中国のエネルギー政策

2007-02-16 00:00:03 | MBAの意見
e3535f4c.jpg先週、都内のホテルで中国からのパネリスト5名(中国の研究所やエネルギー企業の副所長、副部長クラス)を招き、中国のエネルギー政策についてのセミナーがあった。いくつかの、興味ある部分もあるので、聴きに行く。エネルギー関係の研究所が中心となって主催している。主に、2006年春の全人代で定められた、第11次5ヵ年計画の中のエネルギーに関係する決定事項の説明と言っていい。5ヵ年計画は既に1年が過ぎているので、後4年間の話だ。

5人のパネリストのテーマは、
 1.「省エネ」
 2.「石油代替燃料(石炭液化など)」
 3.「石油需給と安全保障政策」
 4.「石油及び代替燃料の流通及び品質・規格」
 5.「再生可能エネルギーの開発」

5ヵ年計画は、あらかた読んでいたので、特に話の内容で驚くことはないのだが、結構、荒唐無稽なプランと思っていたことが、次々と実行されているのは、やはり統制国家ということだろう。おそらく、燃料そのものの供給側に関する技術は、世界のトップレベルなのだろう。日本が教えようとしていた石炭の液化は既に技術として高いレベルで確立しているようだ。

また、中東依存度が異常に高い日本と異なり、中国はアフリカ原油やロシア原油に供給源を分散しているのだが、おそらく安全保障上の問題ではなく、原油の中のイオウ分の高い中東原油を使うための脱硫装置が不足しているために西アフリカ原油を買っているようだ。現在、中国がもっとも多く原油を輸入している相手国は、「アンゴラ」である。もちろん、オイルビジネスの世界では、信頼関係は、トイレットペーパーのようにはかないものだから、いずれにしても供給源の分散の意味などない、ともいえるのだが。

そして、聞いていて、初めて知ったのは、国内の石油製品価格が公定価格制度ということ(上下自由裁量幅はある)。そのうち、市場価格に移行するだろう。外資とのシェア争いも始まるだろう。また、水力、風力といった再生可能エネルギーは、国家統制型巨大投資が進んでいるようだ。

バイオマス燃料の原料として注目されているのが、農業国中国の最大の廃棄物である「わら」だそうだ。あとは「廃材や木材屑」。どんどん、家を建て替えているので、相当量の木屑が発生しているそうだ。穀物やキャッサバ、サトウキビからのエタノール抽出は、既存の田畑を使うのではなく、砂漠地帯の緑化で対応するそうだ。

つまり、これだけ大がかりに、国家として、問題を体系的に考えていると言うのは、経済成長を支えるエネルギー問題が圧倒的に深刻になっているということだ。目標としては、GDPに対する必要エネルギー原単位を5年間で20%削減することになっているそうだ。その技術は日本にある、と見ているらしい。つまり、エネルギーの需要側の技術が不足している。産業の省エネ化。要するに、「技術協力」を要請ということになるのだろうが、「不足するものだけをオネダリ」という構造は、勘弁してもらうべきだろう。

結局、省エネ技術は、製品生産コストのダウンという形で中国の国際競争力を増やすことになる。すでにGDPの50%以上が輸出という歪んだ構造がさらに歪んでしまうのではないだろうか。しかし、この輸出依存経済について、中国側はまったく違う角度の意見を持っていた。「海外で使用される製品をまとめて中国で作っているのだから、その分、他の国よりエネルギー多消費型になるのはしかたない」という考え方だ。つまり、製造工程に発生するCO2を輸入国の肩代わりをしているという論点だ。まあ、色々な意見はある。


そして、五ヵ年計画の基準GDPの伸び率は実質で7.5%。5年複利で44%の伸びになる。エネルギー2割カットでも現状より15%のプラスになる。そして実際には、最初の1年、2006年のGDPは計画を大きく上回り、10.8%増になっているのだ。先が見えない・・


ところで、この講演は、日中同時通訳で行われたのだが、パワーポイントの資料は、米中二ヶ国語になっていたり、中国語だったり、英語だったり、日本語だったり、とまちまちだ。中国語のスピーチを日本語通訳で聞きながら、英語の資料を見るという、かなり神経の疲れる構造になったりする。中には日本語でスピーチしていただいた方もいらっしゃるのだが、スクリーンの資料が中国語で、手元の資料が英語だったりして、「このバラバラ感こそ中国か」ということを強く感じてしまった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿