トライアローグ(横浜・富山・愛知・三美術館共同企画)

2021-02-21 00:00:04 | 美術館・博物館・工芸品
20世紀のほぼ終わりに、日本国内では美術館建設ラッシュがあった。バブルの絶頂期から滑り落ちる時期だったのだが、建設が始まったころには夢にも見なかっただろう。この三館以外にも世田谷美術館や東京都現代美術館とか、20世紀美術を収集した美術館が完成した。

そして20年。

横浜美術館は来月から2年間にわたる大工事が始まる。美術品の一部は世界大巡業に出るのだろう。何となく感じるのは、五輪終了後からカジノ開業までの隙間に工事を予定したのだろうか。すべてがくるってきた。カジノ候補地立候補の必要要件に国際会議場とか大美術館とか求められることになって、事実上、東京・横浜・大阪になるしかない。それでも他の地方が横槍を入れようとすれば、観覧車とか水族館とかホテルの数とか次々にガラスの天井が作られるだろう。

ごたくはこれくらいにして、展覧会だが、さすがに三館が競い合って収集したお宝だけに物量で圧倒される。

3つのパートは時代別になっている。

1900年~(42点)
ムンク・ピカソ・ブラック・レジェ・デュシャン・マティス・シャガール・ルオー・・・・

特筆すべきは、横浜美術館の至宝であるコンスタンティン・ブランクーシの『空間の鳥』。欧州美術にアフリカを取り入れた。そんなに大きくはないが空間を切り裂くような迫力だ。

特筆すべき二点目はモディリアーニの『カリアティード』(愛知県美術館)。彼の描く女性像の最大の特徴は目の中に黒目を描かないこと。座頭市のようなことになる。ところが、この作品には黒目が描かれている。シャガールの『山羊を抱く男』(富山県美術館)も、よくある普通のシャガールとは異なり、荒々しいタッチで何か急を知らせるような緊迫感がある。



1930年~(40点)
エルンスト・マン・レイ・ミロ・ダリ・ボロック・デルヴォー・・・・

横浜美術館所蔵のルネ・マグリット『王様の美術館』がある。きわめて端正である。このきめの細かさは想像以上に意外だ。

どこかで見たことのある絵画の本物が、「ここにある」といったところだ。



1960年~(41点)
ジャスパー・ジョーンズ・ジム・ダイン・リキテンスタイン・アンディ・ウォーホル・・・
美術は多元化してゆき、キャンバスからどんどんはみ出していった。

本来は登場しなければならないキース・ヘリングは作品ではなく、ウォーホルの作品の中に本人が被写体として登場している。撮影日時は不明だが、もしかしたら「御遺影」かもしれない。


美術評論家ではないが、20世紀の美術は、まず印象派が美の極みを追求。ある意味で、モネとルノアールという横綱を筆頭になんとなく番付表みたいになって、世界中の美術館を埋め尽くす。

そのあと第一次世界大戦で欧州が銃弾と血と国家感、民族間の不信の渦となり、芸術家は必死にもがき苦しみ、多様化していく(音楽などもそうだが)。そして第二次大戦のあとは多元化という方向で拡散しているということだろうか。アーティストや評論家、収集家たちには多元化の先に何かが見えているのだろうか。

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