かつて茨城にあった二つの飛行場

2007-10-24 00:00:01 | 美術館・博物館・工芸品
01421106.jpg先週、茨城県の神栖(かみす)市に仕事で行った。東京駅から夜のバスで東関東自動車道を1時間ほど走ると成田空港で、さらに神栖は、30分先だ。夜の利根川は本当に真っ暗で、時々見える対向車の光だけが日本にいることを確信させる。思うに、十数年前にブラジルから当時の住友金属チームにやってきたジーコは、成田空港から鹿島方面に直行したのだろうか。「ブラジルより田舎だ。すぐに帰ろう」と思わなかったのだろうか。

そして、東関道の出口(潮来IC)からほんの数分のところにあるバスターミナルまで、なんと3つの市を通ることになる。潮来市、鹿嶋市、神栖市。そして、久しぶりにバス・トイレのついていない畳敷きの部屋(壁には、誰かが半分つぶした蛾が付着)で寒い夜を過ごし、翌日午前中に、某工場でお仕事。午後、東京に帰るバスターミナルの裏、徒歩5分に「神栖市歴史民俗資料館」があることがわかり、バス待ちの時間に覗いてみる。ここにも。様々な歴史があった。

まず、この狭い地域に3つも市があることだが、基本的にこのあたりは、集落ごとに仲が悪い。有史以来、利根川、北浦、霞ヶ浦、そして太平洋と様々な水利権が存在し、それを巡って争いがあったようだ。そして、その利根川と北浦あたりの地形自体は、遠く江戸の水資源の確保のため、利根川の流量規制(江戸川との引き合い)によって、地元の都合とはまったく無関係に、何度も変更されている。ややこしい限りだ。

さらに、このバスターミナルのあたりには、昭和の前半まで「神之池(ごうのいけ)」という大きな池があり、その利用権を巡っても争いごとが多かったようだ。

しかも、さらに歴史を遡り、戦国時代末期では、茨城北部に勢力を伸ばしていた「佐竹氏」が豊臣・徳川の対立の隙をつき、地元の豪族を一同に集め、食事会を開いた上、突如急襲、皆殺しにするという謀略に成功。関ヶ原直前には54万石にまで膨張。ところが、関ヶ原では、お家の存続対策として、一門を二分し、東と西の両方にチップを張ったため、戦後、家康に睨まれ、秋田20万石に左遷される。その憾みをはらさんとばかり、一門の末裔の佐竹敬久氏は現在は秋田市長に納まっている。

01421106.jpgというようなことで、集落同士の相互不信は今も根強く残っていて三市の合併など無理なようだ。というか、つい最近、波崎町と神栖町が合併したばかりのようだ。


そして、本題に入るが、資料館の展示資料を注意深く読んでいると、この神栖には、昭和初期に二つの飛行場があったことがわかった。

一つは、「内閣中央航空研究所鹿島実験場」。太平洋に近い海岸に近い方にあったようだ。昭和16年から18年にかけて土地収用が行われている。どうも、この航空研究所だが、成層圏を飛ぶ軍用飛行機の研究をするためだったようだ。つまりジェット機。東京三鷹に研究所の本体をおき、横浜に海上機用の研究所を、そして神栖町域に飛行場を建設する。ここが選ばれたのは、東京から近い割りに交通不便なため、情報管理がしやすかったということらしい(実際には既に国内に米側の日本人スパイがいたので秘密が守られたかどうかはわからない)。昭和20年前半には離着陸実験が行われていたそうだ。施設は昭和20年12月に解散。土地は農地となり、研究者は、その後、鉄道関係の研究所に移籍し、後に新幹線を完成させる。

二つ目の飛行場は、まさにバスターミナルの付近にあったはずの「神之池」といわれる大きな池そのものを埋め立てたもの。昭和19年2月に「神之池飛行場」として開場される。こちらは、神雷特攻隊という勇ましい名前の特攻隊の訓練基地となる。この特攻隊基地が、その後、戦史上、どういう位置を占めていたか、資料はきわめて乏しい。現地でわかったのは、昭和21年には、農地として開拓されることになったという事実だけだ。

その後、昭和40年代になると、一転して高度成長時代。この長い砂浜の鹿島灘に「Yの字」に堀割港をつくり、大規模コンビナートができることになり、その後、現代に至っている。鳥瞰図を見ても、地面が掘り込まれ、海水域になっていることがわかる。

ところで、現代の常識から言えば、国土は大切な国家資産であって、埋め立てこそアリだが、削るなんてアリエナイということになるのだろう。現代にこんな計画を立てようものなら、近隣諸国「ロシア・韓国・中国」からは、「国土を削って面積を減らすような国には、領土問題など主張する権利などアリエナイ」と、いいように言われてしまうのだろうか。

blog改善のため、再チャレンジ始めました。

↓GOODなブログと思われたら、プリーズ・クリック




↓BADなブログと思われたら、プリーズ・クリック

  


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
神之池埋立? (通りすがりの老兵)
2018-11-03 17:21:29
神之池海軍航空基地
http://kashimashi.info/bunkazai/?page_id=3459
です。
Unknown (おおた葉一郎)
2018-11-03 22:26:02
通りすがりの老兵さま、
貴重な情報ありがとうございます。

小説ですが、吉村昭の「逃亡」は、霞ケ浦から鹿島のあたりを日本人(米国スパイ)が探っていたことを書いています。戦後、どこかに消えたようです。

コメントを投稿