ふがいない僕は空を見た(窪美澄著 小説)

2018-12-05 00:00:08 | 書評
一見、5編の短編集なのだが、その5編は同じ時空間に起きている色々な事件を、登場人物ごとの視点で書いているわけだ。それも、高校生やそれをとりまくできの悪い大人たちの視点である。

hugainai


かなり、細かな心理描写と、大胆な性的行動を組み込んでストーリーを創り上げていくのだが、現実同様に事実というのは複雑なもので登場人物は勝手に行動をはじめて、著者にもコントロールがつかないのかもしれない。

往々にして、若い作家は会話を使ってストーリーを進めることが多く、文面が「 」だらけになることが多いが、本作では「 」はかなり少ないし、会話ではなく「文中文」のような場合に使われている。そういう意味だと、書くのが上手ということなのだろう。この作家を読みふけっていけるかどうかは、来年考えたい。