いまどき「経済安全保障」

2023-01-26 00:00:17 | 市民A
月刊「経団連」誌は日本経団連の会員誌で、主に政治の課題とそれを支える経済界というスタンスなのだが、昨年12月号の特集は「経済安全保障の確保向けて」というもの。12月1日発売ということは、編集は10月頃からだったのだろうか。

確かにその頃は経済安全保障というテーマが重要とされ大臣が張り切っていたように思うが、その後、防衛費GDP2%問題が大テーマになり経済安全担当大臣が「私を更迭するがいい」という意味のことを言っていた。さらに今月の大テーマは少子化対策。

最重要問題が月単位でコロコロ変わるような国でいいのだろうかと思うが、経済安全保障の問題。重要技術の扱いについて米国との比較表があり、米国は農産物についても国家戦略物資と指定している。日本との差はそれぐらいだろう。韓国産シャインマスカット問題が一例だ。

ただ、大部分の記載は重要技術や重要データを盗まれないようにしようというのが骨子で、エネルギーとか食料といった生活のベースになるようなものは、いささか頼りない。

食料安全保障については、本誌の中心課題は穀物価格の値上げということなのだが、実際には価格よりも食料自給率の問題だと思う。自給率と言ってもカロリーベースなのか、金額なのか、あるいは穀物自給率なのかという差はあるが、いずれにしてもザックリ50%超といったところだ。

世界で人口が1億人以上の国で自給率が100%以下の国は日本だけである。それも大幅に少ない。しかも10年前には100%を切っていた中国、ブラジル、インドネシアは自給率を100%以上に回復している。つまり、他国は努力していたということ。何もしないのが日本。多くの事象と同じだ。

本誌では昨今の日本の農業の問題の原点を1999年に制定された『食料・農業・農村基本法』と書いている。昨年秋から見直しが始まっているそうだ。構造的に無理のある法律だったということのようだ。「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない」としているが、矛盾だらけのムリな話のわけだ。

合理的な価格ということになれば、世界で行われている適地適作で輸入してしまうということになり、国内自給率は下がる。自給率を上げればコストが上がるし、規模拡大とか六次産業化などアベノミクス的にやれば優れた企業農家と零細農家の二極化を招き農村は疲弊する。つまり食料、農業、農村という同時にできない目標を掲げるところに無理があるわけだ。

一方、遊休農地が空き家問題と同じように全国に拡がったり、小麦を大量に輸入していながらコメが売れ残るというような、わけのわからないことになっている。

そもそも、現代の日本農業の基盤は戦後すぐに施行された「農地改革」。大規模地主による小作人の搾取が、日本が戦争を始めた原因の一つとGHQが判定したことによるのだが、奴隷に綿摘みさせていた国の言うことかな、と思うし、それで日本の農業が小規模零細経営になったわけで、そこに戻ってやりなおしてもいいのではないかと思う。

とはいっても、何もできないだろうという感じはある。

「安いパンを食わせろ!」という民意と「高くても国内生産品を食べよう」という民意のどちらが勝つかと言えば、前者だろうと思うし、それが政党の政策に影響するからだ。