蝉しぐれ(2005年 映画)

2019-12-03 00:00:00 | 映画・演劇・Video
1986年に山形新聞に連載が始まった藤沢周平作の同名の時代小説を黒土三男監督が映画化した。構想から15年がかかったそうだ。

思うに、新聞小説としてはまったく不向きな小説だったような気がする。毎回、少しずつ小さな山や谷を書くべき連載小説だが、かなり長いスパンの主人公たちの時代を描いている。東北の小藩の武家に起きた悲劇がこの物語のスタートとなる。藩内の抗争に巻き込まれ当主が切腹を命じられる。主人公、牧文四郎(演:市川染五郎)はその当主の息子。臨家の娘、小柳ふく(演:木村佳乃)とは幼馴染であったが、罪人の子で下級武士に格下げになった牧文四郎とは会うことができず、ふくは江戸の屋敷に勤めることになる。



そしていつしか、殿様のお手がついて、妊娠するのだが、殿の跡目を巡って、争いが激化する。そして、最初の妊娠の時は反対派によって流産してしまうが、二度目の時は、密かに国元に戻り出産。そして、そのあと両派にわかれて殺人事件が繰り広げられ、リアルに血が噴き出すわけだ。

そして、勝利したのは牧文四郎が属する派の方になり、ふくの息子が殿の跡目と決まり、20年ほどの歳月が流れ、殿の死去に伴い代替わりとなる。といって文四郎が家老になれたりするわけではないので、殺人事件以来二人は会うこともなかった。

そして、ある日文四郎のもとに、ふくから呼び出しの手紙が届く。ふくは、代替わりに伴い、尼寺に入る決心をしたわけで、その前に文四郎に会って、幼年時代からの二人の思い出話を語り合うわけだ。

現代なら、元カレと復縁するのに、なんら法令に違反することはないのだが、さすがに江戸時代では無理なのだろう。尼寺に向かう駕籠を文四郎は見送るだけなのである。


実は、原作では、ふくは呼び出した文四郎と思い出話をするだけではなく、肌を合わせてしまうらしいのだが、映画ではそうはならない。原作の重大な変更なのだが、すでに藤沢周平は1997年に他界している。長生きしたもの勝ちだ。

実は、本作を観る前に読んだのが、アリス・マンロー作『イラクサ』という小説。この小説の中でも幼馴染の男女が数十年後に出会い、ゴルフ場の傍らで、事をいたしてしまうのだが、何かの見えない符合なのだろうか
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