結び目の謎(額田巌著)

2019-09-03 00:00:53 | 書評
著者は科学者であり、某電機会社に勤めているときに電電公社の局向けに分岐がたくさんある複雑な電線を研究しているうちに、位相幾何学の世界にはまっていくのだが、一方で研究中に出会った紐の結び方に興味を持つことになる。そして、専門家や数学系の教授から位相幾何学ではなく紐の研究の方を勧められ、生涯の研究テーマとして会社の仕事の他に研究を重ねてオーソリティになった。

ひとことで「結び」といっても裾野が広く、本書でも次のような項目で論が進んでいく。




1. 人類の進歩と結びの関係
石器として、斧とか釣り針とか発明しても、木の棒や釣り糸にそれらを固定するには紐でしばらなければならないが、この人それぞれ違う縛り方がいくつかの共通の方法に変わっていった。また縄文式土器には、結び目の情報がたくさん詰まっているそうだ。またインディオでは文字を紙に書く代わりにひもに結び目を作って子孫に知識を伝承したそうだが、もはや解読できるものはいない。

2. 捕縛術
人を縛るというのは一つは逮捕するとき。もう一つは首を絞めて殺すとき。後者は後で書くとして、たとえば江戸時代にはかなり法治国家になっていたため、犯人を捕まえる時でも身分によって縄の色が異なったり、時代が下ると季節によって異なったりしている。特筆すべきは岡っ引きには逮捕権はないので犯人を縄でぐるぐる巻きにしても結んではいけないことになっていた。奉行所で「ギルティ」と断定されると結び目をつけられたそうだ。

3. 文化としての結び
着物帯、祝儀袋の水引の結び方など様々な紐の結び方である。国内でもいくつかの流派があるそうだ。世界にもさまざまな結び方がある。

4. 犯罪捜査としての結び
実に興味深い話で、基本的に紐の結び方は人それぞれ千差万別なわけだ。犯行現場の遺留品の中に結び目がある場合、単独犯か共犯者がいるのか大きな手掛かりとなる。指紋のようなものだ。一方、絞殺の場合、紐の縛り方で左利きか右利きかがわかり単独犯かどうかも推定できる。ひょんなことから警察との関係ができ、捜査の手伝いをしたり裁判所の鑑定を行ったり、結び目の鑑定から、最高裁で死刑を免れた被告もいるそうだ。そして3憶円事件では、単独犯ではなく、紐の縛り方がとても下手な人もかかわっていたのではないかと報告したが、信用されなかったと書いてある。報告書だけではなく、犯人を特定してしまえば良かった。

ところで、著者だが私の遠縁にあたる。すでにご他界されているのだが、計算上は約6%(1/16)のDNAが共通のはずだが、残念ながら私は「結び」はまったく下手だ。靴紐は結ぶたびに形が違う結び目ができあがる。縄文時代に生まれたら石斧も釣り竿も作れなかった無能者だっただろう。海岸で貝拾いを続けたりとか、穴掘りとか水運びとか底辺の仕事を押し付けられて、年齢をとったら用済みとして、山奥に放置され大型動物の餌食になったのだろう。
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