三菱自動車と日産の危険な提携

2005-01-20 22:03:37 | 企業抗争
三菱自動車の再建計画(といっても何度も何度も計画は修正されているのだが)が各報道機関にリークされ、各社の報道には差があるものの、三菱3社(東京三菱、三菱商事、三菱重工)が資本出資と追加融資で合計3000-5000億円の支援を行うそうである(もっとも、3社とも株主への説明責任はあるわけだし、特に東京三菱はUFJとの合併を控えていて、不透明なことはできないだろう)。これが産業再生機構等の第三者機関が介入していたなら、カネボウのように後で粉飾決算が公表されたりしただろうが、三菱村の中で片付けようということなのだろう。当初の予定額より必要資金が増えたということは、何か隠された原因はあったはずだ。

もう一つの再建策の柱はOEM生産で、日産に軽自動車月間36000台とプジョーに年間30000台を供給するとのことである。日産には既にミニカワゴンを年間20000台供給しているので、合計56000台となる。しかし、この国内でのOEM供給についてみると両社ともに気懸りがある。まず、日産が軽自動車の販売に力を入れれば、他の軽自動車メーカーの販売台数がマイナスになるだけだということは、容易に予測される。日本の新車マーケットはすでに飽和していて、乗用車も軽乗用車も年間、数%のプラスマイナスをするだけである。乗用車が400万台、軽自動車が180万台である。そして、昨今の情報時代のこと、日産の軽乗用車と三菱の軽自動車が同じものだということは知れ渡るはずだから、日産の販売台数分だけ三菱の販売台数が減少することが予想される。

三菱が日産に渡す時の価格には、日産の利益分を割安に設定しなければいけないため、自社で販売した方が有利である。あくまでも自社台数が変わらず、日産分が上乗せになればいいと言えるだけだ。あるいは、将来的には全軽自動車を日産ブランドにしようと考えているのかと言えば、そんなはずはないだろう。単に足し算で考えているのではないかとの疑問があることと、工場の稼動が上がれば、それで良しとする収益無視の工場収益型発想があるのではないだろうか。赤字がでても三菱村の中で補填してもらえると考えているとしたら、危険だ。

一方、日産側の都合にはこういう声もある。「安易な台数の上乗せ」。中期計画「日産180」の中で2004年10月から2005年9月の販売台数を2001年比プラス100万台の360万台とするとの目標を掲げている。ゴーン社長はこれを最後として、ルノーへ戻ることになっている(正確には、日産の社長を兼務するのだが、COOは日本人になるだろう)。しかし、北米市場では好調でも、日本市場では完全に伸び悩んでいるわけだ。2004年の実績を見ると、日産は78万台から74万台へ減少(95%)。トヨタは171万台から174万台へ増加(102%)。ホンダも46万台から47万台へ増加(103%)。三菱が14万台が8万台(84%)と激減した分はトヨタ、ホンダに回ったことになる。全社平均が98%だから、日産の95%は完敗ということだ。しかも、すでにティーダ、フーガをはじめとする新車種のラインナップは出揃っている。軽自動車による台数上乗せの目的が、単なる目標達成のためだけだとすると悲しい。2004年12月の新車登録台数の前年比でみると、全体が102.6%に対し、日産は103.9、一方トヨタは112.8%、ホンダは109.1%だ。

コストカッターの作るクルマがユーザーの評価を得られるのかという点は、自動車業界にとどまらず多くの他業種の経営者や経営学研究者が注目していることである。株価もステイしたままであり、次期COO問題と国内販売台数問題はスッキリしないままだ。

日産、三菱自の株価の高低には責任もてないが、8、9月の日産車は超お買い得になりそうな予感は十分にあるといえる。


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