ぬしさまへ(畠中恵著 時代小説)

2019-09-19 00:00:22 | 書評
『しゃばけ』シリーズ第2作。読み始めると止まらないという悪魔のシリーズの第2作目。たぶん途中で止めると思うが、19巻の1で終わりにするのは、あまりではないかと思って突入。たぶん5冊位でやめると思うが、源氏物語と異なり、読むこと自体の難易度はゼロなのでこの先不安なのだが、もともと年間100冊ほど読んでいるのでスラスラ読める19冊などたいしたことはないかもしれない。

第一巻『しゃばけ』と異なり、第二巻『ぬしさま』は全6編の短編集。



『1. ぬしさま』。『2.栄吉の菓子』。『3.空のビロード』。『4.四布の布団』。『5.仁吉の思い人』。『6.虹を見し事』。

それぞれの短編で、およそ一人が死ぬことになる。人は死なないが猫がたくさん死ぬのもある。自分の因果応報で死ぬ場合、無関係の人が死ぬ場合、自死の場合もある。被害者をパターン化すると読者にストーリーを読まれるからだろう。

主人公の一太郎が大店の跡取り息子でありながら病弱から回復中というのも、シリーズ全体の基調が「暗から明」という流れなので読者受けがよいのだろう。バブル崩壊、失われた30年の逆用だ。

一方、江戸中期を舞台としていながら、封建制度の中で大店の番頭になったところで、たった一つの失敗で、店から追い出され、翌日から口入屋を何十軒も歩き回らなければいけない時代の不条理も描かれている。

第一巻でチョイ役であらわれた一太郎の異母兄である松之助が本作の中で正規メンバーに加わった。ということは、この第二巻の中に何気なく登場した誰かが次作でレギュラーの座を得るのかもしれないが、見当がつかない。(というか、こういう罠が読者を第三巻に導くのだろう)

もう一つの新鮮さだが、江戸の話で新鮮なテーマがいくつか登場する。その一つが「石見銀山」。世界遺産にもなった島根県の銀鉱山だが、本作の中では『石見銀山のねずみ取り』という商品のこと。いわゆる毒饅頭だ。なぜ毒薬の商品名が石見銀山なのだろう。

もう一つの真偽は、湯島天神の「富くじ」。ようするに宝くじだ。胴元の湯島天神が大勢から金をあつめて、一等当選者に100両を渡す。江戸市内に家が買える程度と言うのだから現在価値は3000万円ほどか。そして100両のうち、10両は湯島天神に渡し、10両は、再度、富くじを買うことになっていたそうで、手取りは80両だったそうだ。「坊主まるもうけ」ではなく、「神主まるもうけ」ではないだろうか。さすがに学問の神だ。経営学か?
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