イラクサ(アリス・マンロー著 小説)

2019-12-02 00:00:00 | 書評
今年の100冊目の読了は『イラクサ』。

9編の短編小説集。アリス・マンローという女流作家だが、本名なのだろうか。いかにも小説家的な名前だと思う。カナダ人作家で、ノーベル文学賞を受賞している。本書は、実によくできているのだが、それが原因で読むのが非常に大変なことになる。9編のすべてのことではないが、女と男のささやかな、どこにでもある普通の感情のもつれが複雑なプロセスで書かれていく。

最近の日本にはいないタイプの作家のような気がする。最近の日本の小説は、たいがいが大きなストーリーを持っていて、最初は、道端の一枚の紙を拾うとか、一本のありふれた電話から始まるかもしれないが重大なことが次々に起きていって、家族はバラバラになったり、丸く収まったりする。あまり心理描写に重きを置いたような小説ははやらない。あえて言うと、夏目漱石とかノルウェーの森とか・・



この9編の小説は、ほんの小さな幸せや不幸をささやかに書いて、ささやかに終わるわけで、最後にオチが付いたりするのだが、そのオチを確認するために、もう一度、遡って読まなければならなかったりする。

表題作の『イラクサ』だが、最初は少年少女向けで、少女の前に期間限定で登場するカッコいい男の子があらわれる。数か月間、少女の自宅に井戸を掘るための工事人がくるのだが、そのこどもだ。そして井戸ができると、親子はどこかへ行ってしまい、淡い恋は終わり。その後、数十年の間に少女は大人になり結婚したり離婚したりとなるのだが、ある時、元少年に出会うわけだ。元少年には妻と子供が二人いて、家庭内には共有された秘密がある。

再会した二人はお決まりのように、秘密の行動に走るのだが、その場所は郊外のゴルフ場。豪雨の中でプレーは中断され、雨宿りに入った林の中で続きの別のプレーが始まるのだが、そこには毒を含んだ棘のあるイラクサが生えていて体が傷だらけになるわけだ。そして無事に帰宅したあと、家で待っていたこどもたちには、雨宿り中にイラクサで傷ついたと言うのだが、実は服を脱がなければキズつかないような部分まで赤くなっているわけだ。

じゃあ、具体的には何をしたのだろうかと遡って読み直しても決定的なことはよくわからない。さらに二人と同じような時間にゴルフ場にいたと思われる駐車場にいた車はいつの間にいなくなっていて、それは著者は何を伝えたかったのだろうかと考えて再度読み直しても、結局よくわからないし、著者はさらに、本当はイラクサではなく別の植物だったと書くのだが、さらに理解できなくなる。ネット上のネタバレ書評をいくら読んでも解読できないわけだ。
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