美浜3号原発の悲劇

2004-08-12 16:43:32 | 市民A
21167504.jpg関西電力福井県美浜3号原発の配管破裂事故の状況が徐々に明らかになってきた。
事故の直接原因は高圧高温配管の減肉による亀裂であるわけだが、事故に至った状況はまさに人災である。

以前、流体製品を扱う会社に勤務していたことがあり、安全対策立案のアシストをしたことがある。一般的には、高温、高圧、引火性ガスは危険要素であり、今回はそのうち高温高圧といった部分で発生している。
電力会社の輸送といえば、電線を使い、電力という質量を伴わない製品である。配管の中を流れる流体力学の専門家は少ないのかと思えば、水力発電は流体力学そのもの。圧力変化部分や配管ジョイント部分、溶接箇所、袋小路部分などの危険は十分に認識可能なはずである。

報道では、完成(昭和51年)後、問題のパイプは一度も交換していないとのこと。肉圧10ミリが1.4ミリに減耗していたという。パイプの漏洩にはおよそ二種類があり、錆びやゴミが流入し偶発的に腐食するものと、経年変化により劣化する場合である。

偶発的な事故に対応することは難しいが、経年変化に対しては検査と交換という当たり前のルーティンで対応できる。
また、ステンレス配管になっていないのも理解できない。確かにステンレスは高額だが、しょせんはパイプである。原発そのものの値段と比べればあまりに小さい。
検査自体を丸投げしている体制は問題である。問題箇所の検査漏れがわかった段階で「テストハンマー」と呼ばれる小さなハンマーでコツコツとパイプを叩いてみれば、問題箇所の音の違いがわかったはずである。安全であることは判らなくても、危険であることは判ったと思う。
丸投げしている関係で関電側で調べることは無いのだろうか?自社の発電所なのにである。

確かに、原子炉そのものの事故ではないので、パイプを交換すればすぐに再稼動するのかもしれない。Standard&Poor's社も一早く格付変更なしを発表している。
今回も、現場に人間がいたから事故になったわけで、無人であれば、報道されなかったのかもしれない。
事故について約100年前に米国のハインリッヒ氏が発見した法則がある。第一法則は氷山理論で、事故(accident)1に対し、トラブル(insident)29、危険要因(factor)300が存在するというものだ。
そして、第二法則はその危険要因理論で、要因は三分割され、1.危険箇所(物理的)、2.危険思考、3.危険行動 に分けられるということである。後の二つはまさに人災である。
いつも通勤に使う道が工事中で回り道をしなければならない時、工事現場が危険箇所、工事現場を飛び越えようと思うのが危険思考。実際に飛び越えるのが危険行動ということである。
今回の事故を考えれば、磨耗した配管そのものが危険箇所、検査モレが分っても、そのまま稼動を続けようと思ったことが危険思想。そして実際に誰もSTOPをかけることなく運転が続けられたのが危険行動ということである。
現在では、さらに事故が起きた場合、被害を最小限度にとどめるリスク分散が必要とされる。

電力会社は地域的独占企業である。コストベースで電力料金は認可される。その結果、コスト高で素材産業の国際競争力を損ねているとの批判がある。また、安全と利益は相反するというのも一般的には事実である。しかし、安全確保のためのコストの中には、優先すべき順序はあり、今回の事故をみればコストのかけるべき順序が問題であるといえる。


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