5.jpg12月17日からロードショーが始まる「ロード・オブ・ウォー」を一足先に試写会で観る。千代田区にある九段会館。主演はニコラス・ケイジ、監督はアンドリュー・ニコル。もちろん、ここにネタをどんどん書いていくのはマナー違反なので、少しトーンダウンする。

まず、この映画、「武器商人」の話。別に、工作船の話を書いたことと関係はない(はず)。ただし、どうも最近、自分のブログの周りでいくつかの偶然的関連事項が発生していてちょっと気持ちが悪い。(そのうち書くがドイツの菓子職人の件もある)

特に、新品の武器は政府間取引に近いところで行われるのだが、ソ連崩壊後に流出した武器などの中古品は武器商人が行っている。もちろん、多くの国はこのような取引を表立ったは禁止しているのだが、知ってか知らないでか、法律には抜け道がある。そういう色々な知識を駆使して武器商人たちは、世界中の暴君のトモダチになっていくわけだ。名指しで非難されていたのは「リベリア」。そういえば、かつては便宜置籍船(flag of convenient)で有名だったが、最近はパナマ船籍ばかりが有名だ。映画のとおりだったら大変な国になっている。

そしてニコラス・ケイジの役は、この武器商人である。これを捕まえようとするのはインターポールのヴァレンタイン刑事である。配役が逆になってニコラス・ケイジがインターポール側になると、ニコラス・ケイジ刑事ということになってしまう。いや、やはりヴァレンタイン刑事でいい。

そして、この両者の戦いの結末は?・・・それは、映画館で正規料金を払った人だけが知ることができるわけだ。

一方、この武器商人、ユーリー・オルロフの年間取引額は60億ドルだそうだ。一方年収はと言えば9800万ドルと書いてある。たった1.6%の利益というのは、何か少なすぎるような気もする。もっとも税務署に申告することはないだろうから、あまり真面目に計算したわけでもないだろう。ただし、リスクの割りに儲からないような感じだ。愛読者にもお勧めできない。

ただ、映画の中で、インターポール側がオルロフの自宅から出た家庭ごみを調べるシーンがある。シュレッダーゴミをかき集め、つなぎ合わせて解読するのだが、これがいわゆる縦切りのヌードルタイプのシュレッダーだったので、航空ルートがばれてしまうのだが、これから武器商人を開業しようという愛読者の方は、タテヨコみじん切りになるタイプを購入されなければならないだろう。何しろ、紙資源の多くは、現代の謀略大国「C国」へ輸出されているからだ。といいながら、私のみじん切りシュレッダーは「中国製」なのだが、まあ大丈夫だろう。


ところで、この試写会の冒頭に、武器取引規制を目指す「コントロール・アームズ」キャンペーンの紹介があった。アムネスティの他、4つのNGOが協力している。世界に6億丁以上が散らばった銃により、1日1440人がなくなっているそうだ。一つは犯罪。もう一つは戦闘だ。銃を誰が持っているかという統計を見ると、59%の3億8千万丁は民間人が持っていて、次に正規軍が38%の2億4000万丁。警察は僅か3%の1800万丁、反政府勢力は100万丁ということだ。

ただし、私見ではあるが、大規模な戦闘があると武器は消耗するが、戦闘もしないで武器を作り続ければ、中古市場は価格暴落となり、さらに銃は安くなり拡散するだろうと思うのだ。詳しくはhttp://www.ControlArms.jpで・・

しかし、実はこの「銃規制キャンペーン」に反対する気持ちはまったくないが、この試写会の行われている九段会館というのは、少し似合わない場所なのである。第二次大戦前からそのままの姿のこの建物、当時は「軍人会館」だったのだ。退役軍人たちのサロン。そして、この場所はある有名な歴史的事件に登場する。それは226事件である。

首相官邸を襲撃したあと、反乱軍は溜池方面への細い下り坂を駆け下り、そのあとなぜか皇居の入口とは逆の左に向かい、現在のドコモの入っている山王パークタワーの場所にあった建物(戦後しばらく米軍ホテルだった)に篭城する。位置的には、皇居をはさみ、ちょうど180度反対側にあったのが、この軍人会館だったわけだ。そのため、反乱軍に対する対策本部が設置されたわけだ。もし、反乱軍が右側に向かって大手町あたりに篭城したら、対策本部は赤坂見附のあたりになったのだろう。この辺の知識は、愛宕山にあるNHKの放送博物館で仕込んだ。NHKにはだいぶつぎ込んでいるので、骨までしゃぶらないといけないのだ。

今月は簡単な出題

2005-12-10 00:00:00 | しょうぎ
84986063.jpg前回11月15日は、ちょっと考えにくい出題だったので、今回はかなり簡単な問題。穴にはまると解けないが、かといってしばらく考えれば解けるはず。
なお、解答がわかってコメントに書かれたい場合は、最後の1手と手数を書いてもらえば、よろしいかと。

ところで、総じて、私の創作する詰将棋は駒数が少ないのだが、ほとんどは、頭の中だけで作ることに起因する。

年賀詰将棋には、ハードな一作をすでに作成済み(1月1日発表予定)。福井から新横浜まで戻る途中にこれも大部分を頭の中で作ったのではあるが。


84986063.jpg11月15日掲載の飛車と金の詰将棋(シャッキンヅメ)アニメ-ションで解答発表。変化はご自分で・・