この話、どこに向かうのだろうか

2015-01-25 00:00:24 | 美術館・博物館・工芸品
kuniyosi2ベネッセといえば、福武書店。岡山の絵本会社が「赤ペン先生」という仕組みを考案し、中学お受験を目指す親と、在宅アルバイトをしたい学校の先生を組み合わせて通信添削教育を始めたところ大当たりし(売上の3割、利益の6割という説も読んだが)、その後、学生の就職試験に使われる適性検査(という名前の不適正検査)も成功。さらに発展するためマックの原田社長を引き抜いたのだが子供たちの個人データが漏えい。先生のデータが漏れたら大変だっただろうとは思うが、とりあえず経営上、大打撃を受けている。

それが直接の原因かどうか不明ではあるが、「福武コレクション」の名で有名な、国吉康雄作品、約600点を、岡山県立美術館に寄贈することを表明した。

国吉といっても浮世絵の「歌川国芳」とは何の関係もなく、岡山県出身で、17歳で米国に単身渡り米国で画家となる勉強をした日本人画家、国吉康雄(1989-1953)のこと。

20世紀前半と言う決して日本人が米国で生活するに楽ではなかった時期に芸術家として活躍。民主主義を愛する彼にとって、日本人=敵国人と認定していた米国に住んでいたこと自体、彼の居場所は世界のどこにもなかったということができる。

福武家は先代の哲彦氏が国吉作品の収集を始め、一時は自社ビル内に個人美術館をもっていたが、現在は岡山県立美術館に寄託という形で作品は保管されている。

それを寄託ではなく、寄贈する、つまり、タダであげてしまおうという気前のいい話なのだ。

私見なのだが、個人(個人企業)が有名画家の作品を買い集め例は、いくつかあるのだが、それは、実は画家のためになるのかどうか疑問がある。買い集められて倉庫に入ってしまうと、誰も見ることができなくなる。集めれば集めるほど、観られなくなる作品が増えていき、結局は画家の価値を貶めることになる。

そういう意味で、大公開するというのはいい方向なのだとは思うのだが。

実は、大きな「条件」が付いている。山陽新聞の記事によれば、

国吉康雄美術館の名を併記する条件で、・・・・すべてを同館に寄贈する意向を示した。


つまり、「国吉康雄岡山県立美術館」ということだろうか。「岡山県立国吉康雄美術館」だと、国吉作品だけみたいに思えてしまう。しかし、全国の県立美術館をながめてもそういう名前はない。となると、どうなるのだろう。

先日、神戸の横尾忠則現代美術館を訪れたのだが、そこは、兵庫県立美術館の分館となっていた。実際、国吉作品が600あるといって、既存の美術館内に全部並べてしまうと、他の作品は並べられない。ベネッセの要望を満たそうとすると、別の場所に岡山県立美術館の別館(国吉康雄美術館)を作った方がいいことになる。

そして、よく考えるとベネッセは瀬戸内海の島で美術化計画を進めている。特に直島では安藤忠雄設計の地中美術館や宿泊施設ベネッセハウスを設けている。本来は、その島に国吉美術館を作って、3点セットのマクドナルドみたいにするといいのだろうが、残念ながら直島は香川県だ。その隣の犬島は岡山県であり、ベネッセの仕掛けた犬島プロジェクトがあったものの、今一つ盛り上がらない。犬島にある小型の美術館(精錬所跡)が、国吉作品の安住の地となるのではないかと、10手先を読んでみる。


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