国会図書館の新たな挑戦

2005-10-26 22:05:01 | 美術館・博物館・工芸品
霞ヶ関シリーズの最終回は、国会図書館。10月27日まで新館のギャラリーで「描かれた動物・植物 江戸時代の博物誌」展が開かれている。無料。11月15日から28日までは京都の国会図書館関西館で続きが行われる。期日は残り僅かだが、非常に親切なことに、展示以上の内容のホームページが公開されている。もちろん原書の歴史の重みはないが、展示物よりもHPでの画像の方が多いと聞いている。

さて、図書館の基本的使命は、図書の収集であることに間違いはないのだが、それを公共の知とするためには、一つは「検索機能」が必要であり、一つは「知の集積作業」であろう。検索機能については、今でも相当の困難があり、どうしても探したいことがあるなら、最初から1日の余裕がいるし、お目当ての情報にたどり着かないこともある(いくらでも悪口が言える)。

一方、知の集積という行為は、収集プラス研究という知的作業であり、もともと図書館という非営利事業で、そこまでの熱意を維持するには苦労がいることが予想されるのだが、やはり国会図書館までも民営化のうねりが届いてきたのだろうか。今回の展示は、あきらかに膨大な努力が必要だっただろうと感じる。

博物学というのは、過去の知性の集大成といった性格の学問であることから、何らかの落ち着いた時代に経済的背景に基づき構成されるということがいえる。そういう意味で、日本の博物学が江戸中期吉宗の時代に起源をもち、当初は欧州で行われていた文物の模写という輸入学問にはじまるのも理解できる。当時は江戸初期から始まる各藩ごとの農業、工業、薬学というような産業イノベーションが一旦行き詰まり、低成長のリサイクル社会に転換するところだったわけだ。そのため、分散していた知的資産を体系化してゆく経済史上の必然性があったのだろう。

そして、当初はいわば百科辞典学のような構造だったのが、分野別に展開されていくようになる。さらに植物栽培が食生活に関する部分から、観賞用の園芸に展開していき、外来種が大量に国内に持ち込まれるようになり、品種改良などへ発展していったわけだ。

41a82a24.jpgとくに驚いたのは、今や日本でポピュラーな何種類かの花も江戸中期に海外から種子がもたらされた外来種であるということだ。例えば、ヒマワリ、オシロイバナ、カーネーション、マツバボタン、パンジーなど。そしてさらに、トマトまでが「六月柿」とか「珊瑚樹茄子」とか呼ばれ、江戸時代を通じて観賞用植物だったことだ。なぜトマトが食用されなかったかというと、口に合わないということなのだろうが、実は、トマトには2種類のアミノ酸が大量に存在する。アスパラギン酸とグルタミン酸である。この比率が1:5になった時がトマトがうまい時とされ、その比率になる時期は限られている。アスパラギン酸の含有率は一定なので、熟すにつれグルタミン酸が増えていくわけだ。まだ青いトマトにかけるべきは、味の素ということになる。

もし、江戸時代人がトマトの旨さに気付いていたら、日本料理のベースがトマトソースになっていたかもしれない。

41a82a24.jpgそして、もう一つ、珍獣シリーズでは、たまたま日本に紛れ込んだ動物が記録されているのだが、「あざらし」がいる。名古屋の熱田に現れて、捕獲され、飼われていたとされる。名づけて、「アッちゃん」ということになる。やはりたまには現れていたそうだ。現代の多摩川に登場したのは「地球温暖化のせい」でもなさそうだ。

41a82a24.jpgそして、博物誌に残る大巨人として小野嵐山という人物がいることがわかった。この人物をおいて博物学の右に出るものはなしだ。彼は生涯の多くを「本草綱目」という講義に費やしていたのだが、その講義メモがすさまじい。ありとあらゆる書き込みで補完修正を続けている。ネバーエンディングノートだ。ブロガー見習うべしなのだが、かなうはずもないのだ。

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