欲しくない遺産

2012-07-02 00:00:02 | 映画・演劇・Video
週末に六本木の麻布公民館で開かれていた麻布演劇市で、劇団ホワイトエンゼルの「遺産相続」とプラス1を観る。

たまには観劇もいい。そして、市民劇団をステージ間近で迫力あり、という感じもいい。観客と役者のボーダーレス感がある。

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で、この「遺産相続」だが、登場するのは末期がんの患者とか、執行の近づいた死刑囚とか、本来「生と死」という大テーマなのだが、その深刻さは漂わない(とりあえずは)。

そして登場するのは「死神」である。

なぜ、死に瀕した人間に余裕の笑いがあるのか。それは、死神から約束された「命のリレー契約がある」からだ。死にそうになったら、遺産を相続する相手を選ぶ。そして自分の臨終の瞬間に、その遺産相続人の体に乗り移るわけだ。その男から追い出した魂は、死神の栄養になる。

そして、その男はペリーが日本に上陸した瞬間にも立ち会っているのだが、ついに殺人に手を染め死刑を待つ身となる。しかし、面会にきた売れない物書きに遺産を無償譲渡することに成功。死神に後の手はずを託そうとするのだが、売れないながら物書きの想像力を甘く見た結果、リレー契約を見破られ、相続放棄を実行され、あえなく刑場の露と消える。

死神は、この上なく強欲だった250歳の男の魂を栄養にすることに成功。そして、「強欲な人間を減らすのだから、自ら天使である」と宣言してしまう。


つまり喜劇だったわけだが、つらつら思えば、この舞台劇のスタイルというのも、既に死に体となったギリシアの最盛期に確立されたことに気づき、「強欲な人間は滅んでも、その文化としての形式は、世界に普遍性を与えることになるのだろう」とか思ってしまうのだ。


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