ブラジルに届かなかったもの

2018-12-08 00:00:04 | しょうぎ
2018年8月にブラジルで行われた移民110年記念の『全伯将棋名人戦』では優勝者(二世の高嶋ホベルト氏)に日本将棋連盟から記念駒が寄贈された。賞品は、その他10万円相当のマットレスと銘酒・高清水も贈呈されたそうだ。

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ところで、この記念駒だが、もっとずっとずっと前に進呈すべきものだった。

今から時間を70年遡り、1948年のことになる。ブラジルの日系社会は「勝ち負け抗争」が起きていた。日本が勝ったのか負けたのか、遠いブラジルには両方の情報があったようだ。そういうもやもやした中で行われたのが、この第一回大会だった。

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この輝かしい第一回大会に日本将棋連盟(会長は木村義雄氏)は、木村名人の署名入り駒を優勝賞品として寄贈することを約束する。ただし、当時の邦人紙パウリスタ新聞では、日本国外に輸出するためにはマッカーサー元帥の許可が必要で簡単ではないと、但し書きが書かれていた。

そして、実際、駒は現地には届かなかったわけだ。それが、マッカーサーのせいなのか、単に途中段階で誰かが、ちょっと失敬、となったのか、もはや真実を知る由もない。そういう時代だったわけだ。


最初の移民から40年後には日本が敗戦、占領されてしまい、その70年後に、やっと約束の記念駒が届けられたわけだ。


とはいえ、本来は70年前の優勝者(あるいはご遺族)に贈られるべき駒が、今年の優勝者に渡されるということは大丈夫なのだろうか。もらうべき人がもらえなかったため、裁判を起こすということが現実に起き始めている国もあるわけだし、今回の駒は今年の優勝者の分として、70年前の優勝者の分は別の駒を用意する方がいいような気もする。

それにしても、マッカーサーに禁止された70年前の名人署名駒だが、どこに行ったのだろうか。


さて、11月24日出題作の解答。

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初手に不成の技を使う。2手目は桂合いが最善になる。途中の香合のところ銀合でも本筋と同手順で詰むが、2手長駒余りの詰め筋もあるので、本手順の方がいいと思う。

動く将棋盤は、こちら


今週の問題。

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先週の問題と1一の駒が香と歩の差があるだけの姉妹作と言いたいが、実は先週の問題は変化同手数の余詰め筋があるであり、改作図と今週の図が似ているような気がする。

わかったと思われた方は、コメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。