仮名口座の過去・未来

2005-07-21 19:57:28 | MBAの意見
f8a5d6f9.jpg数日前のブログで、「太田と大田」という、点が一つ違うだけで、死亡した夫の銀行預金の相続ができなくなり、裁判になった話を書いたら、bunさんから、以下のコメントがあった。こんな他愛もないエントリにレスポンスがあるとは思いもしなかったのだが、さらにTBまでされた方もいるのだが、このニュースは、「なんとなく、居心地の悪い部分」があるのだろう。それで、考えてみると、やはり居心地が悪い感じだ。

まず、bunさんのコメント
60代くらいの女性に本名にない「子」の文字を通称につけている方が結構いるのです。本名「○○」を「○○子」のごとし。多分かのお方のご成婚のときに小中学校で生じたと聞くいじめの回避が理由なのではないか、と思っています。同様の問題が生じるのではないでしょうか。まとまった調査があったら読みたいなと思っていますが見たことがありません(暗にリクエスト(笑))。

通称で「子」をつける理由の「かのお方のご成婚時の小中学校でのいじめ」というのは、よくわからないが、確かに「子」をつけるのが一般的だった時代もあった。そして現代は逆だ。現代では、逆に「子」をとって通称にしている女性がいるかもしれない。「美智子→美智」とかか・・

大田と太田、美智と美智子とか問題は複雑そうだが、要するに「仮名(かめい)問題」と捉えてみればいいのだろう。旧植民地国籍の方の、日本風の通称とか、欧州系外国人のカタカナ名口座とかも含んで考えてみる。消極的仮名の例としては、結婚後の旧姓名義の口座もある。

1.まずは現在
 現在、口座を作ろうとすると、かなり厳しく本人確認と住所確認が行われるのはご存知のとおりだ。公的証明書+公共料金の請求書などで確認している。
  目的は、およそ三つ。
  A.テロリストの送金用の口座封鎖
  B.振り込め詐欺に口座が使われないように
  C.銀行破綻時の1000万円補償のための名寄せ

 ところが、実際には、なんらかの合理的理由で仮名を使う必要がある場合がある。たとえば、芸能人の場合、たいがい名前が違う。大きく違う場合もあり、小さく違う場合もある。「濱崎歩=浜崎あゆみ」などは、「太田と大田」「斉藤と斎藤」程度のような気もする。それから、韓国籍の方などの通称もある。正々堂々と和風の名前を使っている人もいるし、意に沿わずに使っている人もいるのだが、いずれにしろ通帳は必要だ。「デーブ・スペクター」なんていうカタカナだって通称といえる。そういう本名でない通帳はどうするかというと、銀行に「通称名義に関する届出書」という書類を提出することになっている。しかし、あくまでも、本人確認書類の他に、この「通称届出書」が必要であるので、「本人」の確認はしっかり行われることになる。したがって、「太田=大田問題」は、銀行員の不注意でしか起こりえない(はずだ)。

2.ルーズだった過去 過去、仮名口座がルーズだった時期がある。事実上1980年代までは、預貯金に「マル優制度」が存在していたからだ。現在は「老人マル優」という制度でかすかに生き延びているが、来年廃止になるし、何しろ金利が存在しないほど少ないので、どうでもいい制度になっている。が、80年代は高金利時代だった。10年の定額預金で7%位ではなかったか?5年物の「ワイドかビッグ」も7%、国債が6%程度だったか・・(数字には、あまり自信なし)

 そして、お金持ちはこの銀行、郵便局、国債のマル優枠各300万円(合計900万円)を使い切ったあと、どうやって枠を確保するかと悩んだわけだ。それには、およそ3つの案があった。

  A.仮名口座を作る。
   家族だけでなく、飼い猫の名前までつけたらしい。おおたポンタとか・・
  B.気にしないで別の銀行で次の(本当は無効な)300万円枠を使った。
   要するに、税務署に名寄せ能力がなくサンプル調査だったので見つからない確率が高かった。
  C.低率の税額を先に払っておく「無記名割引債」を買っていた
   金丸先生も金庫にためていた。

結果として、所得税減税とパッケージにして、1988年4月にマル優は廃止になったのだが、それまでにばらまかれた仮名預金口座は、相当数存在する。そして、少なくとも名字が正しい預金口座は、名寄せしても本人名口座として十分に利用可能な状態になっていると思うし、たとえば結婚前の旧姓口座も使用は可能だ。

3.事実上、回収不能な仮名口座 「覆水盆にかえらず」ということわざがある。ばらまいてしまった仮名口座の多くは回収困難と思われる。何しろ、ある程度稼動していて、銀行合併のおしらせというような郵便物も届く状態で、さらに名寄せまでしても弾かれない口座は、当面、銀行としても放任してしまうのだろう。それより、銀行の支店そのものを廃止して、宙に浮いた口座を自ら作っているのは、銀行の方だからである。

4.相続の時の問題
 「太田=大田事件」に違和感があるのは、むしろ、「表沙汰」になったことである。普通は、本人死亡とともに預金口座は、すぐに裏から手が回って「封鎖」になってしまう。そのため、危篤になると家族は、本人の印鑑を持って葬式費用を慌てて引き出しにいったりする。となれば、みつからないはずの別名口座が表に出てきたのは不思議な感じがする。本名美智さんがなくなっても、美智子さんの預金口座はずっと生きているはずだ。

裁判になったのは、珍しく正直者の「太田あるいは大田」だったからなのだろうか?そして、残された妻は、今後はどちらの「太田あるいは太田」を名乗るのだろうか?まさか、ひらがなの「おおた」では・・

ところがそれは、・・・登録商標で先約済みなのだから・・


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