大甘が中甘に

2005-01-19 22:04:22 | スポーツ
MLB(メジャーリーグベースボール)で薬物禁止ルールが改正された。半分以上の選手が使用していると噂されるため、選手会側はまったく乗り気ではなかったのだが、あまりに甘い旧来のルールは「ザル法」化し、世論の非難を受けていたわけだ。何しろ今まで適用されて出場停止になった選手がいないのだが、ヤンキースのジオンビーのように自ら使用を告白した選手もいるのにである。

旧ルールは1回目の違反は「治療」、2回目が15日の出場停止、5回目で1年間出場停止だったのが、IOCルールに比べるとまったく甘いし、NFLルールでも違反があれば、即出場停止となるのだから、何と言うザルだ。昨年は共和党議員中心に相当の批判があったのだが、12月にブッシュ現大統領も野球選手の薬漬けにはクレームをつけていた。

そういうことで、今回の改正案では、年1回の定期検査のほか、無作為の抜き打ち検査もありで、1回目の違反で10日間出場停止、2回目で30日、3回目が60日、4回目で1年間。そして5回目の違反はコミッショナーが勝手に処分することになっている。それでもIOCなんかに比べるとずいぶん甘い。そして適用期限は2008年までで、ブッシュの任期と一緒になっている。

しかし、適用される薬はステロイド(アナボリック・ステロイド:筋肉増強剤)であり、コカイン、マリファナは規制対象外。また興奮剤も適用外とのこと。ステロイドは花粉症にも利くのであるが、薬の最終兵器のようなホルモン剤である。副作用はごまんとあるが、これを使うと、逆に男性ホルモンを自分の体内で作る機能が衰えてくると言われる。睾丸が萎縮していくとも言われる。つまりやめた後が問題なのである。ホルモンの自己生産能力が落ちると逆に筋肉が縮小する。ソウルオリンピックで金メダルを剥奪されたベン・ジョンソンも元の走りには戻らなかった。睾丸が小さくなるのは、本人にしかわからないだろうが、ホームランの本数が減るのは誰でも数えることができる。

今回、もう一つの薬物が禁止されるのだが、そちらは少し考えるものがある。ヒト成長ホルモン(HGH)だ。もともとは小人症の治療に使われる貴重なホルモンであったが、遺伝子組み替えで量産できるようになり、日本でも経口HGHが輸入通販で安価で手に入る(90回分5000円位)。何に使うかというと、アンチエイジング薬といって、老化防止のためである。特に老化が始まる30代に使い始めると老化が遅れるといわれる。スポーツ界でこのクスリを使い始めたのはプロレスのハルクホーガンだ。かなり以前から注射で使っている。ネットで調べると1953年生まれという説と1955年生まれの説があるが、いずれにしても50歳超だ。いまだ、バリバリでお肌つるつるの一流レスラーだ。

しかし、成長ホルモンの問題はまだ不明なことが多いことだ。細胞レベルの活性化が細胞の寿命を延ばすのか、逆に短くするのかわかっていない。ホーガンもまだ50歳だから、今後、超長寿になるのか逆なのか?。そして、この本来、脳下垂体で作られるHGホルモンも投与を続けると、体内生産が減少する。結果としては投与をやめた時、一気にシワだらけの醜態をさらすのかもしれない。ゾンビー野球リーグか。そして成長ホルモンは細胞を活性化させるため、初期癌の進行を加速させることになる。選手会は「そういうクスリを取り締まらないのがいけない」と主張しているらしいが。説得力はない。

よく、トレードの記事を読むと、必ず。「交渉がまとまったので、後はメディカルチェックを受けるだけ」と書いてあるが、身に覚えのある選手は困ったことになる。たぶん、あぶない選手はトレード対象にならないのだろう。日本のように性善説の国には、メジャーから、身に覚えのある選手が押し寄せてくるかもしれない。

しかし、中村紀洋がドジャーズとメジャー契約ではなく、マイナー契約の話が出ているのは彼に薬物疑惑があるからではないのだ。こんどのメジャールールは、単に現在マイナーで使われている規則と同一にしただけなのである(そういう点から言ってもメジャーリーグの今のルールはクサイ)。日本人の野手の評価がまだ決まっていないからなのだろう。上はイチロー・松井秀で、下は新庄で間がはっきりしないのだろう。ドジャーズはダイヤモンドバックスに4番の一塁手グリーンをトレードで出した状態なのだから、マイナーで契約しても中村には十分にチャンスはあるのだが、石井や野茂と一桁違う年俸では「プライド」が許さないのだろうかね。


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