人的資源の組織戦略(4)

2009-04-24 00:00:49 | MBAの意見
6.人事制度の変換は可能か

日本企業の現在の人事制度は源流の一つは、戦前の重商主義時代の官僚的なピラミッド型の組織であろう。また二つ目の流れは、戦後の大量生産型高度成長期に確立した終身雇用制、企業城下町型の出資会社下請け制などのクローズドシステムである。

一方、米国では1930年代の不況下に雇用と解雇に関するルールが芽生え、その後海外から流入する多国籍の労働力と資本をベースとした開放型の組織が発展したと考えられる。一方、米国でもカソリック協会のような縦長ピラミッド型企業もあるし、CEOは社内から内部昇格(適任者がいればだが)させるべきとの考え方も根強い。

しかし、一般的に見れば、米国はオープン型、日本はクローズド型と考えられる。

日本においては、旧来のシステムの大部分を残したままで、部分的に退職金前払い、社外取締役、契約社員の増大、レイオフの代わりのワークシェアリング、コンピタンシー評価などの新手法が組み合わされている。

しかし、私見であるが、旧来型の終身雇用、クローズ型のシステムを手直ししたところで、うわべだけの米国流におわるものと考えられ、中期的には収拾不能になるのではないかと考えられる。たとえば、日本流の評価を15年続け、40前頃に管理職になると同時に米国流の評価法に切り替えるなどというようなことは、実際は困難であるといえる。

伝統とか組織を変えることは、今までその企業にいるほとんどの役員や従業員にとって居心地の悪い事態であって、まして日本では株主が経営権に積極的に介入するのは、経営危機の際くらいであることを考えれば、抜本的な転換は困難と考えられる。

むしろ、景気低迷で冷え込んではいるが、新興企業、個人企業が組織力で既存の旧システムの会社に対抗するという図式が見えてくるのである。

論文終了

あとがき

2003年の論文を2009年に読むと、時代は、さらに60歳以上の再雇用制度、そして製造業の派遣労働者問題という新たな難問に直面している。

この二つは、マクロ的には表裏一体関係にあり、年金給付開始の65歳と企業定年の60歳の穴埋め制度の対象は「団塊世代」であり、団塊世代が引退しないために「団塊ジュニア世代」のある比率が正規従業員になれなかった、という関係にある。とはいえ、団塊世代はおおむね5年で65歳に到達するのだから、雇用問題が縮小に向かうのは5年後ということになる。


私見ではあるが、終身雇用型の正規社員と短期限定の派遣社員という二元論ではなく、期間数年の「契約社員」という形態の中間的な雇用形態をもっと多く活用すべきだろうと考えている。普通預金と30年国債の二種類だけではなく、定期預金があってもいいじゃないか、ということである。



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