シャガールの不思議な森(高知県立美術館)

2013-07-28 00:00:49 | 美術館・博物館・工芸品
高知市に行ったら、行こうと思っていたのが県立美術館。(美術館に行くために高知に行くとは考えないのだが)

kochikenbi


シャガール作品をかなり収蔵していると聞こえている。ちょうど、シャガール関連の展覧会がダブル開催されているので、超鈍足の路面電車で朝一9時に訪れる。

まず、「シャガールの不思議な森」展から。ご存知のようにシャガールは後期になると、作風がかなり安定してしまい、不思議な動物、花束、男女などお決まりの道具立ての中に物語性が加わるという設定になっている。それらの設定が多くは森とか教会といった神秘的な場面との組み合わせになるため、「不思議な森」というタイトルになったのだろう。

shaga


そして、実は高知美術館のシャガールといっても、大別すると、「オリジナル絵画」と「リトグラフ」ということになる。「絵画」は世界に一枚しかないことから、収集は高額で、数千万円から億になるのだろう。一方、リトグラフは同時に100枚以上製作されるため、100万円から400万円くらいまでだろうか。といっても、全部をリトグラフにしてしまうと、美術館ではなく、ギャラリーだ。館長室で値決め交渉をして、「お買い求め、ありがとうございます」ということになってしまう。

で、展示も絵画1に対しリトグラフ4といった比率で展示されている。実際、リトグラフの方が表面が滑らかで見やすいともいえるが、やはり絵画の方が人気がある。絵画の方が画家のスピリッツが感じられるのだが、気のせいかな。

でも、多作のシャガールにふさわしい鑑賞法は、やはりこの展覧会のように、壁一面がシャガールという設営ではないかな、と思い、満足することにする。

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同時開催の安倍泰輔展「シャガール世界」。シャガールの絵画に登場する不思議な動物や、謎の男女のような架空生物を布で作ってみようということで、地元のこどもたちが展覧会に参加している。だけど、「架空動物なのだから、リアルな動物にこだわらず、好き勝手に創作すればいい」のだが、どうしても既存の動物にしか見えないものができてしまう。もっともシャガールやゴッホやピカソの素質を持った天才芸術児童が、何十%もいたら人類の未来が大きく変わるだろうが、そんなことはないことは歴史的事実である。

shiota


もう一つの展覧会は、高知出身の両親を持ち、ドイツ在住の塩田千春展。現代芸術である。部屋いっぱいの糸で紡いだ造形物や、現代演劇のビデオ。芸術の中に一本の筋(糸)が通っているのが感じられる。欧州の現代芸術は高みをめざし、東アジアの芸術は混沌をめざす。どちらかというと、日本や中国の現代芸術の方が、明るく、非論理、無茶苦茶といった感じが強く、個人的にはそちらの方が好きだが、人それぞれの好き好きだろうか。


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