大晦日に観た『こうもり』、そしてジルベスター

2008-01-04 00:00:32 | 音楽(クラシック音楽他)
オペレッタ『こうもり』が、ヨハン・シュトラウスⅡによって書かれたのは1873年。この年の5月、ウィーンでは第5回万国博覧会が開かれる。この万博景気というのは、ウィーンの株式市場に異常な投機資金を集めたらしく、その後、世界で何度も起こっているようにバブルがはじける。5月9日、大暴落。失業者と物価上昇。多くの自殺者があり、さらにコレラが追い討ちをかけ、2983名が病死。



そして、それらの重苦しい空気を一掃しようと登場したのが『こうもり』である。したがって、喜劇。喜劇の常として、「芸術か通俗か」ということになるのだが、私にはよくわからない。松竹新喜劇という感じもしないではないが、宝塚という感じもする。逆に、下手をすれば通俗に落ちる危険を孕んだ芸術、というところなのだろうか。

そして、このオペレッタの中で設定されたのが大晦日のパーティということもあり、ウィーンではよく大晦日に公演があるようだ。そして、大晦日に私はDVDで観ることになった。先日、衝動買いした1枚。クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団の1987年の録画。大画面で見ると画質はイマイチだが、オーケストラは伸びやかに走る。

あらすじを書いても、まったく面白さは伝わらないだろうし、しょせんは深刻さのかけらもない喜劇なので、ただただ音楽を楽しめばいい。特に第二幕のフィナーレで演奏されるポルカ「稲妻と電光」は爆発的に楽しい。

また、第三幕は刑務所が舞台になるが、刑務所を芸術作品に仕立てたのは、この『こうもり』の他に、「岩窟王」「パピヨン」「網走番外地」「手紙」などがあるらしい。それぞれに共通性はまったくない。

この『こうもり』という題名は、仮面舞踏会でコウモリの服装のまま酔いつぶれた人物に起因するのだが、どう考えても「コウモリ=悪者イメージ」である。欧州では、コウモリは鳥の仲間か獣の仲間かはっきりしないという寓話に基づいて迫害されているようだ。日本でも「コウモリ社員」とかいう単語がある、どうみても悪いイメージだが、鳥であったり獣であったりはっきり態度を見せないところも評価されないわけでもないだろう。

そして、12月31日は、11時30分からテレビ東京で東急ジルベスターコンサートの生放送があった。レスピーギの『アッピア街道の松』の大演奏は、最後に0時0分0秒にシンバルの音とともに新年を迎えるのだが、奇跡的に0時0分0秒ちょうどにシンバルが鳴り響く。うまいものだ。そして、年が明けてからの、最初の演目が、このJ・シュトラウスⅡの「稲妻と電光」だった。何の偶然か、半日で二度聴く(観る)ことになった・・・

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