医療費、誰のために誰が払うのか

2005-09-30 21:28:28 | 市民A
a5629fe8.jpgよく講演会や懇談会に出席するが、「ああ良かった」ということはめったにないのだが、今回は例外的に、非常に良かった。正式な演題は「日本経済と社会保障の改革」。講師は、近藤正晃ジェームスさん。ちょっと妙な名前だが、その件は触れない。1990年に大学卒業で、現在はNPOである日本医療政策機構副代表理事で政府の社会保障改革の医療部門でのアドバイザーになっている。数日前に都内某所での講演だが、公開可能日が9月30日となっていた。


産業構造と生産性
まず、講演は妙な話から始まる。日本の産業就業動向(第1次、2次、3次産業)と、その米国との生産性の比較の話だ。まず農業を中心とした1次産業の一人当りの生産性は、米国の15%と圧倒的に不経済だが、人口比が5%と少ないので無視(よく考えると、農林水産省など不要なことがわかる)。次に第二次産業(工業)では、ほぼ米国と生産性は同じということになる。そして問題は第三次産業である。サービス業は生産性が米国の60%と極めて低い。そして、このサービス産業の中で、急に就業人員が増えているのは医療サービス部門とのことだそうだ。

最近に至る間、工業分野では雇用数が縮小しているのに、総失業者数が増加しないのは、もっとも大きい理由としては、この医療分野で新規に発生した雇用に負っているとのこと。
したがって、医療分野で生産性を上げ、従業者数を増加させることは、医療費が下がる効果があるか、あるいは、有効求人数を増やすことになる、ということになる。

一見、成功しているように見える医療制度の誤謬
次に、日本の医療制度はアメリカと比べ、一見、成功しているように見えるそうだ。GDPに占める医療費は日本は7~8%だが、アメリカは13%。それでいて平均寿命は米国(男74、女78)に対して日本は(男78、女84)と長寿だ。

しかし、近藤氏の見解では、それは日本人の方が米国人より健全な生活を送っているからだそうだ。米国の方が日本よりも、多く亡くなっている原因は、「心臓病」「殺人」「HIV」のせいだそうだから。逆にそれを補正すると、GDP対費用としては米国と同じ位の比率になるのだが、内容が違うのだそうだ。例えば、日本では余計な薬を出す。ベッド数が多い。逆に、医師が少ない。

逆に、米国の医療保障制度は、どうみても平等性に問題が多く、金持ちしか治療を受けられないという側面がある。(もちろん米国人にとって一番必要なのは、医療制度ではなく、生活習慣病の原因退治の方だろう。太りすぎだ。)

日本の医療費の無駄
次に、話題は日本の医療費になる。社会保障費と言う場合、主に「年金」と「医療費」が二大項目となるのだが、個人の立場で言えば自分の年齢の経過に伴って生じる年金問題は実感しやすいのだが、医療費問題は自分にとってその必要な金額が不確定なだけに、言いようのない不安があるわけだ。そして事実、このままにしておけば20年後には年金問題よりも医療費問題で消費税が30%台になる可能性があるとすれば、それは何とかしなければならないということに行き着く。そして問題は、非効率なシステムが生むムダ(約25%)を排除していくことが第一歩ということだそうだ。薬の乱発と過剰な入院期間の問題だ。

具体的には、薬価の引き下げはまったく効果がないそうだ。それだけ多く薬を処方するだけになるそうだ。「薬剤費不変の法則」というらしい。医薬分離の徹底と、症状による上限設定のような制度が必要ということらしい。そして、過剰入院についていえば、「包括支払い方式」を導入して、病名あたりの上限金額を決めてしまえば、医院側は逆に早く患者を退院させた方が有利になるということだそうだ。要するにベッドに横たわる患者というのはマナイタの上の鯉(あるいは鍋の前の鴨)であるということだ。

そして、小泉内閣のこの4年間で変化したのが、医療問題の意思決定メカニズムであり、従来の「厚生労働省・日本医師会・自民党」という「鉄の三角形」という構造が崩れ、厚生労働省に代わり「内閣府・財務省」、日本医師会に代わり「医療関連団体」、自民党に代わり「患者・市民団体・メディア」というように公開性が高まっていると評価している。

医療費削減の先の行き先
そして、医療費を25%削減するのが第一歩とすると、実はその先にさらに国民自体が選択しなければならない難問題が待ち構えているわけだ。医療の方向ということ。

つまり、
Option1. 平等性を強調し、北欧のように、高度の医療制度を導入し、高額消費税を導入するケース。

Option2. 公的補償は今くらいのレベルにし、高度医療は個人の負担で行うこととする。(これは現在の歯科医療のような形態。)

Option3. 医療費を徹底して抑え、政府負担を最小にして、医療の先端技術は米国等海外にに任せる。(どうしても最新治療を受けたい人は海外で治療を受けるようにする)

というようなところだそうだ。

そして各種アンケート調査によると、意外にもこのoption3を望む声が、圧倒的に多いそうだ。

実は、年金制度は、自民案も民主案もこのoption3に近く、払えるだけしか払わず、消費税の大幅アップはしないということで、税制上はかなり健全な選択であるが、医療費の場合もそういう考え方が正しいかと言われれば私見で言えば「乱暴過ぎる」と思うのであるが、やはり人口減少に伴い(日本国籍人口が減少し、日本在住人口はステイかもしれないが)、GDPの減少を防ぐのが精一杯とすると、もはやoption3しかないのかもしれない。製薬会社株は「ウリ」かな。

社会保障制度の目的の変化への対応(ここから先は完全な私見)
当初の目的は、保健所を中心とした防疫機能ということであり、伝染病や中毒の蔓延を防ぐというのが「社会的役目」であった。一方、突然の発病と、治療費負担という経済的保障という「保険的役目」の二面性がある。

「伝染病や交通事故、花粉症のように自己責任とは言えない原因による疾病」は、3割負担と言わずに、ほとんど全部を国あるいは国民同士が保障すべき範囲だと思うのである。しかし、「自己の怠慢や放蕩から発生する、生活習慣病の治療費」まで、国民全員で負担しましょう、というところに現行制度の無理があるのだろう。疾病の種類によって負担率を変えるべきだろうと考える

ただし、よく考えると、喫煙者やアルコール依存症や肥満体や運動不足、睡眠不足の人から多くの社会保障費を徴収するということは、現実的には無理と思える。私見であるが、それならタバコやアルコールやアイスクリームやキャラメルの価格に、社会保障費前払い分として目的税として徴税するのが合理的になる。

そして、もう一つの側面である「経済的負担の軽減」について言えば、保険料や投入される税金が傾斜方式になっていることから、現在の体系は合理性を維持しているが、逆進性の高い消費税に頼るのは、実質的な不平等をひきおこすものと考えられるのだ。


ただし、長期的に医師を痛めつけるようなオプションを採用した場合、医師になろうとする人材が減少することも考えられるだろう。何しろ、日本の開業医は、大学に所属している世界的な名医よりも高収入を得ている羨望の職業だからなのである。

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